過去問

【宅建民法を攻略】嘘つきが契約すると?~心裡留保・虚偽表示・錯誤~

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心裡留保~冗談で契約しても有効になるの?~

1 心裡留保ってなに?

心裡留保とは、意思表示の表意者が表示行為に対応する真意(本当の気持ち)のないことを知りながらする単独の意思表示をいいます。わかっていながら嘘をつくこと、冗談のことです。たとえば、本当は売るつもりなんかないのに「売りますよ!」と意思表示するような場合です。

 

2 心裡留保の場合、契約は有効?

心裡留保は原則として有効です。ただし、相手が真意を知っていたり知ることができたりした場合には無効となります(民法93条)。たとえば、表示者が冗談で言っていると相手がわかっていて結んだ契約は無効になります。

心裡留保

心裡留保

《用語の意味》
表意者…意思表示をした者をいいます。
善意…ある事実を知らないこと。
悪意…ある事実を知っていること。

 

虚偽表示~財産隠しの目的で売ったことにしておくのは無効?~

1 虚偽表示ってなに?

虚偽表示とは、表意者が相手方と通謀(結託)して行った真意と異なる意思表示をいいます。お互いわかっていながら嘘をつくことです。たとえば、借金取りに追われている人が、自分の土地を借金取りに持っていかれるのを防ぐために、知人にお願いしてその土地を売ったということにしておくなどです。もちろん、犯罪にもなります。
虚偽表示による意思表示の効果は無効となります。

虚偽表示

虚偽表示

2 虚偽表示の後に第三者が取引関係に入ってきたら?

虚偽表示で無効となった場合、善意の第三者に対抗できません。第三者は、善意であればよく、無過失であることも登記を備えている必要もありません。これは、虚偽の外形を信頼して取引関係に入った第三者を保護するために規定されたものです(取引の安全)。

3 善意の第三者ってどんな人?

ここでいう第三者とは、虚偽の意思表示の当事者またはその一般承継人以外の者であって、その表示の目的につき法律上利害関係を有するにいたった者をいいます。
なお、虚偽表示による契約の無効は、第三者から善意で目的物を取得した者(転(てん)得者(とくしゃ))に対しても、対抗することができません。一度、善意の第三者が現れた場合には、その後目的物を取得した者に対しては、その者の善意・悪意を問わず、虚偽表示による契約の無効を対抗することができないのです。

虚偽表示の無効と第三者の保護

虚偽表示の無効と第三者の保護

なお、事情を知らずに、仮装譲渡(虚偽表示による譲渡のこと)された土地を買った人やその転得者、その土地に抵当権の設定を受けた人が善意の第三者の典型です。それに対して、仮装譲渡された土地上に建てられた建物の賃借人は、独立した利益がなく、第三者ではありません。また、仮装譲渡の譲受人に対して単に債権をもっているだけの一般債権者は、新たな関係を作ったわけではないため、第三者ではありません。しかし、その債権者が仮装譲渡された目的物を差し押さえると第三者になります。

 

錯誤~不注意で契約金額を間違えた場合は?~

1 錯誤ってなに?

錯誤とは、表示に対応する意思がなく、しかも意思がないことにつき表意者の認識が欠けていることをいいます。勘違いのことです。たとえば、乙地を売るつもりで契約書にサインしたつもりが、甲地の売買契約書にサインしてしまったような場合です。

 

2 錯誤で契約するとどうなるの?

錯誤で契約した場合、その錯誤が要素の錯誤であって、表意者に重大な過失(重過失)がなかった場合には、無効となります。この場合、無効なので、いつでも、どこでも、誰でもそれを主張できそうなのですが、錯誤の場合は、例外として、表意者(勘違いした人)が主張しないと無効にはなりません。

錯誤が無効となる要件

錯誤が無効となる要件

 

錯誤無効の主張権者

錯誤無効の主張権者

3 動機に錯誤があった場合も無効?

ところで、契約の内容そのものではなく、契約しようと思った理由について錯誤があった場合にも同じような結論となるのでしょうか?たとえば、「鉄道が開通して地価が上がるという噂を信じて、価値の低い土地を高額で買い受けたが、噂は事実無根であった場合」などのような場合です。このような錯誤を、要素の錯誤と区別して動機(どうき)の錯誤といいます。
動機の錯誤の場合には、原則として、錯誤無効を主張することはできません。ただし、相手方に動機が表示された場合(黙示的な表示も含みます)には、錯誤無効を主張することがでます。たとえば、上の例では、鉄道が開通して地価が上がる可能性があるので購入しますときちんと売主に話していたような場合が、動機が表示された場合となります。

動機の錯誤

動機の錯誤

過去問ではこのように出題されている

【問 1】 AがBに甲土地を売却した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。(2018年度)
1 甲土地につき売買代金の支払と登記の移転がなされた後、第三者の詐欺を理由に売買契約が取り消された場合、原状回復のため、BはAに登記を移転する義務を、AはBに代金を返還する義務を負い、各義務は同時履行の関係となる。
2 Aが甲土地を売却した意思表示に錯誤があったとしても、Aに重大な過失があって無効を主張することができない場合は、BもAの錯誤を理由として無効を主張することはできない。
3 AB間の売買契約が仮装譲渡であり、その後BがCに甲土地を転売した場合、Cが仮装譲渡の事実を知らなければ、Aは、Cに虚偽表示による無効を対抗することができない。
4 Aが第三者の詐欺によってBに甲土地を売却し、その後BがDに甲土地を転売した場合、Bが第三者の詐欺の事実を知らなかったとしても、Dが第三者の詐欺の事実を知っていれば、Aは詐欺を理由にAB間の売買契約を取り消すことができる。

正解:4

1 〇 取消しの意思表示がされると、いったん有効に成立した契約は契約締結時点に遡って初めから無効であったものとして扱われ、当事者双方には、履行されたものがあれば、その返還義務が生じます(民法121条)。そして、当事者双方の返還義務は同時履行の関係となります(最判昭和47年9月7日)。したがって、BはAに登記を移転する義務を、AはBに代金を返還する義務を負い、各義務は同時履行の関係となります。
2 〇 錯誤について表意者に重大な過失があり、表意者自ら無効を主張できない場合は、相手方および第三者も無効を主張できません(最判昭和40年6月4日)。したがって、BもAの錯誤を理由として無効を主張することはできません。
3 〇 相手方と通じてした虚偽の意思表示(通謀虚偽表示)は無効です。しかし、この無効は善意の第三者には対抗することができません(民法94条)。したがって、Cが仮装譲渡の事実を知らなければ、Aは、Cに虚偽表示による無効を対抗することができません。
4 × 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができます(民法96条2項)。したがって、Aは善意のBに対して取消しを主張できません。本問の場合、善意の相手方BからさらにDに転売され、Dが詐欺の事実を知っているので取消の主張ができるのではないかが問題となります。この点、通説的な見解は、転得者は前主の地位を承継することができ、善意の者からの転得者は悪意でも保護されるとします(絶対的構成)。法律関係を早期に安定させるべきだからです。したがって、Aは詐欺を理由にAB間の売買契約を取り消すことができません。

 

(著:株式会社Kenビジネススクール 代表 田中謙次

《推薦図書ー田中謙次が執筆する書籍です》

 

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宅建試験を知りつくす不動産取引法務の専門家 株式会社Kenビジネススクール代表取締役社長 2004年に設立した同社は登録講習、登録実務講習の実施機関として、国土交通大臣の登録を受けている。 うかるぞ宅建士シリーズ、サクッとうかる宅建士シリーズ他多数の書籍を執筆。 スタケン講師、企業研修の講師(2018年度において合格率100%の実績がある)としても幅広く活躍している。

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