権利関係

【宅建民法を攻略】認知症になった場合に備えて~被保佐人・被補助人~

投稿日:2019年3月6日 更新日:


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被保佐人~法定の重要な行為のみが同意の対象に~

1.被保佐人とは?

被保佐人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分な者として、家庭裁判所による保佐開始の審判を受けた者をいいます。成年被後見人よりも精神上の障害が軽い状態にある人です。この審判は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人または検察官の請求により、することができます。

 

2.被保佐人は自由に契約ができるの?

被保佐人は、不動産の売買や保証などの法律に定められた一定の重要な契約等を行う場合に限り、保佐人の同意またはそれに代わる家庭裁判所の許可が必要です。ただし、日用品の購入その他の日常生活に関する行為は同意が不要です。

 

《用語の意味》
同意に代わる裁判所の許可とは?
保佐人が必要もないのに同意を拒んだ場合に、被保佐人のための救済措置として、家庭裁判所が、保佐人の同意に代えて、被保佐人の行為に許可を与えることができるとしたものです。

《少し発展》
同意が必要な法律に定められた一定の重要な行為とは次のものです。
1 元本を領収し、または利用すること。
2 借財または保証をすること。
3 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
4 訴訟行為をすること。
5 贈与、和解または仲裁合意をすること。
6 相続の承認もしくは放棄または遺産の分割をすること。
7 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、または負担付遺贈を承認すること。
8 新築、改築、増築または大修繕をすること。
9 一定期間(土地5年、建物3年)を超える賃貸借をすること。

 

3.同意を得ないとどうなるの?

保佐人の同意が必要な行為であるにもかかわらず、同意も、それに代わる家庭裁判所の許可も得ずに行われた被保佐人の行為は、被保佐人本人や保佐人が取り消すことができます。被保佐人自身が取り消す場合でも、未成年者と同様に、そのために保佐人の同意を要するわけではありません。

 

4.取り消さないといけないの?

取消権者は取り消さずに追認することもできます。追認は相手方に対して行います。追認すると取り消すことができなくなります。なお、被保佐人は保佐人の同意がなければ追認できません。

 

被補助人~一部の行為のみが同意の対象~

1.被補助人とは?

被補助人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な者として、家庭裁判所による補助開始の審判を受けた者をいいます。被保佐人よりも精神上の障害が軽い状態にある人です。この審判は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人または検察官の請求により、することができます。
ただし、成年後見や保佐と異なり、本人以外の者の請求で開始するときは、本人の同意が必要となります。

 

2.補助人の同意を要する行為は?

家庭裁判所は、特定の行為(被保佐人が同意を要する行為の一部)について、補助人の同意を必要とする旨の審判をすることができます。ただし、本人以外の者の請求によりこの審判をするには、本人の同意が必要です。

 

3.同意を得ないとどうなるの?

補助人の同意が必要な行為であるにもかかわらず、同意も、それに代わる家庭裁判所の許可も得ずに行われた被補助人の行為は、被補助人本人や補助人が取り消すことができます。被補助人自身が取り消す場合でも、未成年者と同様に、そのために補助人の同意を要するわけではありません。

 

4.取り消さないといけないの?

取消権者は取り消さずに追認することもできます。追認は相手方に対して行います。追認すると取り消すことができなくなります。なお、被補助人は補助人の同意がなければ追認できません。

 

《ワンポイント・アドバイス》
被保佐人と被補助人については、近年よく出題されています。同意が必要な行為と同意を得ずに行った場合の効果からの出題がほとんどです。学習の順序としては、頻出分野の未成年者と成年被後見人をしっかりと理解・暗記した後で、被保佐人・被補助人を学ぶのがベターです。

 

制限行為能力者の相手方の保護

1.制限行為能力者と契約等をした場合は?

制限行為能力者の行った契約は後で取り消される可能性があります。いつ取り消されるかわからない状態では、相手方は安心して転売できなくなります。そこで、この不安定な状態から相手方を救済する制度が催告権です。

 

2.どのような催告ができるの?

相手方は、1カ月以上の期間を定めて取り消すことのできる行為を追認するか否かを催告することができます。追認してもらえれば、もう取り消されなくなるので、相手方は安心です。つまり、相手方が追認する権限をもっている人(法定代理人・保佐人・補助人)に対して、「追認してもらえますか?」と伝える(催告)というわけです。

 

3.返答がなかった場合は?

もし催告したのに何の返答もなかった場合は、追認したものとみなされます。ただし、特別の方式を要する場合には、その期間内にその方式をとったという通知がない限り、逆に取り消したものとみなされます。

なお、特別の方式を要する場合とは、法定代理人、保佐人または補助人が単独で同意を与え、または代理することのできない行為の意味です。後見人が後見監督人の同意を必要とする範囲内の行為などがこれにあたります。

 

4.被保佐人または被補助人との契約等だったら?

相手方は、被保佐人または被補助人に対しては、1カ月以上の期間を定めてその保佐人または補助人の追認を得るべき旨の催告をすることができます。その被保佐人または被補助人がその期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなされます。

 

5.制限行為能力者が詐術を用いたら?

契約にあたって制限行為能力者が詐術(さじゅつ)(自分が制限行為能力ではないと積極的にだますこと。例:免許証を偽造するなど)を用いた場合は、制限行為能力を理由に契約を取り消すことができません。未成年者が免許証を偽造して年齢を偽り成年者として契約を結んだ場合や、同意を得ていないのに同意を得たと信じさせる場合などがその例です。

 

過去問ではこのように出題されている

【問 2】 制限行為能力者に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。(2016年度)
1 古着の仕入販売に関する営業を許された未成年者は、成年者と同一の行為能力を有するので、法定代理人の同意を得ないで、自己が居住するために建物を第三者から購入したとしても、その法定代理人は当該売買契約を取り消すことができない。
2 被保佐人が、不動産を売却する場合には、保佐人の同意が必要であるが、贈与の申し出を拒絶する場合には、保佐人の同意は不要である。
3 成年後見人が、成年被後見人に代わって、成年被後見人が居住している建物を売却する際、後見監督人がいる場合には、後見監督人の許可があれば足り、家庭裁判所の許可は不要である。
4 被補助人が、補助人の同意を得なければならない行為について、同意を得ていないにもかかわらず、詐術を用いて相手方に補助人の同意を得たと信じさせていたときは、被補助人は当該行為を取り消すことができない。

正解:4

1 × 一種または数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有します(民法6条)。未成年者が営業を営む場合、営業に関連して起きる取引行為についてそのつど許可を求めるのは、大変わずらわしいし、それでは、その営業を発展させる支障にもなりかねないので、民法は、営業許可に関する行為能力の自由を認めました。営業に関する行為とは、営業を行うのに直接・間接に必要な一切の行為を含みます(資金の借入れ・店舗の購入・店員の雇い入れ・広告などの準備行為など)。本問の場合、古着の仕入販売に関する営業を許可されているだけであり、自己が居住するための建物の購入はここに含まれていません。したがって、法定代理人の同意を得ずに行った当該売買契約は取り消すことができます。
2 × 被保佐人が一定の行為をするには、その保佐人の同意を得なければなりません(民法13条1項)。不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすることも(同項3号)、贈与の申込みを拒絶することも(同項7号)、保佐人の同意が必要な行為です。なお、贈与することは同意が必要ですが、贈与を受けることは同意が不要です。
3 × 成年後見人は、成年被後見人に代わって、その居住の用に供する建物またはその敷地について、売却、賃貸、賃貸借の解除または抵当権の設定その他これらに準ずる処分をするには、家庭裁判所の許可を得なければなりません(民法859条3)。この規定は成年後見監督人について準用されています(民法852条)。つまり、後見監督人は家庭裁判所に代わって許可を出す権限はなく、家庭裁判所に許可を求める立場です。なお、後見監督人の職務は、①後見人の事務を監督すること、②後見人が欠けた場合に、遅滞なくその選任を家庭裁判所に請求すること、③急迫の事情がある場合に、必要な処分をすること、④後見人またはその代表する者と被後見人との利益が相反する行為について被後見人を代表することです(民法851条)。
4 〇 制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができません(民法21条)。同意を得たと信じさせることも詐術にあたります(大判明治37年6月16日、大判大正12年8月2日)。

 

(著:株式会社Kenビジネススクール 代表 田中謙次

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宅建試験を知りつくす不動産取引法務の専門家。株式会社Kenビジネススクール代表取締役社長。2004年に設立した同社は登録講習、登録実務講習の実施機関として、国土交通大臣の登録を受けている。うかるぞ宅建士シリーズ、サクッとうかる宅建士シリーズ他多数の書籍を執筆。スタケン初代講師、企業研修の講師(2018年度において合格率100%の実績がある)としても幅広く活躍している。

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