コンサルタントコラム

公開日:2018年1月29日

【コラム】キャッシュフローツリーを作って改善提案に信頼性を

【コラム】キャッシュフローツリーを作って改善提案に信頼性を
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【コラム】キャッシュフローツリーを作って改善提案に信頼性を

お金を出す理由を提示していますか?

オーナーズエージェントは、賃貸管理会社による「プロパティマネジメント」を推奨しています。

プロパティマネジメントとは、一言でいうなら「オーナーの資産の最大化を図る」こと。
ただアパートやマンションの維持管理をするだけでなく、その不動産資産の価値が高まるようにマネジメントすることを指します。

資産価値の最大化…と言うと、なんだか大げさな感じがして何をしていいか分からなくなってしまいそうですね。
そこで私たちは、これを単純に「改善提案」と言い換えることが多いです。

「インターネット無料を導入しましょう」

「宅配ボックスを導入しましょう」

「ペット可にして差別化を図りましょう」

実は、こうした改善提案こそプロパティマネジメントの第一歩なのです。

部屋の決まりが悪くなったからといって、安易に「家賃を下げましょう」を続けていては、家賃収入が急激に下がっていってしまうばかりか、設備も更新されず、集客力の改善も売却価格の維持も実現できません。

しかし、家賃の値下げに代わって上述のような改善提案ができれば、家賃下落に歯止めをかけられるだけでなく、最新設備の導入によって集客力も改善し、最終的な売却価格にも良い影響を与えられます。

10年、20年という長いスパンを要する不動産投資だからこそ、日々の改善提案が投資の明暗を分けることになります。
みなさんには是非、積極的に物件価値=NOIを高めるための提案をしていただきたいものです。

ただし…、問題は、その提案内容を効果的に伝えられるかどうか、です。

「空室改善のためにリノベーションをしましょう!」

「そうは言っても収入がないからなあ。満室になったら考えるよ。だから早く満室にしてくれよ

 

満室に近づけるための提案なのに、これでは話が前に進みません。

費用と共に便益を提案する

決まらない空室を埋めるためには、どうしたってコストがかかります。
しかし、そのコストの支払いを渋るオーナーが少なくないことは、ご存じのとおりです。その支出がどれだけ必要なものであっても、収入が芳しくない状態である以上、お金が出ていくことに抵抗があるのです。

「あなたは、いつも「お金を払え」っていう話ばかり持ってくるのね」

そんな嫌味を言われたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
ああ、安心してください、もちろん私も言われたことがあります(笑)

 

冗談はさておき、ここで重要なのは私たちの提案の仕方です。

「空室対策にリノベーションをしてはいかがでしょうか。施工箇所は○○と○○と○○…、一室で60万円です。施工後は賃料も5000円くらい上げられると思います。大丈夫です、工事してくれれば僕が気合で決めます!!

このような提案で承諾をもらえるのは、オーナーと緊密な信頼関係を築けている方だけでしょう。
少なくとも、提案営業を始めたばかりの新人には扱えない提案トークです。

また、この提案の仕方では、「僕が決めます」という根拠のない自信が起点になっているばかりか、やはり「お金を払ってください」という意味合いが強くなりすぎています。支払いにシビアなオーナーは、なかなか首を縦に振ってくれないでしょう。

オーナーに改善提案をするのであれば、やはりオーナーの気持ちを考える必要があります。
多くのオーナーは損をしたくありません。
オーナーはあくまで、お金を儲けるために賃貸経営をしているのです。

ならば、提案の切り口も「お金を儲ける」「収益を増やす」という部分に重点を置いて然るべきです。
それは「余計な出費」ではなく「収支を改善するための投資」なのだと、理解いただくための提案をしなければならないのです。

そのためには、収益と支出の分析、そして費用と便益の比較が欠かせません。
その改善提案(支出・費用)によってそれぞれの項目がどう変化するのか、最終的にどれだけの収支改善が見込めるのかを提示するのです。

では、例を使ってシミュレーションをしてみましょう。

キャッシュフローツリーと収支分析

事例:メゾンHARADA リノベーション提案

  • 木造二階建て、総戸数:1K 10戸
  • 家賃:各戸6万円、満室想定で月60万円
  • 稼働率:70%
  • 運営費・ランニングコスト:年120万円
  • 年間返済額:360万円(月30万)
  • エリアの利回り:7%

さて、上記の物件の収支を見てみる前に、キャッシュフローツリーについて少しだけ解説しましょう。
物件の収支を確認する際、最初に作ってほしいのがキャッシュフローツリーです。

 


<キャッシュフローツリー>

総潜在収入 … 満室時の総賃料収入
▲空室損等 … 空室等による損失
―――――――
実効総収入 … 現実の総賃料収入
▲運営費  … 共用光熱費や清掃費など
―――――――
営業純利益(NOI)
▲年間返済額
―――――――
税引き前キャッシュフロー(BTCF)


 

「総潜在収入」とは、もし満室稼働したら得られるだろう、という潜在的な賃料収入の総額です。ここから実際の「空室損」を差し引いたものが「実効総収入」となります。

そして、この実効総収入から「管理運営費」を差し引いたものが、前回のコラムでも紹介した「営業純利益=NOI」。

最後に、銀行へのローン(年間返済額)を差し引きして、オーナーの手元に残る「税引き前キャッシュフロー」が算出されます。

 

コストのかかる改善提案をする際には、少なくともこのキャッシュフローツリーは作成しましょう。
現状とリノベーション後でそれぞれ作成し、その両者を比較することで収支改善を分析します。

ではさっそく、現状のキャッシュフローツリーを作成します。
満室稼働で月60万円、稼働率70%、運営費120万などの条件を当てはめると…、

 


<現状のキャッシュフローツリー>

総潜在収入:720万円(6.0万×10室×12ヶ月)
空室損 :▲216万円(720万円×30%)
――――――――――――――
実効総収入:504万円
運営費 :▲120万円
――――――――――――――
営業純利益:384万円
年間返済:▲360万円
――――――――――――――
BTCF:  24万円


 

このような現状であることがわかります。
所得税等を差し引く前の段階で年間24万円…、なかなかきびしい状況ですね。

しかし、この状況を改善するのが、今回のリノベーション提案であるはずです。

シミュレーションの前に

さて、今回の物件は稼働率70%という状態です。

稼働率は、本来は一棟全体の入退去・空室期間から割り出すものですが、今回は分かりやすく「3室が長期空室」と考え、この3室をリノベーションするとどうなるかを検証することとします。

ただ、シミュレーションする前に一点、注意事項です。

リノベーションの効果を検証する場合、大切なのは「リノベーションした場合」を予想するだけで終わらないこと、 必ず「リノベーションしなかった場合」との比較をすることです。 この比較なくして、リノベーションの必要性は伝わりません。

提案時に大事なのは、

・3部屋とも何も対策をしない … 空室のまま。収入0万円

・3部屋をリノベーションする … 工事費はかかるが収入が増えて稼働率も回復する

・3部屋の家賃を値下げする  … 収入は減るが稼働率は回復する

この3パターンをきちんと比較し、結果を明示すること。
何がもっとも避けるべき未来で、何がもっとも賢い選択なのか、数字で示してあげるべきでしょう。

 

ではいよいよ、3部屋をリノベーションした場合をシミュレーションしていきます!

前後のキャッシュフローツリーの比較

まずはリノベーションの効果を賃料に反映していきましょう。

リノベーション後の賃料は、周辺の類似物件との比較から導きます。リノベーションをしたのに予定賃料で決まらないのでは、そもそもの計画が狂ってしまうことになりますので、慎重な金額設定が必要です。

先ほどの営業さんは「1室5000円の賃料アップが叶う」と言っていましたが、果たして本当でしょうか? 金額設定は個人の感覚ではなく、明確な根拠をもとに行なってください。

 

なお、今回は周辺のリサーチの結果、家賃上昇は3000円程度になると結論付けられました(案の定ですね…)。
よって、3室すべてリノベーションを行なった場合の総潜在収入は、6.3万×3室×12ヶ月で226.8万円です。

 

次に稼働率です。

リノベーションによって集客力は改善しますから、稼働は70%から90%までは回復するとしましょう。
空室損は226.8万×空室10%=22.7万円です。

 

管理費はどうでしょうか。
リノベーションによって故障やクレームの多かった古い設備を交換するわけですから、管理コストが5%程度は改善しそうです。

 

では、これらの数字をキャッシュフローツリーに落とし込んでみましょう。

 


<改善後のキャッシュフローツリー>

総潜在収入:226.8万円(6.3万×3室×12ヶ月)
空室損 : ▲22.7万円(226.8万円×10%)
――――――――――――――
実効総収入:204.1万円
管理費 :▲34.2万円(10室120万円、3室36万円の、管理費5%オフ。36万×95%)
――――――――――――――
営業純利益:169.9万円


 

60万円×3室=180万円のリノベーションによって、毎年170万円弱のNOIを得られる状態になりました! 何もしない(=収入ゼロ)よりは遥かに良い結果が得られていると言えるでしょう。

しかし、問題はここから。
リノベーションせず値下げで乗り切る場合との比較です。

 

とはいえこの物件、現状で稼働率7割、1年以上の長期空室が3部屋ですから、思い切った値下げをしなければ稼働90%は実現できないでしょう。

値下げの幅は10%程度(7000~6000円)は覚悟しなければならないと思われます。

また、リノベーションしない=修繕等は行なっていないので、管理費の削減もありません。

これらをキャッシュフローツリーに反映すると…、

 


<値下げでしのぐ場合ののキャッシュフローツリー>

総潜在収入:190.8万円(5.3万×3室×12ヶ月)
空室損 : ▲19.1万円(190.8万円×10%)
――――――――――――――
実効総収入:171.7万円
管理費 :▲36万円(10室120万円、3部屋36万円)
――――――――――――――
営業純利益:135.7万円


 

…以上、値下げ対応時のキャッシュフローツリーです。
こちらも収入ゼロよりははるかに良いですが、NOIは136万円程度にとどまりました。

 

では、この両者を比較してみましょう。

 

・リノベーションで得られるNOI:169.9万円

・値下げ対応で得られるNOI:135.7万円

・差額:169.9万円-135.7万円=34.2万円

 

この比較からわかることはいくつかあります。

まず、投資額(リノベーション費用)と回収の関係。
投資したリノベーション費用は180万円ですから、180万円÷34.2万円=5.26年で回収できることになります。

次に、利回り。
34.2万円÷180万円=19%です。このエリアの利回りは7%ですから、非常に利回りの高い投資であることが分かります。

そして、ローンの可能性。
180万円全額をリフォームローンで賄えるなら、オーナーは財布から1円も出さずに利益を得られることになります。

10年固定・金利3.5%でローンを組むと、月々の返済は17,800円、年間の返済は約21.4万円。
15年固定・金利4.0%で組めば、月々の返済は13,300円、年間の返済は約15.9万円。

どちらの返済も、増加したNOI:34.2万円でじゅうぶん賄える数字です。

 

さらに言えば、NOIの増加にも注目です。

前回のコラムでI÷R=Vという公式を説明しましたが、NOIが増加すれば物件の価格も大きく増加します。文字通り、資産価値が高まるのです。

 

値下げ対応  :135.7万円(NOI)÷7%(利回り)=19,385,714円

リノベーション:169.9万円(NOI)÷7%(利回り)=24,271,428円

 

180万円のリノベーションによって、オーナーの手元に残るお金が増えただけでなく、売却する際の物件価格も500万円上昇しました。

その提案は、きちんと「オーナーのため」になっていますか?

さて、このシミュレーション結果をもとにするべきは、どのような提案でしょうか。

「大丈夫です、工事してくれれば僕が気合で決めます!!

…ではありませんね。

「残り3室、決めるだけなら思い切って7000円の値下げで対応できそうですが、このまま収入を減らし続けるのは、年間収支の面でも物件価値の面でも得策とはいえません。180万円の追加投資をすれば、値下げをするよりも年間収入が34.2万円増加し、建物価値も500万円上昇するという試算結果が出ています。リノベーション用にローンを組んでも、返済は年間16万円程度ですので、収入増加分の34万円でじゅうぶん賄うことができるはずです。この機会にリノベーションを行なってみてはいかがでしょうか」

ここまでお伝えできれば、オーナーも「満室になったら考えるよ」とは答えられないですよね。

 

オーナーは(目的にもよりますが)収益を得るために不動産投資を行なっています。

どれだけ収支を改善できるか、どれだけ利益を得られるかは、何かを選択する際の重要なポイントです。オーナーの立場に立って考えれば、未来の収益を数字で示すことは改善提案の絶対条件だと分かるはずです。

みなさんの提案は、きちんと「オーナーのため」の提案になっていますか?
安く施工できる、格好良くなる、といったメリットの提示で止まってしまっていませんか?

「安く施工できる結果、いくら儲かるのか」

「部屋が格好良くなる結果、いくら儲かるのか」

オーナーが知りたいのは、「改善をした後」なのです。ぜひ、キャッシュフローツリーを作りながらオーナーの収支を分析し、最適な提案を行なってください。


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