今回のテーマは「 表示の錯誤と動機の錯誤 」。出題率の高い単元なので要チェック!
今年こそ宅建合格をつかみ取りたい「崖っぷちすぎる受験生」のブログにようこそ。
前回は、「詐欺・強迫」について第三者が絡むとどうなるか、という内容を学びました。今回は「 錯誤 」。権利関係でも特に難しいとされている単元です。そもそも錯誤とは何か。スタケン宅建講座の解説を引用しながら見ていきます。

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この記事で学べること
錯誤 って何?
錯誤とは、いわゆる「勘違い」や「思い違い」のこと。民法では、二者間でも三者間でも、勘違いして売買契約を結んでしまった場合、誰をどこまで守るか判断するための指針を示しています。
ひと口に勘違いや思い違いと言っても、いろいろな状況がありますよね。
錯誤にも【表示の錯誤(表示上の錯誤、表示内容の錯誤)】と【動機の錯誤】の2種類があります。
ではこの二つ、いったい何がどう違うのでしょうか。次の「意思表示の流れ」で考えてみましょう。
意思表示の流れ
【登場人物の紹介】
マルオ。今回、意思表示をする猫。つまり、表意者。魚が好きでたまらない。「崖っぷちすぎる受験生」(以下、崖生〈ガケオ〉)のA土地にある大きな池で魚が捕れると聞き、A土地を欲しがっている。
- 《動機》内心(敷地内の池で魚が捕れる崖生君のA土地に家を建てたいな…)
- 《意思》内心(よーし、崖生君のA土地を買おう…!)
- 《表示》発言「崖生君、きみのA土地を買いたいんだ」
上に挙げたものが有効な意思表示の流れ。1~3まで一貫していることが分かりますよね。
では、表示の錯誤・動機の錯誤があるときは、どういう流れになるのでしょうか。
※意思表示については、過去記事《【宅建日記】初心者が宅建試験に挑む!「 意思表示 と契約の無効・取り消し」》でも紹介しています。
表示の錯誤
まず、表示の錯誤。これは勘違いにより表示と一致する意思がない場合を指します。
意思表示の流れで表すとこんな感じです。
- 《動機》内心(敷地内の池で魚が捕れる崖生君のA土地に家を建てたいな…)
- 《意思》内心(よーし、崖生君のA土地を買おう…!)
- 《表示》発言「崖生君。きみの…、えっと、どこだっけ、そうだ、B土地を買いたいんだ」
1~2までは有効な意思表示と変わりません。しかし、最後の表示の段階で、A土地を買いたいはずが、ど忘れしてB土地を買いたいと言ってしまっています。つまり、表示と意思が一致していないことになるわけです。
もし、このような残念な売買契約を結んだ場合、あとで自分の勘違いに気付いたマルオにはいったい何ができるのでしょうか。
民法によると、その錯誤が「法律行為の目的および取引上の社会通念に照らして重要なもの」であるとき、原則として取り消すことができるとされています。
ただし、取り消しを主張するには、間違えたマルオに、重大な過失がない場合に限られる点に注意ですね。重大な過失とは、100人中99人は間違えないような、通常ならあり得ない常軌を逸したミス・著しい不注意、みたいなものを指します。
だから、何千万もする取引にもかかわらず、上の例のような言い間違いで契約までしちゃうとなると、これはもう重過失となりますね。マルオ、残念!
動機の錯誤
一方、動機の錯誤は、意思と表示は一致しているものの、そもそもの動機部分で勘違いが生じている場合を指します。
意思表示の流れを見てみましょう。
- 《動機》内心(敷地内の池で魚が捕れる崖生君のA土地に家を建てたいな…)
- 《意思》内心(よーし、崖生君のA土地を買おう…!)
- 《表示》発言「崖生君。きみのA土地を買いたいんだ」
- 敷地内の池が、最近になって埋め立てられていたことが契約後に発覚した。
ふたを開けてみたら「あら、びっくり」という奴です。マルオも驚いたでしょうね。池の魚狙いでA土地を買おうと思ったのに、もう無くなっていたんですから。
この場合、マルオは「敷地内の池で魚が捕れる」からA土地を買おうと思ったわけで、そうでなければ買おうとはしなかったと考えられます。池があると動機部分ですでに勘違いしていましたから動機の錯誤となるわけです。
動機の錯誤、契約取消しは可能?
では、真実を知ったマルオは、このあと契約取り消しを主張できるのでしょうか。
正解は、「敷地内の池で魚を捕りたい」というマルオの動機を、売主の崖生に対して事前に、明示的にでも黙示的にでも伝えておけば取り消しを主張できる、となります。
明示的というのは、言葉や書面ではっきり伝えること。反対に黙示的とは、もはや言わなくても「マルオは魚を捕りたいからA土地が欲しいんだな」ということが暗黙の了解で分かり切っていることを指します。
つまり、契約前に、相手方に表意者の動機を知り得る状況が認められれば、取り消しを主張できるわけですね。
重過失でも取り消せる場合
ここまで「表示の錯誤」と「動機の錯誤」を見てきました。
多少の違いはありますが、どちらも表意者に重過失があったときは取り消しの主張は認められないことになります。
しかし、たとえ表意者に重大な落ち度があった場合でも、次のようなケースでは取り消しを主張することができます。
- 相手方が表意者の錯誤を知っていたとき(悪意だったとき)
- 相手方が表意者の錯誤を重大な過失により知らなかったとき
- 表意者とおなじく、相手方も同様の錯誤に陥っていたとき
1、2はわかりやすいですね。3は実際にはなさそうですが、上の例で言うと、A土地の売買契約を結ぶときに契約書にB土地と記入されていて、マルオも崖生も見落としていた、というような状況になるでしょう。
いずれにしても、表意者の錯誤について相手方に悪意、重過失、錯誤が認められたとき、相手方を保護する必要性も低くなります。
だから、たとえ表意者に重過失があったとしても契約の取り消しを主張できるわけですね。
第三者が絡む錯誤
さて、いよいよ今回の本題。
今までは当事者間で表意者に錯誤があった場合を見てきましたが、ここに第三者が絡むとどうなるのでしょうか。次の例文を見ながら考えていきましょう。
例.第三者はゴリラ
【新キャラ紹介】
ゴリラ。役回りは第三者。人間関係において第三者とは実に居心地の良いポジションだ。当事者でないから矢面に立たずに言いたいことを言える。しかし、宅建に登場する第三者は違う。利害関係に身を置いているため無傷ではいられないからだ。ドンマイ、ゴリラ。
マルオが錯誤で自己所有のA土地を「崖っぷちすぎる受験生」(崖生)に売却した。その後、錯誤に気付いた崖生はマルオとの契約を取り消したが、その時点ですでにA土地は第三者ゴリラに転売されていた。
さて、どうでしょう。マルオはゴリラとの契約を取り消せるのでしょうか。
実はこれ、考え方は意外と簡単です。錯誤した表意者を保護するのも大切ですが、第三者の利益を無視するわけにもいきませんよね。
だから、第三者が表意者の錯誤について何も知らず、知らなったことに過失もなければ、つまり第三者が善意・無過失なら、表意者は第三者に契約取り消しを主張できないことになるのです。
それでは最後に、「表示の錯誤と動機の錯誤」に関する例題を解いて理解を深めていきましょう。
※例題の一部はスタケンを参考。
例題1.表示の錯誤
このとき、マルオに重大な過失が認められない場合でも、マルオは契約を取り消すことができない。
【解説】
正解は「 × 」
マルオに重過失が認められないので、契約を取り消すことができます。
というか、マルオは被害者ですよね。これで取り消すことができなかったら恐ろしい世の中です。まさに崖っぷち!
例題2.動機の錯誤
その場合、マルオは動機の錯誤を理由にこの契約を取り消すことができる。ただし、マルオは動機について売主に事前の説明をしていなかった。
【解説】
正解は「 × 」
動機の錯誤で契約を取り消す場合、表意者があらかじめ、自分の動機を明示的でも黙示的でも相手方に伝えておく必要があります。
問題を見ると、マルオは「勝手に思い込んで契約」していますし、「動機について売主に事前の説明をしていなかった」とありますので、契約取り消しを主張することができないのですね。残念!
例題3.第三者が絡む錯誤
マルオが錯誤で自己所有のA土地を「崖っぷちすぎる受験生」(崖生)に売却してしまった。その後、錯誤に気付いた売主マルオは、急いで崖生との契約を取り消したが、その時点ですでにA土地は第三者ゴリラに転売されていた。
このとき、マルオに重大な過失がないので、マルオは第三者ゴリラに対して契約の取り消しを主張することができる。ただし、ゴリラは善意・無過失とする。
【解説】
正解は「 × 」
第三者が絡む錯誤では、錯誤した表意者は善意・無過失の第三者に契約取り消しを主張できません。マルオの錯誤に過失があろうがなかろうが関係ないわけです。
でも、第三者が悪意だった場合は別。ここは当事者間と同じです。表意者の錯誤を知っていて取引するような悪人は守るに値しないわけです。
ちなみに、読者の中には過失の有無が気になる方もいるかもしれませんね。過失とは、ある事実を知らなかった(善意)ことに過失があるかないかを問題にしています。だから、知っていた(悪意)場合はそもそも過失の有無は関係ないわけです。
2020年の「民法改正」でどう変わったの?
ここまで見てきたのは、もちろん、2020年の民法改正後の内容になります。
では、改正前はどうだったのでしょうか…。そう思って調べてみると、条文をすべて取り替えたのかと思うくらい、大きく様変わりしていました。
錯誤の改正ポイントは次の4点になります。
- ふんわりした内容が明確に
- 無効から“取り消し”に
- 「動機の錯誤」の明文化
- 本人は善意・無過失の第三者に対抗できない
おもしろいのは条文ボリュームの差。改正前後の条文を見比べると、文字数換算で約5倍に増えていました。内容も改正前のものは曖昧すぎて、裁判官はさぞ苦労したでしょうね。
条文の比較はブログの最後に載せておきますので、興味のある方はぜひ見比べてみてください。
使っている教材の紹介
ちなみに、数ある宅建教材のなかで「崖っぷちすぎる受験生」が使っているのはスタケン宅建講座というゴリラマークの教材です。
なぜゴリラなのかは謎ですが(笑)、ゴリラマーク以外で一番の魅力はやはりコスパ。大手予備校とか通信講座とかだと、受講料や教材費で20万円近くかかりますからね…。一方、スタケンは3万円前後で試験対策ができてしまうので、かなり安い方だと思います。
しかも、「合格したら、受講料を全額返金」してくれるのは嬉しいですね!
これから教材を揃える方はぜひ検討してみてください(/・ω・)/
⇒他ブログでもスタケンの紹介があったので参考までに。
それでは、今回はここまで。次回は「代理権」についてポイントを書いていきます!
「 表示の錯誤と動機の錯誤 」の改正前後
第95条【錯誤】
《改正前》
意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。
《改正後》
① 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。
一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤
二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤(=動機の錯誤)
② 前項第二号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。
③ 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第一項の規定による意思表示の取消しをすることができない。
一 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。
二 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。
④ 第一項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

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宅建士を一発取得(2009年)|保険営業マン→塾講師×金融ライター|FP2級×宅建士×TOEIC815点×ITパスポート|35歳|海外旅行が趣味|スタケンブログをご覧のみなさまが合格を勝ち取るためのノウハウを徹底解説します!