過去問

【宅建民法を攻略】代理権がないのに代理人として契約したら?~無権代理~

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無権代理~代理権がないのに代理人として契約したら?~

1 無権代理ってなに?

無権代理とは、代理権がないにもかかわらず、代理人であるとして行われた行為をいいます。与えられた代理権の範囲外の行為をする場合も無権代理となります。

 

2 無権代理行為の効果は?

無権代理行為が行われた場合、その効果は本人に帰属しません。しかし、それは本人の利益を考慮したものです。したがって、本人が効果を帰属させることを承認すれば、本人に効果が帰属します。
追認は、原則として、行為の時にさかのぼってその効力が生じます。ただし、第三者の権利を侵害できません。

 

3 無権代理行為の相手方は追認を求められる?

無権代理行為の相手方は、相当な期間を提示した上で、本人に追認をするよう促すことができます(催告)。その期間内に本人が返答(確答)しなかった場合は追認を拒絶したものとみなされます。なお、相手方は、無権代理の事実を知っていた場合であっても催告できます。

 

4 無権代理行為の相手方は取り消すこともできるの?

本人が追認しない間であれば、無権代理行為の相手方は、無権代理人との間で締結した契約を取り消すことができます。ただし、相手方は無権代理について善意でなければなりません。

 

5 無権代理行為の相手方は無権代理人に責任追及できるの?

本人が追認しない間であれば、善意かつ無過失の相手方は、無権代理人に対して契約内容を果たせと請求(履行請求)するか、または損害賠償を請求することができます。

無権代理の効果

無権代理の効果

 

無権代理と相続~本人や無権代理人が死亡した場合は?~

1 無権代理の後に本人が死亡した場合はどうなるの?

Aにはひとり息子のBがいた。その息子であるBはギャンブルが大好きで、いつの間にか借金が莫大な額にふくれ上がっていた。困り果てたBは父親Aの部屋からこっそり土地の登記簿と実印を盗み出し、Aの代理人として、父親A所有の土地を、債権者のCに売ってしまった。それを知ったAはショックのあまり死亡した。Aは息子B以外に血縁がいなかったので、その財産のすべてを息子のBが相続した。
さて、この場合、息子であり無権代理人でもあるBは、父親であり本人でもあるAの有していた追認拒絶権をCに行使して土地の引き渡しを拒むことができるでしょうか。

無権代理の後に本人が死亡した場合の措置

無権代理の後に本人が死亡した場合の措置

この場合、複雑な問題が生じます。本人が死亡することで相続というものが発生します。つまり、Aの有していた権利・義務は相続人に相続されます。その権利の中には、Bの無権代理行為における追認拒絶権と土地の所有権もあります。
ここに問題の種があります。
Bには無権代理人としての責任があります。それは、民法177条の履行義務と損害賠償義務です。損害賠償の場合はお金の話なのであまり問題にはなりません。問題なのは、履行義務です。土地のような特定物の場合、代わりの土地をCに渡すということができないので、相続した土地を渡す義務しかありえません。しかし、BはAの持っていた追認拒絶権、すなわち、土地はCには渡さないといえる権利をも相続しています。
この権利と、履行義務は相反するものです。どちらかしか選択できません。
ただ、結論はもう皆さんの頭の中にあるはずです。そうです。Bに追認拒絶権を行使させて土地をCに渡さないという主張を認めることは、どう考えても妥当な結論とはいえません。ただその法的根拠を何に求めるかです。
判例は、民法1条にその根拠を見出しています。つまり、「信義誠実の原則」に違反するので、Bには追認拒絶権の行使を認めないとします。
このような考え方を、禁反言の原則とかエストッペルといいます。

 

2 無権代理の後に無権代理人が死亡した場合はどうなるの?

無権代理の後に無権代理人が死亡した場合はどうなるの?

無権代理の後に無権代理人が死亡した場合はどうなるの?

本人が追認や追認拒絶をしないうちに無権代理人が死亡し、本人が無権代理人を相続したときは、本人は、無権代理人が死ななければ普通に行使できた追認拒絶権を主張することができます。図の本人Aが追認拒絶権を行使すれば、Cは不動産を取得できません。
しかし、相手方Cが無権代理行為について善意・無過失であった場合で、無権代理人Bに対して、損害賠償請求を主張していた場合は話が別です。この状態で、無権代理人Bが死亡した場合、本人Aはこの無権代理人Bの相手方Cに対する責任を相続したことになります。この場合、本人Aは追認拒絶できる立場にあったことを理由に、この損害賠償責任を免れることができません。

 

表見代理~無権代理行為について本人にも責任があった場合は?~

1 表見代理ってなに?

表見代理は、代理権がないにもかかわらず、あたかも代理権があるかのように見える場合に、信頼して取引関係に入った者を保護するため、代理の効果を認める制度をいいます。①本人が代理権を与えたといいながら実際には与えていなかった場合、②代理権の範囲を越えた場合、③前に存在した代理権が消滅した場合の3つがあります。
表見代理が成立すると、本人は代理行為の効果帰属を拒めなくなります。なお、相手方は、表見代理を主張せずに無権代理人の責任を追及することもできます。

表見代理

表見代理

2 代理権があるかのような外観を作りだしたら?

本人が代理権を与えていないにもかかわらず、第三者に対して、ある特定の人に代理権を与えたことを表示した場合、それを過失なく信じた第三者と特定人との間で行われた契約は表見代理となり、本人が責任を負います。
次の要件を満たす必要があります。

  1. 他人に代理権を与えた旨の表示をしたこと。
  2. 代理権を授与された旨表示された人が、表示を受けた第三者と表示された代理権の範囲内で代理行為をしたこと。
  3. 相手方が代理権のないことを知らず、かつそのことに過失がないこと。

《用語の意味》
代理権を与えた旨の表示…ある人が自分の代理人であることを一般に信頼させるような行為をすることを許容する場合をすべて含みます。たとえば、AからBに「白紙委任状」を交付することは、その目的がどうであっても、Bからその白紙委任状を見せられたCに対しては、AはBを自分の代理人とする旨を表示したことになります。

 

3 代理人が権限外の行為をしたら?

代理人がその権限外の行為をした場合に、第三者がその権限があると信じてしまうような正当な理由があるときは、表見代理として本人は責任を負います。
次の要件を満たす必要があります。

  1. 代理人に何らかの代理権(基本代理権)があること。
  2. 基本代理権を越えた行為がなされたこと。
  3. 相手方が権限内と信じる正当な理由があること。

代理人が直接本人の名で権限外の行為をした場合、相手方がその行為を本人自身の行為であると信じたことにつき正当な理由がある場合に限り、表見代理の規定を類推適用して本人が責任を負います。

《用語の意味》
基本代理権とは…私法上の法律行為を行う権限をいいます。公法上の行為や事実上の行為は原則として基本代理権に含まれません。ただし、公法上の行為といっても、印鑑証明書の交付申請をする代理権のように、交付された印鑑証明書が私法上の取引に使われるものであって、それを予定している場合は、例外として、基本代理権に当たる場合もあります。また、事実行為といえども、たとえば、ビラまきなどの事実行為ならまだしも、手形の発行などの場合は基本代理権となり得ます。

 

《日常家事債務と法定代理》
夫婦間に明示的・黙示的に代理権が与えられていると解される事情のない場合に、民法761条を根拠にして代理権を認めることができるのでしょうか。
また、認めるとした場合、同法による「日常家事」とは何を意味し、それを基本代理権として110条の表見代理は成立するのでしょうか。

まず、110条の権限踰越の表見代理における基本代理権には、法定代理も含むとするのが判例です。
そして、民法761条を根拠に代理を認めた場合、これも法律を根拠に代理権が発生するので法定代理ということになります。
条文上は、代理権を与える旨が明記されていないので、少し悩むところですが、判例は、連帯債務者になるという結果をとらえて、日常家事に関する債務については代理権を与えていると判断します。
ここで「日常家事に関する法律行為」とは何かが問題となります。これは、その夫婦の経済事情・社会的地位、職業、収入などを考慮して個別に判断されます。つまり、人によってマチマチだということです。
ですから、結論として、民法761条の「日常家事」に該当する部分については法定代理権が夫婦間で発生します。
さて、問題なのは、この法定代理権を超えて(踰越して)代理行為をしてしまった場合に、110条をつかって表見代理が成立するかです。たとえば、Aの妻BがAの実印と印鑑証明書を勝手に持ち出して、夫Aの代理人としてサラ金から数百万の借金をしたような場合が考えられます。もちろん、その夫婦における経済事情では、数百万の借金が日常家事に関する代理行為とは呼べないということが前提になります。
判例は、このような場合、民法110条を類推適用するとしています。ただ、この判例に関しては、学説上の批判があります。法定代理に基本代理権を認めて110条を適用するのに、761条の場合には直接適用しないのは論理一貫していないのではないかとの批判です。この点、有力説は、110条の適用を認めています。こちらの方が簡単に説明できます。

 

4 代理権消滅後に代理行為をしたら?

代理権消滅後に、もと代理人であった者が代理行為をし、これに対し、相手方が善意で過失がない場合には、表見代理として相手方は代理の効果を本人に対して主張することができます。
次の要件を満たす必要があります。

  1. 代理権が消滅したこと。
  2. 相手方が代理権の消滅について善意かつ無過失であること。

5 無権代理人に対する責任追及と表見代理の主張が競合したら?

表見代理の要件と、無権代理人に対する責任追及の要件の両方を満たす場合、相手方は表見代理の主張をしないで、無権代理人の責任を追及することができます。

 

過去問ではこのように出題されている

【問 3】 AがBの代理人としてB所有の甲土地について売買契約を締結した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。(2008年度)
1 Aが甲土地の売却を代理する権限をBから書面で与えられている場合、A自らが買主となって売買契約を締結したときは、Aは甲土地の所有権を当然に取得する。
2 Aが甲土地の売却を代理する権限をBから書面で与えられている場合、AがCの代理人となってBC間の売買契約を締結したときは、Cは甲土地の所有権を当然に取得する。
3 Aが無権代理人であってDとの間で売買契約を締結した後に、Bの死亡によりAが単独でBを相続した場合、Dは甲土地の所有権を当然に取得する。
4 Aが無権代理人であってEとの間で売買契約を締結した後に、Aの死亡によりBが単独でAを相続した場合、Eは甲土地の所有権を当然に取得する。

正解:3

1 × 不動産の売却の代理人自ら購入するような自己契約は禁止されています。ただし、本人の許諾があれば許されます(民法108条)。本人の利益が不当に害されるおそれがあるからです。代理権限を書面で与えていたからといって、自己契約によって、代理人が当然に土地を取得するわけではありません。
2 × 同一の法律行為(契約などのこと)について、当事者双方の代理人となることは、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為などを除き、原則として禁止されています(民法108条 双方代理)。本人や当事者の利益を害するおそれがあるからです。法的な効果としては無権代理になります。本問の場合、Aは、BとCの双方の代理人となり契約を甲土地の売買契約を締結しています。契約を締結したとあるので、債務の履行とはいえず、また本人があらかじめ許諾したとも書かれていません。したがって、Aのした行為は無権代理となり、BCに効果が帰属しません。つまり、Cは甲土地の所有権を当然に取得しません。
3 ○ 無権代理人が本人を相続した場合、自らした無権代理行為につき本人の資格において追認を拒絶する余地を認めるのは信義則に反するから、その無権代理行為は相続と共に当然有効となります(最判 昭和37年4月20日)。本問の場合、無権代理人Aが本人Bを単独で相続したので、AD間の甲土地の売買契約(無権代理行為)は相続と共に当然に有効となります。したがって、Dは甲土地の所有権を当然に取得します。
4 × 本人が無権代理人を相続した場合は、本人が追認を拒絶しても何ら信義に反するところはないから、被相続人の無権代理行為は、一般に、相続により当然に有効にはなりません(最判 昭和37年4月20日)。本問の場合、本人Bが無権代理人Aを相続したので、本人Bは追認を拒絶することもできます。したがって、Eが甲土地の所有権を当然に取得するとまでは言えません。

 

(著:株式会社Kenビジネススクール 代表 田中謙次

《推薦図書ー田中謙次が執筆する書籍です》

 

2019年版うかるぞ宅建士 基本テキスト (うかるぞ宅建士シリーズ)

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2019年版うかるぞ宅建士 過去問 (うかるぞ宅建士シリーズ)

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2019年版うかるぞ宅建士要点整理 (うかるぞ宅建士シリーズ)

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宅建試験を知りつくす不動産取引法務の専門家 株式会社Kenビジネススクール代表取締役社長 2004年に設立した同社は登録講習、登録実務講習の実施機関として、国土交通大臣の登録を受けている。 うかるぞ宅建士シリーズ、サクッとうかる宅建士シリーズ他多数の書籍を執筆。 スタケン講師、企業研修の講師(2018年度において合格率100%の実績がある)としても幅広く活躍している。

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