月刊不動産

公開日:2017年11月15日

vol.16 賃貸管理業における民法改正への影響と対策

vol.16 賃貸管理業における民法改正への影響と対策
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質問

民法の大改正が行われるようですが、賃貸管理業にも影響がありますか? また、実務的にはどのような対策や準備が必要になりますか?

回答

借主の権利や連帯保証人の責任範囲の明確化など、借主側にプラスの方向への改正がほとんどです。

連帯保証人に関する改正が、最も実務に影響を与えるでしょう。

建物や設備の不具合が、家賃減額に直結してしまうケースも増えるかもしれません。

今年の6月2日、民法改正の公布がなされ、3年以内に施行されることになりました。120年ぶりとなる民法大改正のうち、賃貸管理に直接関わるのは図表の6項目。特に影響が大きいと考えられるのは1と2です。

実務への影響大!個人連帯保証人に関する改正

個人の連帯保証人(以下「保証人」)に関する改正の最初のポイントは、保証契約書面に保証人の責任限度額「極度額」を記載することの義務化です。

書面にこの記載がない場合、保証人になる約束が無効になってしまいます。

 

次に、借主が死亡すると、その時点で保証人の保証責任額が確定、それ以後に発生する損害等は保証範囲外となる改正がなされます。

例えば、借主が死亡し同居人であった配偶者が賃貸借契約を引き継いで(相続)住み続けた場合、その引き継がれた賃貸借契約に対して保証人の責任はなくなります。借主の死亡後の保証責任がないということは、借主が死亡した場合には、原状回復費用等についても、保証人には責任なしとなってしまう可能性もあります。

もう1つの気になる改正は、事業のために負担する債務(賃貸借契約)に保証人を付ける場合、主たる債務者(借主)から保証人に「財務状況の情報提供」が必要というものです。

提供すべき情報とは、主たる債務者の「財産や収支状況」「主たる債務以外の債務の有無や内容」「主たる債務への担保提供」など。

保証人に対してこういった情報提供がなく、債権者(貸主)がその事実を知っていた、または知り得ることができた場合、保証人は保証契約を取り消せます。

考えられるケースとしては、社宅契約でそこに住む従業員が保証人になる場合。社宅契約において借主である法人が、その財務状況を入居する従業員に開示できるでしょうか?普通は「NO」でしょう。そうなると、従業員個人の保証人は成立しません。「社宅」が「事業のために負担する債務」に該当するのかは微妙ですが、そう判断される可能性もありそうです。
法人が、自らの事務所や事業用店舗を借りる場合は、この「事業のために負担する債務」に該当するでしょうから、その契約に個人の保証人を付けるためには財務状況の情報提供というハードルが発生することになります。

個人連帯保証人のなり手が減少する?

最大保証責任額(極度額)が明記され、保証人になることを躊躇する人や、社宅や事業用不動産で財務情報提供が足かせとなり、個人の保証人を付けられない場面も出てきそうです。借主の死亡リスクには、個人の保証人だけでは不十分かもしれません。
民法改正により、賃貸借契約の保証人を個人に頼ることが今よりも難しくなり、滞納保証会社やオーナーリスク保険等(例:自殺保険)の活用が一層求められる時代になりそうです。

賃借物の一部滅失等の場合の賃料の減額

これは、貸している建物(部屋)や設備等に不具合があり、予定どおりの使用ができなかった場合、その程度に応じて家賃減額になるというものです。現行民法では「賃料減額請求権の発生」ですが、改正後は「当然に家賃減額」となります。

例えば、給湯器故障でしばらくお湯が使えなかった場合も対象になるでしょう。今でも、同様のトラブルには迷惑料支払い等の対応をしていることも多く、実務的には大きく変わらないかもしれません。しかし、「家賃減額」という言葉が法律に明記されることで借主の権利意識はより高まると予想されます。「エアコンがずっと壊れている。壊れていた期間は家賃減額になるはずだから、払いすぎた家賃を返金してくれ」といった要求も考えられます。

日常的なメンテナンスや管理の徹底、不具合発見時には入居者からすぐ報告がもらえるような関係性の構築、連絡を常時受けられる手段の用意などが必要になってくるでしょう。

今回の民法改正は、基本的に借主側へ有利に働くものがほとんど。オーナー側は、民法改正への備えをせず、今までどおりに賃貸運営をしているだけでは、無用なリスクを抱えてしまいます。民法改正で賃貸運営の難易度が上がるからこそ、われわれプロの管理業者への期待は大きくなるはずです。民法の改正内容を理解し、それにも対応できる準備とアピールをして、管理ビジネスの拡大にぜひつなげてください!

今回のポイント

  • 個人の連帯保証人との保証契約書に「極度額」の記載が必要になります。
  • 借主の死亡以後に発生した債務については、個人連帯保証人の責任範囲外となります。
  • 「事業のための賃貸借契約」では、個人の連帯保証人を付ける場合に、主たる債務者から保証人に自らの財務状況等の 情報提供が必要になります。
  • 賃貸の目的物である建物(部屋)や設備が不具合などで予定どおりに使えない場合、家賃減額の対象となることが法律に明記されます。

(公益社団法人 全日本不動産協会発行「月刊不動産」2017.11月号掲載)


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