権利関係

【宅建民法を攻略】公信の原則~見た目を信じちゃいけないの?~|WEB宅建講座「スタケン」

投稿日:2019年6月14日 更新日:

この記事では 公信の原則 を中心に解説していきます。無権利者の外観を信じて取引をしたとき、その取引は有効になるのでしょうか。基本から応用まで詳しく見ていきましょう。(改正民法対応)

登記情報を信じた人は即時取得できる?

答え:即時取得はできない

即時取得とは、民法192条によると「取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する」と定められています。

条文から明らかですが、この即時取得の対象は「動産」に限定されています。つまり、「不動産」については適用がありません

したがって、登記情報を信じただけでは、即時にその不動産を手に入れることはできません。

 

公信の原則 ってどんな制度?

たとえば、ある動産について、実際の権利者はAであるのに、その物の権利者はBであるかのような表象があり(つまり、Bがその物を所持しているような場合)、その表象を信じて、その物がBの所有物であると信じてBから権利を取得したCがいたとします。

この場合、Cは、無権利者Bからの取得であるにもかかわらず、その物の権利を取得することができます。

これを「公信の原則」といいます。

この原則は、真実の権利者Aを犠牲にして表象を信頼した者を保護するものといえます。

わが国の民法では、前記したとおり、動産について公信の原則を採用しています(民法192条の即時取得)。
動産取引というのは日常頻繁になされるものであり、公示(表象)を信頼した者を保護する要請が著しく高いことから、公信の原則を採用しているといわれています。

 

公信の原則を詳しく教えて

たとえば、Aが古本屋Bで「うかるぞ宅建士シリーズ全巻」を購入しようとしました。

しかし、手持ちの金銭が不足していたので、お店の人に頼み込み、代金の半分を払って、残金は明日支払う約束をして、いったん古本屋Bにその本を預かってもらったとします。

ところが、古本屋Bは、Aが取りに来る前に、その本をCに売却してしまった、という事案で考えてみましょう。

この場合、Cは、即時取得(民法192条)で保護され、Cは「うかるぞ宅建士シリーズ全巻」の所有権を取得することになりますが、法的な理論構成は次のようになります。

そもそも、Cが即時取得により保護されるためには、Aが権利者であり、「うかるぞ宅建士シリーズ全巻」の所有権をCがAに対抗できないことが必要となります。

というのは、もしCがAに対して即時取得ではなく、そもそも所有権を対抗できる地位にあるのならば、わざわざ即時取得を持ち出すことはないからです。したがって、論理的にはその過程を考えていくことが必要です。

 

Aに所有権はあったのか

まず、Aは「うかるぞ宅建士シリーズ全巻」を取得したといえるでしょうか。

これは物権変動における所有権移転時期の問題です。この点、判例・通説によると、意思主義(民法176条)から、特約がない限り、Bと売買契約を締結した時に、「うかるぞ宅建士シリーズ全巻」の所有権を取得することになります。

したがって、AB間で売買契約がなされているので、Aは所有権を取得したといえます

 

AはCに対抗できるのか

次に、Aが取得した所有権は、Cに対抗できるのでしょうか。

これは、民法178条の対抗要件の問題です。178条の「引渡」には、「占有改定」も含まれるとするのが判例・通説です。

したがって、AB間で占有改定があったといえるので、Aの所有権取得は対抗要件も具備しているといえます。

以上のような論理過程を経て、やっとCが即時取得できるかどうか、つまり即時取得の要件の検討に入ることになります。

 

即時取得のまとめ

まとめると、即時取得(公信の原則)は、動産物権変動についての公示方法の不十分さを補うものなので、先の例においても、いきなり民法192条で解決を図るのではなく、まず、Aが所有権を取得したかどうか(民法176条)、

次に、その所有権取得が対抗要件を具備したかどうか(民法178条)を順に検討して、最後に、民法192条の解釈を展開するという分析が必要です。

 

即時取得の要件

1.動産であること

《認められた例》

  • 成熟期に達した稲立毛
  • 登録を要しない軽自動車
  • 未登録の自動車
  • 不動産とともに処分された他人所有の従物など

《認められない例》

  • 金銭
  • 一般債権
  • 伐採前の立木
  • 有価証券など

《参考となる最高裁判例(最高裁昭和62年4月24日)》

「道路運送車両法による登録を受けている自動車については、登録が所有権の得喪並びに抵当権の得喪及び変更の公示方法とされているのであるから(同法五条一項、自動車抵当法五条一項)、民法一九二条の適用はないものと解するのが相当であり、また、商法五二一条所定の留置権は、法律上当然に発生し、当事者間の取引により取得される権利ではないから、民法一九二条にいう動産の上に行使する権利には当たらないものと解するのが相当である。」

 

2.無権利者から占有を承継したこと

《無権利者の具体例》

  • 賃借人
  • 受寄者
  • 二重売買の第一買主が占有改定・指図による占有移転を経た後の売主
  • 執行官が当該動産に処分権限をもたない場合など

《無権利者と認められなかった例》

  • 無権代理人(たとえば、丙が甲の代理人と称する乙から、代理権のあるものと信じて甲所有のテレビを購入し、その引渡しを受けたが、実は代理権がなかったとき、表見代理が成立しうることは別にして、丙に即時取得の適用はない)
  • 権利者だが無能力者である場合
  • 売主が錯誤に陥った場合など
  • ただし、これらの場合の転得者には192条の適用があります。

3.取引によって占有を承継したこと

明文化はされていません。

しかし、本条が公信の原則を規定したものである以上、取引行為によらない動産取得者を保護する必要はなく、解釈上、要求される要件です。

 

《認められる例》

  • 売買
  • 贈与
  • 代物弁済
  • 質権設定
  • 消費貸借
  • 競売など

《認めらない例》




  • 相続のような包括承継または減資取得による占有取得
  • 伐採前の立木を非所有者から譲り受け、譲受人が自ら伐採したような場合

4.平穏・公然・善意・無過失に占有を取得したこと

民法186条によって、平穏・公然・善意が推定されます。

無過失については、同条では推定されませんが、およそ占有者が占有物の上に行使する権利は、これを適法に有するものと推定される以上(民法188条)、譲受人たる占有取得者が右のように信ずるについては過失がないものと推定され、
占有取得者自身において、過失のないことを立証する必要がないとするのが判例です(最判昭和41年6月9日 民集第20巻5号1011頁)。

 

5.取得者が自ら占有を取得したこと

この点、現実の引渡と、簡易の引渡に、民法192条が適用されることについて争いはありません。

しかし、占有改定と指図による占有移転については争いがあります。

 

登記情報を信じた人は一切保護されないの?

もちろん、他人の所有する不動産を、自分の名義になっていることを利用して売却し、結果的にその不動産を買主に移転できない場合は、
売主としての担保責任や債務不履行責任、場合によっては詐欺として、損害賠償責任を買主に対して負います。

ただ、このような違法行為まで行って、他人の不動産を売却する人に対して、損害賠償請求することができると言われたところで、買主は納得できないのが普通でしょう。

やはり、購入した不動産を取得するという方法で保護されるのが一番です。そこで、民法の条文解釈を駆使して保護する方法が、学説や判例により示されています。

その一つが、民法94条2項の類推適用です(110条も類推する場合があります)。

民法94条2項を直接適用できないの?

民法94条では、

「相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする(1項)。前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない(2項)。」

と定めています。

条文から明らかなように、相手方と「通じて」嘘の表示をしたような場合、たとえば、財産隠しが目的で、友人と結託して嘘の売買契約を装って移転登記したような場合であれば、直接適用できます。

しかし、そのような事情がなく、登記名義が真の所有者と異なる場合のすべてに直接適用することはできません。

 

民法94条2項を類推適用するためには?

判例法理及び学説によれば、民法94条2項は権利外観法理の表われであると考えています。

権利外観法理とは、

  • 虚偽の外観の存在
  • 虚偽の外観を作り出したことについての本人の帰責性
  • 虚偽の外観に対する第三者の信頼

という3つの要件を充たした場合に、その外観を信頼した第三者を保護しようという考え方です。

この権利外観法理の要件と効果と、取引の安全という趣旨だけを94条2項から抽出した場合、通謀虚偽表示(民法94条2項を直接適用できる場面)という事例だけにしか使えないと考える必要はなくなります。

直接適用できない事案であっても、これらの要件と趣旨が合致すれば、類推して適用できていいはずです。

 

第三者に無過失が要求されることも?

第三者は、民法94条2項の条文から「善意」であれば足りると解釈できますが、本人の帰責性が低い場合には、無過失まで要求する場合もあります。

つまり、本人の帰責性と、第三者の要保護性を天秤にのせてバランスが取れれば良いので、本人の帰責性が軽い場合は、第三者の要保護性を厳しくすればバランスが取れるわけです。

その際に、民法110条も併せて類推適用する判例があります。

ちなみに、判例には、Aが仮登記までしかBに許していないにもかかわらず、Bが勝手に本登記に変更して、Cに売却したという事案について、Cに無過失を要求しているものがあります。

 

過去問を解いてみよう!

【問題】所有権の移転又は取得に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。(2017年度問2)

  1. Aの所有する甲土地をBが時効取得した場合、Bが甲土地の所有権を取得するのは、取得時効の完成時である。
  2. Aを売主、Bを買主としてCの所有する乙建物の売買契約が締結された場合、BがAの無権利について善意無過失であれば、AB間で売買契約が成立した時点で、Bは乙建物の所有権を取得する。
  3. Aを売主、Bを買主として、丙土地の売買契約が締結され、代金の完済までは丙土地の所有権は移転しないとの特約が付された場合であっても、当該売買契約締結の時点で丙土地の所有権はBに移転する。
  4. AがBに丁土地を売却したが、AがBの強迫を理由に売買契約を取り消した場合、丁土地の所有権はAに復帰し、初めからBに移転しなかったことになる。

 

正解:4


時効の効力はその起算日にさかのぼります(民法144条)。取得時効においてはその要件である占有が始まった時が起算日です。

したがって、Bが甲土地の所有権を取得するのは時効完成時ではなく占有開始時です。

2× 
取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得します(民法192条)。不動産についてはこのような規定がありません。

したがって、BがAの無権利について善意無過失であるというだけで、Bが乙建物の所有権を取得することはありません

なお、真の所有者Cの落ち度により登記名義がAとなっていて、Bがその名義を過失なく信用したような場合には民法94条2項や民法110条の類推適用により、Bが所有権を取得する可能性はあります。

3× 
所有権は売買契約時に移転するのが原則です(民法176条、最判昭和33年6月20日)。しかし、代金の完済、所有権移転登記手続の完了までは所有権を買主に移転しない旨の特約が定められた場合はその特約が優先します(最判昭和38年5月31日)。

本問の場合、契約時点ではなく代金完済時に丙土地の所有権がBに移転します。

4○
取り消された行為は、初めから無効であったものとみなされます(民法121条)。したがって、丁土地は初めからBに移転しなかったことになります。

 

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法律寄りの記事になりましたが、分かりましたでしょうか。

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宅建試験を知りつくす不動産取引法務の専門家 株式会社Kenビジネススクール代表取締役社長 2004年に設立した同社は登録講習、登録実務講習の実施機関として、国土交通大臣の登録を受けている。 うかるぞ宅建士シリーズ、サクッとうかる宅建士シリーズ他多数の書籍を執筆。 スタケン講師、企業研修の講師(2018年度において合格率100%の実績がある)としても幅広く活躍している。

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執筆者:

逆回転学習メソッドで宅建「一発合格」スタケン