宅建試験の内容に大きな影響を与える法改正。改正前と後では問題の正誤が変わる可能性もあるため、改正点をしっかり理解しなければなりません。しかし、すべての改正点を押さえるには膨大な勉強量が必要となり、なかなか一度ですべてを網羅するのは難しいでしょう。そこで今回は、これまでの法改正された内容から重要なポイントをまとめました。改正点を網羅できていない方や、これまでの法改正について復習したい方はぜひ参考にしてください。

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この記事で学べること
権利関係
2021年
自筆証書遺言の緩和
自筆証書遺言は、遺言者が遺言の全文・日付・氏名を自書することが要件とされていましたが、自書する負担が大きいことから「財産目録」の部分については自書する必要はなく、パソコン等での作成も認められるようになりました。ただし、「財産目録」の各頁に署名押印する必要があるので注意しましょう。
2020年
配偶者居住権・配偶者短期居住権
以下は新設され、それぞれ比較される内容になっています。比較対象となる権利等についてまとめました。
①配偶者居住権
配偶者居住権は、被相続人死亡後の配偶者の居住権を長期で保護する権利で、いわゆる「所有者」の役割にあたります。
権利 | 建物全部を無償で使用収益可能 |
居住権の存続期間 | 別段の定めがない限り、配偶者の終身の間 |
成立要件 | 遺言または遺産分割協議で決定し、配偶者以外の者と共有の状態ではなく、相続開始時に居住していること |
登記請求権 | 登記請求権が認められ、第三者への対抗要件となる |
配偶者の義務 | 譲渡できず、所有者の承諾なく第三者に使用収益させられない。用法遵守義務に違反し催告で是正されない場合は消滅の可能性があり、通常の費用を負担する |
権利の終了 | 配偶者の死亡、建物滅失、存続期間を定めた場合は存続期間の満了(延長・更新不可)など |
②配偶者短期居住権
配偶者短期居住権は、配偶者居住権が長期なのに対し、文字通り短期の居住権です。こちらは「建物取得者」の役割をしています。
権利 | 無償で使用していた部分のみ使用可能(収益不可) |
居住権の存続期間 | 配偶者を含んで遺産分割が行われる場合、遺産分割の確定日または相続開始から6ヶ月を経過する日いずれか遅いほう。配偶者を含んで遺産分割が行われない場合は、建物取得者からの消滅申し入れから6ヶ月経過した日まで |
成立要件 | 法律上当然に認められ、配偶者居住権を取得しておらず、相続開始時に無償で居住していること |
登記請求権 | 登記請求権なし、対抗要件もなし |
配偶者の義務 | 譲渡できず、建物取得者の承諾なく第三者に使用させられない。用法遵守義務に違反した場合、催告不要で消滅のかのうせいがあり通常の費用を負担する |
権利の終了 | 配偶者の死亡、存続期間を定めた場合は存続期間の満了、建物取得者による消滅請求、配偶者居住権の取得など |
時効
①呼称の変更
時効の進行が停まった際に「時効の中断・停止」などと呼ばれていましたが、時効が完成しないことを「時効の完成猶予」、また新しい時効期間が始まることを「時効の更新」と呼ぶようになりました。なお、時効の停止期間は障害消滅時から2週間でしたが、改正後は3ヶ月まで延長されています。この期間は覚えておきましょう。
②催告による時効の完成猶予
催告があった場合、その時点から6ヶ月経過するまでは時効が完成しません。ただし、6ヶ月の完成猶予中に再度催告がされても、新たな完成猶予の効力は認められません。これは従来の「時効の停止」の考えから変わっておらず、明文化されました。
③協議による時効の完成猶予
これは「時効の停止」と似た新設規定で、当事者同士で協議を行い書面で合意された場合に、その合意から1年経過するまでは時効が完成しない、とされています。また当事者間で協議する期間を定めた場合はその期間中に時効は完成せず、期間は1年未満に限ります。さらに、当事者の一方から協議続行を拒否する旨の通知が書面(電磁的記録でも可)であった場合、その通知から6ヶ月間は時効が完成しません。
④債権の消滅時効期間
債権は、従来は権利を行使できるときから10年間行使しないと消滅時効が完成する、という内容でしたが、改正後はこの10年に「債権者が権利を行使できることを知ったときから5年間」も追加されました。また、生命・身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効期間も新設されています。債務不履行に基づくものは権利を行使できるときから20年(改正前は10年)、不法行為に基づくものは被害者またはその法定代理人が損害および加害者を知ったときから5年(改正前は3年)です。
宅建業法
2021年
35条書面記載事項の追加
宅建業者は、以下の内容を35条書面(重要事項説明書)に追加して説明しなければなりません。
宅地・建物が所在する市町村長が提供する図面(水害ハザードマップ)に当該宅地・建物の位置が表示されているときは、当該図面における当該宅地・建物の所在地
契約形態は売買・賃貸・交換問わずどの場合にも必要となるので注意しましょう。
IT重説
これまでIT重説(テレビ会議等のITを活用したオンラインによる重要事項説明)は、賃借に限って対面による重要事項説明と同様に扱われていました。改正後は売買取引においてもIT重説の実施が可能となりました。これによって、宅地建物取引業者および顧客の契約時の負担が軽減されるでしょう。
2020年
契約不適合責任
「瑕疵担保責任」という名称が「種類・品質に関して契約内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任(契約不適合責任)」に改正されました。改正後は各書面で名称が変わっていることに加え、改正前と比較して買主側の請求権が増えました。以前は契約解除か損害賠償請求の2択でしたが、新たに追完請求や代金減額請求が可能です。また、改正前の損害賠償請求は「瑕疵があることを知ったときから1年以内に請求」する必要がありましたが、契約不適合責任では「不適合を知ったときから1年以内に通知」に変わっている点にも注意しましょう。売主側の責任が改正前よりも重くなっているため、売主は改正内容をしっかり理解しておく必要があります。
消費税率の引き上げ
消費税率8%→10%の引き上げに伴って、仲介手数料など報酬の計算が変わっている点に注意しましょう。また、消費税率は報酬計算だけでなく住宅ローン控除などにも影響するため、確認が必要です。
免許欠格事由・登録欠格事由
免許・登録欠格事由である「成年被後見人と被保佐人」が「心身の故障により宅建業を適正に営むことができない者として国土交通省令で定めるもの」に変更しました。成年被後見人と被保佐人の人権が尊重され、単に成年被後見人・被保佐人というだけでは欠格事由に該当せず、審査にクリアすれば宅建業を営むことができるのです。
法令上の制限
2021年
都市計画の決定または変更手続きについて
都市計画の決定または変更手続きについて、市は都道府県知事との協議のみ、町村は協議+同意が必要とされていました。しかし改正後は市町村で統一され、いずれも協議のみ必要となりました。シンプルな内容ですが、非常に重要なポイントです。しっかり覚えておきましょう。
2020年
建築確認
建築確認が必要な特殊建築物の面積要件は床面積の合計が100㎡超えでしたが、改正後は床面積の合計が200㎡超えとなりました。
準防火地域
準防火地域内では、地階を除く階数が3以下かつ延べ面積が500㎡超えで1,500㎡以下の建築物は耐火建築物または準耐火建築物とする、また地階を除く階数が3かつ延べ面積500㎡以下の建築物は政令で定める技術的基準適合建築物でも可とされていました。しかし改正後、地階を除く階数が3かつ延べ面積が1,500㎡以下、または地階を除く階数が2以下かつ延べ面積が500㎡超えで1,500㎡以下の建築物は、耐火建築物または準耐火建築物もしくはこれらと同等以上の延焼防止性能を有する建築物とすることが義務付けられています。数字の変化に加え建築物の要件も変わっている点がポイントです。
2019年
接道義務の例外と付加
①例外
建築物の敷地は道路に2m以上接しなければなりません。ただし、建築物の周囲に広い空地を有するものやその他国土交通省令で定める基準に適合する建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上および衛生上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可したものについては、この限りではない、とされていました。この例外の部分が改正され、利用者が少数であるものとして国土交通省令で定める基準に適合するもので、特定行政庁が交通上、安全上、防火上および衛生上支障がないと認めるものについては接道義務を適用しなくなり、この場合は建築審査会の同意が不要となりました。
②付加
地方公共団体は、一定の要件を満たす建築物について避難や通行の安全が十分でないと認める場合、道路幅員等に関して条例で必要な制限を付加できます。従来は以下のいずれかに該当することが要件でした。
- 特殊建築物
- 3階建て以上の建築物
- 政令で定める窓その他開口部がない居室を有する建築物
- 延べ面積1,000㎡超えの建築物
改正後は上4つと以下の建築物も加わっています。
- 敷地が袋路状道路にのみ接する建築物で、延べ面積150㎡超えのもの(一戸建て住宅を除く)
税・その他
2021年
住宅ローン控除
①特例の期限延長および契約締結期限の設置
住宅ローン控除の期間は原則10年ですが、令和2年12月31日までに居住の用に供した場合には控除期間を13年とする特例が設けられていました。改正後は令和4年12月31日までに居住の用に供した場合に延長され、契約締結は注文住宅の場合は令和3年9月30日まで、分譲住宅・増改築の場合は令和3年11月30日までとなっています。
②床面積要件の緩和等
住宅ローン控除を受けるには床面積50㎡以上という要件がありますが、改正後は控除期間が13年間とされる場合には床面積40㎡以上50㎡未満も住宅ローン控除が適用されることになりました。ただし、床面積40㎡以上50㎡未満の場合は、控除を受ける年の合計所得金額が1,000万円以下であることが必要です。床面積50㎡以上は合計所得金額が3,000万円以下と異なりますので、注意しましょう。
住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税制度の特例
取得する家屋、または増改築後の床面積の要件が、50㎡以上から40㎡以上に緩和されました。
直系尊属から住宅等取得資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税
①非課税限度額の拡大
非課税限度額は、一般住宅の場合は原則300万円とされていましたが、改正後は原則500万円に拡大されました。ただし、住宅用家屋の新築等の消費税率が10%の場合は、1,000万円となります。
②床面積要件の緩和
贈与税の非課税には床面積50㎡以上240㎡以下という要件がありますが、改正後は床面積40㎡以上240㎡以下に緩和されました。ただし床面積40㎡以上50㎡未満の場合は、贈与を受けた年の合計所得金額が1,000万円以下であることが必要です。床面積50㎡以上240㎡以下の場合は合計所得金額2,000万以下。床面積要件が緩和された分、合計所得金額も下がるので覚えておきましょう。
まとめ
今回は、これまでの改正点で重要なポイントをまとめて紹介しました。法改正は今後も続くので、都度アップデートして覚えていく必要があります。それぞれの改正点で重要度を分けて、重要度の高いものから勉強していきましょう。今回のように分野別にして改正点を見ると、理解しやすくなるのでおすすめです。

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宅建士を一発取得(2009年)|保険営業マン→塾講師×金融ライター|FP2級×宅建士×TOEIC815点×ITパスポート|35歳|海外旅行が趣味|スタケンブログをご覧のみなさまが合格を勝ち取るためのノウハウを徹底解説します!