権利関係

【宅建民法を攻略】未成年者は親の同意が必要?~制限行為能力制度~

投稿日:2019年3月5日 更新日:

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未成年者~未成年者は親の同意がないと何もできないの?~

1.未成年者とは?

未成年者とは、20歳未満の者をいいます。ただし、婚姻した場合は成年者と同様の扱いを受けます。結婚した後も、自宅を購入したり、マンションを借りたりするのに親の同意が必要だということになれば、夫婦の独立性が害されてしまうからです。

2.未成年者が契約を締結するには?

未成年者が不動産を売買する等の法律行為をするには、原則として法定代理人の同意を得なければなりません。
ただし、①単に権利を得または義務を免れる法律行為(負担のない贈与を受ける等)、②処分を許された財産の処分行為(小遣い銭等)、③法定代理人が許した特定の営業に関する行為については、法定代理人の同意は不要です。

法定代理人である親権者とその子との利益が相反する行為、または、子が複数いる場合で、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければなりません。これに違反すると無権代理となります。

《用語の意味》
法定代理人・・・法律に基づいて本人の意思によらないで決まる代理人をいいます。未成年者の法定代理人には、親権者と未成年後見人の2つがあります。親権者は父母です。未成年後見人は、親権者がいないとき、または親権を行う者が管理権を有しないときに、遺言または家庭裁判所で選任されます。

利益相反行為・・・親権者にとっては利益となるが、未成年の子にとっては不利益となる行為、あるいは、同一の親権に服する子の一方にとっては利益となるが、他方にとっては不利益となる行為をいいます。

3.同意を得ないとどうなるの?

法定代理人の同意を得なければならないにもかかわらず、同意を得ずに、未成年者が単独で契約等を行った場合、未成年者または法定代理人はその契約等を取り消すことができます。未成年者自身が取り消す場合でも、そのために法定代理人の同意を要するわけではありません。もし同意を得ない取消しを取り消すことができるものとすると、法律関係が複雑になるからです。
取り消すと、その契約等ははじめから無効だったということになります。

4.取り消さないといけないの?

取消権者は取り消さずに追認することもできます。追認は相手方に対して行います。追認すると取り消すことができなくなります。なお、未成年者は法定代理人の同意がなければ追認できません。

成年被後見人~重度の精神上の障害者を保護するには?~

1.成年被後見人とは?

成年被後見人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者として、家庭裁判所による後見開始の審判を受けた者をいいます。重度の精神障害者や高齢による認知症患者等です。この審判は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人または検察官の請求により、することができます。

《用語の意味》
事理を弁識する能力・・・契約等の結果(代金を支払ったり、賃料を支払ったり等)を判断するに足りるだけの精神能力のことです。事理弁識能力と略すのが普通です。

常況・・・ときどき普通の精神状態に戻ることがあっても、大体において事理弁識能力を喪失した状態にある者を含む意味です。

2.成年後見人は何をするの?

成年被後見人の面倒をみる成年後見人は、家庭裁判所が後見開始の審判をする際に、一切の事情を考慮して職権で選任します。
成年後見人は、成年被後見人の財産を管理し、かつ、その財産に関する契約等を成年被後見人に代わって行います。ただし、成年被後見人に代わって、その居住用の建物またはその敷地を売却・賃貸・抵当権の設定等をするには、家庭裁判所の許可が必要です。

3.成年被後見人は1人で契約ができるの?

成年被後見人が行った契約等は、成年被後見人本人や成年後見人等が取り消すことができます。他の制限行為能力者と異なり、成年被後見人は、事前に保護者の同意があっても、その同意どおりの行動が取れない可能性が高いので、成年被後見人が行った契約等は取り消すことができます。事理弁識能力のある状態で行われた契約等も取り消すことができます。
ただし、日用品の購入その他の日常生活に関する行為(たとえば、コンビニエンスストアで弁当を買う行為など)は、取り消すことができません。なぜなら、このような行為まで取消が可能とすれば、成年被後見人自身の「身の回りのことは自分でしたい」という意思を無視することになるからです。

4.取り消さないといけないの?

成年後見人は取り消さずに追認することもできます。追認は相手方に対して行います。追認すると取り消すことができなくなります。なお、成年被後見人本人は追認できません。

未成年後見~親を亡くした未成年者は?~

1.未成年後見とは?

未成年者に対して親権を行う者がいないとき、又は親権を行う者が財産管理権を有しないときに開始します(838条1項)。未成年者を教育監護しその財産を管理するものです。成年後見の場合と異なり、家庭裁判所の審判など特別の手続なしに、当然に開始します。

2.未成年後見制度の趣旨

本来は、親権者が親権を受ける未成年者の監護教育と財産管理をします(820条、824条)。その親権による保護を受けることができなくなった場合に、その未成年者に後見人を付し、未成年後見人によって未成年者の監護教育と財産管理を行います。

未成年者は、身体的にも社会的にも未熟なので、一人の人として完全に成長し、社会生活を送ることができるようにするため、親権者は未成年者を守り、教育します。また、未成年者はその財産を管理するのに十分成熟していないこともあるので、親権者がその財産をかわりに管理します。

しかし、親権者がいなくなれば未成年者は困ってしまいます。そこで、法はこのような場合に備えて未成年後見制度を設けました。

過去問ではこのように出題されている

【問2】 未成年者に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。 (2013年度)

1:父母とまだ意思疎通することができない乳児は、不動産を所有することができない。

2:営業を許可された未成年者が、その営業のための商品を仕入れる売買契約を有効に締結するには、父母双方がいる場合、父母のどちらか一方の同意が必要である。

3:男は18歳に、女は16歳になれば婚姻することができるが、父母双方がいる場合には、必ず父母双方の同意が必要である。

4:Aが死亡し、Aの妻Bと嫡出でない未成年の子CとDが相続人となった場合に、CとDの親権者である母EがCとDを代理してBとの間で遺産分割協議を行っても、有効な追認がない限り無効である。

正解:4

1 ×

所有権などの民法上の権利は出生すると同時に与えられます(民法3条1項)。たとえ意思能力がない乳児であっても、不動産に対する所有権を有することができます。

2 ×

一種または数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有します(民法6条1項)。父母の同意は不要です。

3 ×

未成年の子が婚姻をするには、原則として父母の同意を得なければなりません。しかし、父母の一方が同意しないときは、他の一方の同意だけで足ります(民法737条)。

4 ○

親権者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければなりません(民法826条2項)。親権者が共同相続人である数人の子を代理して遺産分割の協議をすることは、親権者の意図やその行為の現実の結果のいかんにかかわらず、利益相反行為にあたります(最判昭和48年4年24日)。したがって、Eの代理行為は有効な追認がない限り無効となります。[stken2]

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