権利関係

【宅建民法を攻略】契約は絶対に守らなければならないの?~契約の成立と有効要件~

投稿日:2019年3月7日 更新日:


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契約とは何か~契約は絶対に守らなければならないの?~

1.法律行為って何?

これまで、法律行為のことを、本書ではあえて「契約等」と表現していました。理由は、法律行為という言葉が少し難しく感じられるからです。ただ、避けては通れないので、ここで法律行為についてしっかりと理解しておきましょう。
法律行為とは、人が法的な効果を発生させようとする行為で、意思表示を要素とするものをいいます。その中には単独行為、契約、合同行為の3種類があります。法律行為の中でも最も重要な契約についてさらに詳しく勉強して行きましょう。

法律行為とは

法理行為とは

 

《用語の意味》
単独行為…単一の意思表示により構成される法律行為のことをいいます。たとえば、追認、取消し、解除、遺言などです。
契約…2つ以上の意思表示の合致により成立する法律行為のことをいいます。
合同行為…2つ以上の意思表示が、相対立せずに同一の目的に向けられた形で合致することにより成立する法律行為のことをいいます。たとえば、法人設立行為などです。

 

2.どんな契約でも自由に結べるの?

今、勉強している民法という法律にはある特徴があります。それは、「守らなくてもよい」ということです。何を突然!と思われるかもしれません。法律なのに守らなくてもよいとは論理矛盾なのではと思われるでしょう。しかし、本当なのです。
私たちの住む社会のルールは、250年ほど前の近代革命でその土台が作られました。そのときのキャッチフレーズは自由でした。自分の人生を自分の自由な意思で自由に決められるというのが近代革命で私たちが勝ち取ったものなのです。この自由というキャッチフレーズから、私たちは、誰と契約をしようが、どのような内容で契約を結ぼうが自由だ!という結論が導かれます。したがって、民法などという国が作ったルールよりも、互いに話し合った結果結ばれた契約が優先するのです。これを契約自由の原則といいます。
しかし、たとえば「〇〇さんを殺してきてくれたら、成功報酬として500万円支払う」という内容の契約なども、有効だと考えるととても恐ろしい世の中になります。どんな内容の契約でも許されるのかといえば、そうではなく、社会秩序を乱すような内容の契約は許されません。これを公序良俗に反するため無効と言うことがあります。

 

契約の成立要件~口約束だけでも契約は成立するの?~

1.契約を結ぶってどういうこと?

売買契約を結ぶと、買主は代金を支払い、売主は品物を引き渡し、その品物は売主から買主の物になります。このような契約の結果として生じることを、法律の世界では効果と呼びます。世の中で行われる契約の大半は何の問題もなく契約が結ばれると法的な効果が生じます。ただ、もし、契約の際に詐欺が行われたら、金額を間違えてしまったら、他人に契約することをお願いしていたら、契約に条件を付けていたらどうなるのでしょうか。
この章では契約が有効に効力を発生するまでを4つの段階に分けて検討していきます。
契約が成立して有効に効力を発生させるためには、①成立要件、②有効要件、③効果帰属要件(代理)、④効力発生要件(条件・期限)の4つのハードルをクリアーする必要があります。

 

2.契約は見た目で一致すれば成立するの?

契約が有効に成立すると債権が発生します。ただ、債権が発生するまでにはいくつかのハードルを越える必要があります。
まずは、契約当事者の意思表示が一致する必要があります。申込と承諾が一致しなければならないともいいます。この申込と承諾の意思表示は、外形で一致すればよいとされています。たとえば、Aが本当は甲という土地を購入したいのにもかかわらず、「乙地を下さい」と申込みをして、それに対して、Bが「乙地ですね。お買い上げありがとう」と承諾した場合、内面(本当の意思)では意思が一致していないのですが、外形(見かけ)では一致しているので、契約は成立することになります。
また、契約の成立に書面や引渡などは必要なく、原則として口約束でも成立します。ちなみに、契約書などは後に争いが生じたときの証拠となります。

契約の成立要件

契約の成立要件

 

《用語の意味》
債権…特定の相手方にある一定の行為を要求する権利のこと。また、債権をもつ者を債権者といいます。
債務…債権に対応する相手方の義務のこと。また、債務を負担する者を債務者といいます。

公序良俗に反して無効となった判例は多数あります。2011年12月16日の最高裁判決では、建築基準法等の法令の規定に適合しない悪質な計画に基づく建物の建築を目的とする請負契約が公序良俗に反し無効とされています。また、1963年1月18日の最高裁判決では、債務者の経済的困窮に乗じて締結された、債務不履行のときには債権額の約8倍の価格の不動産を債権者が確定的に取得する旨の契約が公序良俗に反し無効とされています。

 

契約の有効要件~契約する意思がないのに契約を結んだら?~

1.取消と無効も結果は同じ?

これまで、特に詳しい説明もなく、「取り消す」とか「無効」という言葉を使ってきました。これらも法律用語なので、ここでしっかりとその意味を理解しておきましょう。
無効とは、法律効果を当初からまったく生じないものとして取り扱うものをいいます。それに対して、取消しとは、いったん法律効果を発生させた後に、これを消滅させる余地を認めるものをいいます。

無効と取消の違い

無効と取消の違い

 

2.取消と無効はどこが違うの?

無効の場合は、いつでも・誰でも、主張できるのが原則です。つまり、時効にかからず、利害関係があれば誰でも主張できます。また、無効の場合は、はじめからそのような契約が存在しないので、追認することもできません。
それに対して、取消の場合は、一定期間それを主張しなければ時効によって主張できなくなり、取消の主張ができる者が限られています。また、取消の場合は追認することができます。
このように取消と無効は、結果は同じなのですが、その内容が異なります。

 

3.取消しの主張には時間制限がある?

無効の主張には時間制限がありませんが、取消しの主張には時間制限があります。取り消すことができる権利(取消権といいます)は、追認することができる時から5年間行使しないときは、時効によって消滅します。追認することができる時とは、原則として取消しの原因となっていた状況が消滅した時をいいます。未成年者は成年になった時、成年被後見人は後見開始の審判が取り消された時、詐欺や強迫を受けた者は詐欺や強迫の情況を脱した時をいいます。
また、行為の時から20年経過したときも消滅します。行為の時とは、問題の行為、たとえば未成年の法律行為、詐欺による意思表示などが行われた時をいいます。

なお、5年と20年とする取消権の時効の規定は、制限行為能力と意思表示以外の規定には適用されません。たとえば、詐害行為取消権や書面によらない贈与の取消し、無権代理行為の取消しには適用されません。

 

4.取消しの主張は限られた者しかできない?

制限行為能力を理由に取り消すことができる行為は、制限行為能力者またはその代理人、承継人もしくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができます。また、詐欺や強迫を理由に取り消すことができる行為は、詐欺や強迫を受けて意思表示をした者またはその代理人もしくは承継人に限り、取り消すことができます。

《用語の意味》
承継人…承継人には包括承継人(たとえば、相続人のように、前主の権利義務を包括的に承継した者)と特定承継人(たとえば、不動産の譲受人のように、個別の権利だけを承継した者)の2種類があり、取消権者の承継人は両者を含みます。

 

5.取消した後はどうなるの?

取り消された行為は、はじめから無効だったということになります。一応生じた効果は、取消しの主張により、一度も生じなかったことになります。ちなみに、これを遡及効(そきゅうこう)と呼びます。したがって、法的な効果は、取消しの場合も無効の場合も同じです。
たとえば、不動産の売買契約が取り消された場合、一応生じた代金支払債務や不動産引渡債務は、履行する必要がなくなります。また、すでに履行されている場合は、代金や不動産の返還請求をすることになります(不当利得返還請求と呼びます)。

 

6.取り消すことができる行為は追認できる?

追認については制限行為能力のところでも一度勉強しました。
追認とは、一応有効に成立している法律行為を確定的に有効とする意思表示をいいます。追認するには、法律行為を取り消すことができるものであることを知っていることと、取消の原因たる情況が止んだ後であることの要件を満たす必要があります。

なお、法律上の一定の事実があれば、取り消すことができる法律行為が取り消すことができなくなり確定的に有効になります(法定追認)。一定の事実とは、①全部または一部の履行、②履行の請求、③更改、④担保の供与、⑤取り消すことができる行為によって取得した権利の全部または一部の譲渡、⑥強制執行をいいます。

無効

取消

効力

一度も有効になってない 取り消されるまで有効

主張権者

誰でも主張できる

ただし、錯誤による無効は表意者のみ主張できる

取り消すことのできる意思表示をした人やその代理人、承継人、同意権者

時効

時効による制限はない

いつでも無効を主張できる

取消権は、追認できる時より 5年、行為の時より20年で消滅する

錯誤による意思表示

虚偽表示

心裡留保

制限行為能力者の行為

詐欺・強迫による意思表示

 

過去問ではこのように出題されている

【問 2】 所有権の移転又は取得に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。 (2017年度)
1 Aの所有する甲土地をBが時効取得した場合、Bが甲土地の所有権を取得するのは、取得時効の完成時である。
2 Aを売主、Bを買主としてCの所有する乙建物の売買契約が締結された場合、BがAの無権利について善意無過失であれば、AB間で売買契約が成立した時点で、Bは乙建物の所有権を取得する。
3 Aを売主、Bを買主として、丙土地の売買契約が締結され、代金の完済までは丙土地の所有権は移転しないとの特約が付された場合であっても、当該売買契約締結の時点で丙土地の所有権はBに移転する。
4 AがBに丁土地を売却したが、AがBの強迫を理由に売買契約を取り消した場合、丁土地の所有権はAに復帰し、初めからBに移転しなかったことになる。

正解:4

1 × 時効の効力はその起算日にさかのぼります(民法144条)。取得時効においてはその要件である占有が始まった時が起算日です。したがって、Bが甲土地の所有権を取得するのは時効完成時ではなく占有開始時です。
2 × 取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得します(民法192条)。不動産についてはこのような規定がありません。したがって、BがAの無権利について善意無過失であるというだけで、Bが乙建物の所有権を取得することはありません。なお、真の所有者Cの落ち度により登記名義がAとなっていて、Bがその名義を過失なく信用したような場合には民法94条2項や民法110条の類推適用により、Cが所有権を取得する可能性はあります。
3 × 所有権は売買契約時に移転するのが原則です(民法176条、最判昭和33年6月20日)。しかし、代金の完済、所有権移転登記手続の完了までは所有権を買主に移転しない旨の特約が定められた場合はその特約が優先します(最判昭和38年5月31日)。本問の場合、契約時点ではなく代金完済時に丙土地の所有権がBに移転します。
4 ○ 取り消された行為は、初めから無効であったものとみなされます(民法121条)。したがって、丁土地は初めからBに移転しなかったことになります。

 

(著:株式会社Kenビジネススクール 代表 田中謙次

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宅建試験を知りつくす不動産取引法務の専門家。株式会社Kenビジネススクール代表取締役社長。2004年に設立した同社は登録講習、登録実務講習の実施機関として、国土交通大臣の登録を受けている。うかるぞ宅建士シリーズ、サクッとうかる宅建士シリーズ他多数の書籍を執筆。スタケン初代講師、企業研修の講師(2018年度において合格率100%の実績がある)としても幅広く活躍している。

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