保守契約など対策必要
ちょっと前のことだが、住んでいた賃貸住宅がプロパンガスで毎月4万円数千円して高いと思っていたところ、同業者の方に相談したら、それはおかしいという。そして、その業者に電話してくれて、結果、翌月からいきなり半額近くに下がった経験がある。確かに、価格が不透明である。(藤澤雅義)
今年6月以降、プロパンガス(以下、LPガス)を利用する賃貸物件では、ガス料金や不動産オーナーとガス会社の契約内容を入居者に伝えることが必要になりそうだ。
経済産業省が発表した「LPガスが消費者から選択されるエネルギーとなるために」によると、LPガスは全国総世帯数の約4割(約2,400万世帯)の家庭用燃料として利用されており、国民生活を支える重要なエネルギーだ。LPガス料金はガス会社が自由に決めることができるが、これを公表している事業者は少なく、料金の不透明性が指摘されている。
また、賃貸住宅においては、不動産オーナーが予め選択したガス会社が決まっており、入居者は不動産オーナーの同意を得ずにこれを変更することができない。加えて、不動産オーナーとガス会社とで、設備機器の設置やその後の保守をガス会社が負担する契約をしているケースもあり、ガス会社がその費用を入居者のガス料金に転化することに繋がっているという指摘もある。こうした状況を踏まえ、同省が対策に乗り出すようだ。
賃貸物件において、ガス料金を明示することになると、どのようなことが起きるだろうか。
ガス料金以外の条件が同じ2つの物件があるならば、入居者はガス料金が安い物件を選択する。したがって、ガス料金が高い物件のオーナーは、ガス料金や賃料を下げたり、相当する特典をつけなければ入居付けに苦戦することになるだろう。オーナーの賃貸経営は厳しくなりそうだ。いっそのこと、機器の保守契約を解除してガス料金を下げた方が良いかもしれない。
ガス会社は物件に設置した設備を10~15年で減価償却しているので、オーナーが残存価値を買い取れば、ガス料金を下げることもできるだろう。また、保守契約を維持しつつも、オーナーがガス会社との契約期間を延長することで、長期割引としてガス料金を下げられる可能性もある。今後、LPガスを利用する物件のオーナーはこうした対策を取る必要がでてきそうだ。
そうした中で、不動産管理会社である私たちは入居者の生活の向上や、不動産オーナーの経営の安定のために、適切な提案をしていく必要がある。LPガスの透明化について、今後の動向から目が離せない。
(筆:片平智也/週刊住宅2017.04.10 掲載)