こんにちは!
前回は「建物区分所有法」についてお伝えしました。
権利関係の第13回目となる今回は、「債務不履行(損害賠償および解除)」について取り上げていきます。
では、さっそく一緒に見ていきましょう。
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この記事で学べること
債務不履行とは
債務不履行とは簡単に言えば約束を守らないこと、つまり債務が履行されないことを指します。
債務不履行には次の2種類が存在します。
- 履行不能
- 履行遅滞
それぞれの違いを理解しておくようにしましょう。
- 履行不能=履行することができない
- 履行遅滞=履行することができるのにしない
※相手を履行遅滞だと主張する場合には自分が履行の提供をしている必要があります。
また、売主が物を引き渡すのと買主が代金を支払うのは同時履行の関係に立ちます。そのため、Aさんが代金を支払うのを拒んでいた場合、Bさんも物の引き渡しを拒むことが可能です。
このことを「同時履行の抗弁権」といいますので、あわせて押さえておいてください。
債務不履行となった場合には、債権者は債務者に対して履行の強制や契約の解除をすることができます。
また、債務不履行が債務者の責めに帰すべき事由に基づく場合には損害賠償の請求をすることもできます。
金銭債務の債務不履行
金銭債務の債務不履行においては、例外として以下3つの規定が定められています。
- 不可抗力を理由に責任を免れることはできない
→落雷で公共機関が止まったから代金が支払えないといっても履行遅滞となる - 履行不可能は存在しない
→建物であれば、それがなくなったことによって履行不能を主張できるが、金銭がなくなることはないため主張できない - 損害の証明をせずして、法定利率で損害賠償請求ができる
→当事者間で法定利率以上で約束をしていた場合、その約束した利率で請求することができる
債務不履行時に債権者が取れる3つの手段
さて、債務不履行に陥った場合において、債権者は履行の強制や契約の解除、そして損害賠償請求といった手段を取ることができると先ほどお伝えしました。
さっそく、履行の強制から見ていきましょう。
履行の強制について
債務者が履行を行わない場合、債権者は裁判所に請求することにより強制執行等を行うことが認められています。
債務者が任意に債務の履行をしないときは、債権者は、民事執行法その他強制執行の手続に関する法令の規定に従い、直接強制、代替執行、間接強制その他の方法による履行の強制を裁判所に請求することができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。(改正民法414条第1項)
たとえば、AさんがBさんに返済期限を決めたうえでお金を借りたものの、返済期限を過ぎても一向に返済をしなかったとしましょう。その場合、BさんはAさんの債務不履行を裁判所に訴えることができます。
裁判所において、Aさんの訴えが認められた場合、Bさんの財産(預貯金や不動産など)に対して強制執行等の手段を講じることが可能です。
損害賠償の請求をする際の要件について
債権者が損害賠償を請求するためには、債務者の責めに帰すべき事由が必要です。
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときまたは債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因および取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。(改正民法415条1項)
たとえば、売主が買主に対して売却した電化製品を引き渡すことができなくなったものの、それは予期せぬ規模の災害によって壊れたことが理由であった場合、売主には帰責事由がないと判断されます。
上記の場合において、買主は売主に損害賠償を請求することができません。
解除について
解除とは一方の意思表示によってなされ、解除が認められると契約は初めからなかったものとして扱われます。
解除には次の2通りが存在します。
- 催告が必要な場合
- 催告が不要な場合
また、いずれの場合においても債務不履行を理由とする解除をするにあたり、債務者の帰責事由は不要です。
催告による解除
解除における原則は、この「催告による解除」です。
さっそく条文を確認しましょう。
当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。(改正民法第541条)
ここで注意したいのが、「債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない」といった点です。
軽微である場合は催告による解除は認められず、損害賠償請求等その他の方法で対処することになります。
催告によらない解除
それに対し、改正民法第542条では履行不能など一定の事情がある場合において、催告をせずとも直ちに契約を解除できると規定しています。
こちらも条文で確認しておきましょう。
1 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
一 債務の全部の履行が不能であるとき。
二 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。
四 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき。
五 前各号に掲げる場合のほか、債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。2 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の一部の解除をすることができる。
一 債務の一部の履行が不能であるとき。
二 債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
原状回復義務
解除がなされると、すべてを元に戻さなければなりません。
このことを「原状回復義務」といい、元に戻せばそれでよいわけでないので注意してください。
★原状回復義務の返還範囲★
・金銭=金銭+利息
・建物=建物+使用料(第三者に貸したことで得た賃料など)
金銭であれば、預かっていた間に運用等でお金を増やすことも可能であり、その金額に預かっていた期間の利息をプラスして返すことになります。
また、建物の場合、自分で住むのはもちろんのこと第三者に貸して家賃収入を得ることもできるでしょう。そのため、建物を使用する中で発生した利益も当然一緒に返すことになります。
解除時に建物が第三者に転売されていた場合
以下のようなケースではどうなるでしょうか。
- AさんがBさんに建物を売却した
- BさんがCさんに建物を転売
- 代金未払いを理由にAさんがBさんとの契約を解除した
この場合において、第三者であるCさんは善意・悪意にかかわらず、登記を備えていれば保護されるものと解釈されます。
つまり、Cさんが契約を解除される前に登記を済ませていた場合、建物はCさんのものとなります。
まとめ
今回は、「債務不履行(損害賠償および解除)」についてお伝えしました。
債務不履行による解除と手付による解除など、混乱しそうな範囲が多いのでゆっくち着実に学習していきましょう。
次回は「債務不履行(損害賠償および解除)」についてお伝えします。
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