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宅建試験に出題が予想される改正建築基準法【2019年版】

投稿日:2019年3月20日 更新日:

宅建試験は、法律系の国家資格なので、改正点はもちろんすぐに出題される傾向が強いです。

ちなみに、宅建試験に合格した後に、宅地建物取引士証の交付を受ける場合、合格後1年以内であれば、法定講習という6時間の講習を受講する必要がありません。その理由は、合格して1年以内であれば、最新の改正点や判例を知っているからです。ということは、裏を返せば、宅建試験では改正点が出題されるということを意味します。

なお、2018年度の宅建試験では、直近1年以内の改正点が6肢も出題されています。

2019年度の宅建試験の改正点は多くはありませんが、建築基準法の改正が重要です(税法を除く)。なお、今回の改正の施行日が、2019年4月1日よりも後になるものもあるので、すべてが今年の宅建試験の出題範囲となるわけではない点にも注意しましょう。

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建築基準法の一部改正の概要

1 建築物・市街地の安全性の確保

糸魚川市大規模火災(平成28年12月)や埼玉県三芳町倉庫火災(平成29年2月)などの大規模火災による甚大な被害の発生を踏まえ、建築物の適切な維持保全・改修等により、建築物の安全性の確保を図ることや、密集市街地の解消を進めることが課題となっていました。

そこで、維持保全計画に基づく適切な維持保全の促進等により、建築物の更なる安全性の確保を図るとともに、防火改修・建替え等を通じた市街地の安全性の確保を実現しました。

《改正のポイント》

  • 維持保全計画の作成等が求められる建築物の範囲を拡大(大規模倉庫等を想定)。
  • 既存不適格建築物の所有者等に対する特定行政庁による指導及び助言の創設。
  • 防火地域・準防火地域内において、延焼防止性能の高い建築物の建蔽率を10%緩和。

 

2 既存建築ストックの活用

空き家の総数は、この20年で1.8倍に増加しており、用途変更等による利活用が極めて重要となっています。一方で、その活用に当たっては、建築基準法に適合させるために、大規模な工事が必要となる場合があることが課題となっていました。

戸建住宅等の福祉施設等への用途変更に伴う制限の合理化

そこで、まず、空き家等を福祉施設・商業施設等に用途変更する際に、大規模な改修工事を不要とするとともに、手続を合理化し、既存建築ストックの利活用を促進しました。

《改正のポイント》

  • 戸建住宅等(延べ面積200㎡未満かつ階数3以下)を福祉施設等とする場合に、在館者が迅速に避難できる措置を講じることを前提に、耐火建築物等にする必要がなくなりました。
  • 用途変更に伴って建築確認が必要となる規模を見直し(不要の規模上限を100㎡から200㎡に)。

大規模な建築物等に係る制限の合理化

次に、既存建築ストックの多様な形での利活用を促進しました。

《改正のポイント》

  • 既存不適格建築物を用途変更する場合に、段階的・計画的に現行基準に適合させていくことを可能とする仕組みを導入。
  • 新たに整備される仮設建築物と同様、既存建築物を一時的に特定の用途とする場合も制限を緩和。

 

3 木造建築を巡る多様なニーズへの対応

必要な性能を有する木造建築物の整備の円滑化を通じて、木造に対する多様な消費者ニーズへの対応、地域資源を活用した地域振興を図ることが必要となっています。

そこで、中層木造共同住宅など木造建築物の整備を推進するとともに、防火改修・建替え等を促進しました。

《改正のポイント》

  • 耐火構造等とすべき木造建築物の対象を見直し(高さ13m・軒高9m超→高さ16m超・階数4以上) 。
  • 上記の規制を受ける場合についても、木材のあらわし等の耐火構造以外の構造を可能とするよう基準を見直し。
  • 防火地域・準防火地域内において高い延焼防止性能が求められる建築物についても、内部の壁・柱等において更なる木材利用が可能となるよう基準を見直し。

 

その他

  • 老人ホーム等の共用の廊下や階段について、共同住宅と同様に、容積率の算定基礎となる床面積から除外
  • 興行場等の仮設建築物の存続期間(現行1年)の延長等
  • 用途制限等に係る特例許可手続の簡素化

 

2019年度宅建試験の出題範囲となる改正点

1 国、都道府県又は建築主事を置く市町村の建築物に対する確認、検査又は是正措置に関する手続の特例(法18条2項)

《旧規定》

第六条第一項の規定によって建築し、又は大規模の修繕若しくは大規模の模様替をしようとする建築物の建築主が国、都道府県又は建築主事を置く市町村である場合においては、当該国の機関の長等は、当該工事に着手する前に、その計画を建築主事に通知しなければならない。

《新規定》

第六条第一項の規定によって建築し、又は大規模の修繕若しくは大規模の模様替をしようとする建築物の建築主が国、都道府県又は建築主事を置く市町村である場合においては、当該国の機関の長等は、当該工事に着手する前に、その計画を建築主事に通知しなければならない。ただし、防火地域及び準防火地域外において建築物を増築し、改築し、又は移転しようとする場合(当該増築、改築又は移転に係る部分の床面積の合計が十平方メートル以内である場合に限る。)においては、この限りでない。

コメント

この規定自体、宅建試験に出題されたことはないので、出題される可能性は低いでしょう。なお、法6条1項の規定は、建築確認に関する規定です。

⇒条文を確認する

 

2 木造建築物等である特殊建築物の外壁等(法24条)

《旧規定》

第二十二条第一項の市街地の区域内にある木造建築物等である特殊建築物で、次の各号の一に該当するものは、その外壁及び軒裏で延焼のおそれのある部分を防火構造としなければならない。
一 学校、劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場、マーケット又は公衆浴場の用途に供するもの
二 自動車車庫の用途に供するもので、その用途に供する部分の床面積の合計が五十平方メートルを超えるもの
三 百貨店、共同住宅、寄宿舎、病院又は倉庫の用途に供するもので、階数が二であり、かつ、その用途に供する部分の床面積の合計が二百平方メートルを超えるもの

《新規定》

削除

コメント

この規定自体、宅建試験に出題されたことはないので、出題される可能性は低いでしょう。なお、法22条1項の市街地とは、「特定行政庁が防火地域及び準防火地域以外の市街地について指定する区域内」を指します。

⇒条文を確認する

 

3 道路の定義(法42条)

《旧規定》

この章の規定において「道路」とは、次の各号の一に該当する幅員四メートル(特定行政庁がその地方の気候若しくは風土の特殊性又は土地の状況により必要と認めて都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域内においては、六メートル。次項及び第三項において同じ。)以上のもの(地下におけるものを除く。)をいう。
一 略
二 略
三 この章の規定が適用されるに至つた際現に存在する道

《新規定》

この章の規定において「道路」とは、次の各号のいずれかに該当する幅員四メートル(特定行政庁がその地方の気候若しくは風土の特殊性又は土地の状況により必要と認めて都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域内においては、六メートル。次項及び第三項において同じ。)以上のもの(地下におけるものを除く。)をいう。
一 略
二 略
三 都市計画区域若しくは準都市計画区域の指定若しくは変更又は第六十八条の九第一項の規定に基づく条例の制定若しくは改正によりこの章の規定が適用されるに至つた際現に存在する道

コメント

良く出題される条文の改正ですが、実質的に変更はありません。念のために一読しておく程度で十分です。なお、2項の書き出しも「この章」という部分が上記と同様の表現に変更されています。

⇒条文を確認する

 

4 敷地等と道路との関係(法43条)

《旧規定》

建築物の敷地は、道路(次に掲げるものを除く。第四十四条第一項を除き、以下同じ。)に二メートル以上接しなければならない。ただし、その敷地の周囲に広い空地を有する建築物その他の国土交通省令で定める基準に適合する建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可したものについては、この限りでない。(号を略す)

2 地方公共団体は、特殊建築物、階数が三以上である建築物、政令で定める窓その他の開口部を有しない居室を有する建築物又は延べ面積(同一敷地内に二以上の建築物がある場合においては、その延べ面積の合計。第四節、第七節及び別表第三において同じ。)が千平方メートルを超える建築物の敷地が接しなければならない道路の幅員、その敷地が道路に接する部分の長さその他その敷地又は建築物と道路との関係についてこれらの建築物の用途又は規模の特殊性により、前項の規定によつては避難又は通行の安全の目的を充分に達し難いと認める場合においては、条例で、必要な制限を付加することができる。

《新規定》

建築物の敷地は、道路(次に掲げるものを除く。第四十四条第一項を除き、以下同じ。)に二メートル以上接しなければならない。(号を略す)

2 前項の規定は、次の各号のいずれかに該当する建築物については、適用しない。
一 その敷地が幅員四メートル以上の道(道路に該当するものを除き、避難及び通行の安全上必要な国土交通省令で定める基準に適合するものに限る。)に二メートル以上接する建築物のうち、利用者が少数であるものとしてその用途及び規模に関し国土交通省令で定める基準に適合するもので、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めるもの
二 その敷地の周囲に広い空地を有する建築物その他の国土交通省令で定める基準に適合する建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可したもの
3 地方公共団体は、次の各号のいずれかに該当する建築物について、その用途、規模又は位置の特殊性により、第一項の規定によつては避難又は通行の安全の目的を十分に達成することが困難であると認めるときは、条例で、その敷地が接しなければならない道路の幅員、その敷地が道路に接する部分の長さその他その敷地又は建築物と道路との関係に関して必要な制限を付加することができる。
一 特殊建築物
二 階数が三以上である建築物
三 政令で定める窓その他の開口部を有しない居室を有する建築物
四 延べ面積(同一敷地内に二以上の建築物がある場合にあつては、その延べ面積の合計。次号、第四節、第七節及び別表第三において同じ。)が千平方メートルを超える建築物
五 その敷地が袋路状道路(その一端のみが他の道路に接続したものをいう。)にのみ接する建築物で、延べ面積が百五十平方メートルを超えるもの(一戸建ての住宅を除く。)

コメント

接道義務については宅建試験では頻出分野です。今回改正は例外についての規定が整理され、より具体的になったものといえます。

特に、「その敷地が幅員四メートル以上の道(道路に該当するものを除き、避難及び通行の安全上必要な国土交通省令で定める基準に適合するものに限る。)に二メートル以上接する建築物のうち、利用者が少数であるものとしてその用途及び規模に関し国土交通省令で定める基準に適合するもので、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めるもの」という新たな例外の基準については、建築審査会の同意が要件となっていない点は、宅建試験では出題の可能性があります。

建築基準法43条改正点

建築基準法43条改正点

また、条例による条件付加についても頻出分野ですが、都心部の重層長屋問題を解決するため、条項が追加されました。ただ、過去問を見る限り、条例で付加できても緩和できない、という程度の出題が大半なので、この改正点が出題されるかどうかは微妙です。念のため勉強しておきましょう。(当然、私の作る模擬試験には出題します!)

重層長屋問題に対応

建築基準法改正ー接道義務の過重事由の追加

⇒条文を確認する

 

5 容積率(法52条)

《旧規定》

3 ・・・建築物の容積率の算定の基礎となる延べ面積には、建築物の地階でその天井が地盤面からの高さ一メートル以下にあるものの住宅又は老人ホーム、福祉ホームその他これらに類するもの(以下この項において「老人ホーム等」という。)の用途に供する部分(第六項の政令で定める昇降機の昇降路の部分又は共同住宅の共用の廊下若しくは階段の用に供する部分を除く。以下この項において同じ。)の床面積(当該床面積が当該建築物の住宅及び老人ホーム等の用途に供する部分の床面積の合計の三分の一を超える場合においては、当該建築物の住宅及び老人ホーム等の用途に供する部分の床面積の合計の三分の一)は、算入しないものとする。

6 ・・・建築物の容積率の算定の基礎となる延べ面積には、政令で定める昇降機の昇降路の部分又は共同住宅の共用の廊下若しくは階段の用に供する部分の床面積は、算入しないものとする。

《新規定》

3 ・・・建築物の容積率の算定の基礎となる延べ面積には、建築物の地階でその天井が地盤面からの高さ一メートル以下にあるものの住宅又は老人ホーム、福祉ホームその他これらに類するもの(以下この項及び第六項において「老人ホーム等」という。)の用途に供する部分(第六項の政令で定める昇降機の昇降路の部分又は共同住宅若しくは老人ホーム等の共用の廊下若しくは階段の用に供する部分を除く。以下この項において同じ。)の床面積(当該床面積が当該建築物の住宅及び老人ホーム等の用途に供する部分の床面積の合計の三分の一を超える場合においては、当該建築物の住宅及び老人ホーム等の用途に供する部分の床面積の合計の三分の一)は、算入しないものとする。

6 ・・・建築物の容積率の算定の基礎となる延べ面積には、政令で定める昇降機の昇降路の部分又は共同住宅若しくは老人ホーム等の共用の廊下若しくは階段の用に供する部分の床面積は、算入しないものとする。

コメント

容積率は頻出分野です。共同住宅から老人ホーム等への用途変更をしやすくし、既存ストックの利活用の促進を図るため、老人ホーム等の入所系福祉施設における供用の廊下・階段について、共同住宅と同様に、容積率の算定基礎となる床面積から除外されました。

容積率の緩和措置の拡充ー老人ホーム

容積率の緩和措置の拡充ー老人ホーム

⇒条文を確認する

 

6 日影による中高層の建築物の高さの制限(法56条の2)

《旧規定》

・・・地方公共団体がその地方の気候及び風土、土地利用の状況等を勘案して条例で指定する号に掲げる時間以上日影となる部分を生じさせることのないものとしなければならない。ただし、特定行政庁が土地の状況等により周囲の居住環境を害するおそれがないと認めて建築審査会の同意を得て許可した場合においては、この限りでない。

《新規定》

・・・地方公共団体がその地方の気候及び風土、土地利用の状況等を勘案して条例で指定する号に掲げる時間以上日影となる部分を生じさせることのないものとしなければならない。ただし、特定行政庁が土地の状況等により周囲の居住環境を害するおそれがないと認めて建築審査会の同意を得て許可した場合又は当該許可を受けた建築物を周囲の居住環境を害するおそれがないものとして政令で定める位置及び規模の範囲内において増築し、改築し、若しくは移転する場合においては、この限りでない。

コメント

日影規制に関しては頻出分野ですが、今回の改正箇所である但し書きについては出題されたことがありません。したがって、出題の可能性は低いといえます。

建築基準法改正ー日影規制の適用除外に係る合理化

建築基準法改正ー日影規制の適用除外に係る合理化

⇒条文を確認する

 

7 仮設建築物に対する制限の緩和(法85条)

《旧規定》

6・7項を追加

《新規定》

6 特定行政庁は、国際的な規模の会議又は競技会の用に供することその他の理由により一年を超えて使用する特別の必要がある仮設興行場等について、安全上、防火上及び衛生上支障がなく、かつ、公益上やむを得ないと認める場合においては、前項の規定にかかわらず、当該仮設興行場等の使用上必要と認める期間を定めてその建築を許可することができる。この場合においては、同項後段の規定を準用する。

7 特定行政庁は、前項の規定による許可をする場合においては、あらかじめ、建築審査会の同意を得なければならない。

コメント

この規定が過去に出題されたことはありません。したがって、出題の可能性は低いでしょう。なお、東京オリンピック・パラリンピック競技大会では、プレ大会に備え、開催の2~3年前から仮設観客施設等を設ける必要があります。そういった趣旨からの改正です。

[stken2]

-法令税他

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