体験談

初心者が宅建試験に挑む!「時効の完成猶予と更新」

投稿日:2020年9月14日 更新日:

初心者が宅建試験に挑戦!今回は民法改正で用語が変わった「時効の完成猶予と更新」をマーキング!

スタケン宅建講座で初心者が宅建合格をめざすブログにようこそ。

今回のテーマは「時効の完成猶予と更新」

前回お送りした「取得時効と消滅時効」の続編になります。

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時効をくい止める制度

ある所に、家賃を滞納している不良借家人と、滞納分の督促をうっかり忘れていた大家さんがいたとします。

大家さんは不良借家人の滞納を放置したまま、すでに4年10ヶ月が過ぎようとしていました。このまま2ヶ月が過ぎてしまうと、5年が経過したことになり時効が完成してしまいます。つまり、滞納分を請求する権利が「消滅時効にかかる」ことで消滅してしまうわけです。

まるで時限爆弾のように、期限を迎えた瞬間に法律効果を一変させる時の怪物時効…。

その爆弾をくい止め、権利の消滅を防ぐ役割を果たすのが「完成猶予」「更新」です。

  • 完成猶予:「訴訟」などで時効が猶予される(旧「停止」)
  • 更新:判決の確定などで時効が最初からやり直される(旧「中断」)

完成猶予は、時効の完成直前になっても債権回収に向けた債務者との話し合いがまとまっていないなど、債権者側が時間を稼ぎたい場合に一時的に時効の完成を猶予することができます。つまり、時効の完成時期を延期できるわけです。

一方、更新はカウントダウンをやり直す力を持ちます。時効がいくら完成目前に迫っても、更新されれば今までのカウントダウンが消滅し、新たに時を刻まなければなりません

5年近くも滞納分の回収を忘れていた大家さん。

しかし時効完成前ですから、まだ打てる手はあるということですね!

二人の戦士

<“擬人化”で理解促進>
急な脱線で大変恐縮ですが、上の画像は「完成猶予」と「更新」のイメージです。
個人的な勉強法として、用語を擬人化してイメージすると記憶に残りやすい気がしています。時の怪物・ジコー(時効)に対して、債権者を助けるために戦うカンセイ・ユウヨ(完成猶予)コウシン(更新)みたいな(笑)
書きながら大変恥ずかしく思っていますが、宅建の勉強では具体的にイメージすることが大事だとよく言われます。なじみの薄い用語をキャラ付けすれば、けっこう記憶に残るのでおススメですよ。

更新事由一体型のケース

それでは、数十万円に上る滞納をしている不良借家人に対して、大家さんはどのようにして時効の完成を防ぐことができるのでしょうか。

基本的には訴訟などの完成猶予事由によって時効の完成を止めることになりますが、その後の流れとして、時効が更新される場合(=更新事由一体型)と、更新されない場合(=更新事由非一体型)の2種類に分かれます。

  • 更新事由一体型=完成猶予事由+更新事由
  • 更新事由非一体型=完成猶予事由のみ

まずは更新事由一体型から、どのようなケースがあるか見ていきましょう。
(画像は更新事由一体型のイメージ)

更新事由一体型

裁判上の請求+判決確定

大家さんが裁判上の請求(訴訟)を起こすことで、手続き終了まで自動的に時効の完成が猶予されます。その後、判決が確定すれば、確定時点で時効は更新されます。

  • 完成猶予事由:裁判上の請求
  • 更新事由:判決確定
【Point】
確定判決を得ることなく手続きが終了した場合であっても手続き終了後6カ月を経過するまで時効は完成しません。

支払督促+承認

大家さんが支払督促(簡易裁判所の書記官が相手方に支払いを命じる簡易手続き)をした時点で時効の完成が猶予されます。その後、裁判所で大家さんの申立てが認められて権利が確定すると、自動的に時効は更新されます。

  • 完成猶予事由:支払督促
  • 更新事由:権利確定(申立てが認められる)
【Point】
支払督促の確定前に申立てを取り下げた場合でも、支払督促をした時から6カ月を経過するまで時効は完成しません。

強制執行の申立て+強制執行

大家さんが不良借家人に対して強制執行の申立てを行なった時点で、手続き終了まで時効の完成が猶予されます。そして、未回収の債権が残り限り、強制執行が行われるたびに時効は更新されます。

  • 完成猶予事由:強制執行の申立て
  • 更新事由:強制執行
【Point】
強制執行の申立てを取り下げて手続きが終了した場合でも、手続き終了後6カ月が経過するまで時効は完成しません。

更新事由非一体型のケース

次に、更新されずに完成猶予の効果だけが認められる更新事由非一体型の場合です。

完成猶予事由だけで時効をひとまず先延ばしにできるケースですね。
(画像は更新事由非一体型のイメージ)

更新事由非一体型

【完成猶予事由:仮差押え・仮処分】

仮差押え・仮処分が終了した時から6カ月を経過するまで時効は完成しません。

両者は民事訴訟の判決前に行なう性質上、後に判決を得ることを予定しており、暫定的に財産を確保しておこうという措置になります。そうした一時的な手続きに過ぎないため、時効の完成を猶予するだけにとどまり、更新までには至らないとされています。

【Point】
仮差押えとは、債権者が債務者から確実に金銭債権を回収するため、裁判所が債務者に対して、財産の売却などを当分の間行なわないよう命令すること。一方、仮処分は仮差押えと似ていますが、金銭債権以外の債権に対して裁判所が処分禁止を命じることを言います。

【完成猶予事由:催告】

内容証明郵便などで催告した時から6カ月を経過するまで時効は完成しません。

ただし、催告によって時効の完成が猶予されている間に、再度の催告を行なったとしても完成猶予の効力は持ちません。つまり、大家さんが催告しても不良借家人が応じないときは、支払督促などの別の手段に訴えた方がいいと言うことです。

【Point】
催告などに対して債務者が債務履行を「承認」した場合(例「わかりました。必ず払いますから、あと1年待ってもらえますか?」)、時効は自動的に更新されます。
承認はシンプルですが時効の更新事由となります。特別の方式や手続きを必要とせず、黙示であっても構わないとされています。
しかし、成年被後見人の承認、法定代理人の同意がない未成年の承認は有効となりませんので注意が必要です。

【完成猶予事由:協議を行う旨の書面による合意】(超重要!)

大家さんが不良借家人に対して、「滞納分を払ってもらいたいから、まずは話し合おう」と協議を持ち掛け、不良借家人がこれに応じた時、自動的に時効の完成が猶予されます。

協議の合意を得られた場合の時効は、次に挙げる、いずれか早い時期を迎えるまで完成しません。

  • 合意があった時から1年を経過した時
  • 合意において当事者が協議する期間(1年に満たないものに限る)を経過した時
  • 当事者の一方から相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされた場合、その通知の時から6カ月を経た時

書面など(eメールもOK!)により協議の合意がなされることで時効が猶予された場合、再度催告と異なり、時効の完成が猶予されている間に行われた再度合意にも猶予の効力が認められますので注意が必要です。

ただし、猶予の効力にも上限が設定されており、最初の時効の完成時点から最大5年間という縛りがあります。

つまり、時効の完成が猶予されている間に、話がまとまらないからと再度、再々度と協議の合意を繰り返しても元々の時効完成時点から5年を超えることはできないということです。

いやー、頭がこんがらがってきますね!

ただ、協議の合意によって時効が猶予される点は民法改正ポイントですので、宅建試験的に非常に重要です。しっかり押さえておきましょう!

最大5年

さて、大家さんと不良借家人を例に解説してきましたが、「時効の完成猶予と更新」について皆さんお分かりいただけたでしょうか。

最後にスタケンの例題を解いて、さらに理解を深めていきましょう!

例題1.催告

【〇×問題】Aが、Bに対する賃料債権につき内容証明郵便により支払を請求したときは、その請求により消滅時効は更新する。

【解説】
正解は「 ×

更新ではなく完成猶予となりますので、本問は×ですね。内容証明郵便による支払請求などの催告だけでは、時効がストップはしても更新はされませんので注意してください。

また、催告をした場合、その時から6カ月間は時効が完成しません。その間にお金を借りているBが「1年後には返すから待ってくれ」と支払の猶予を求めるなど【承認】に当たる行為をした場合、時効は更新されることになります。

承認は時効の更新事由となり、特別の方式や手続きを必要とせず、黙示であっても構わないとされています。合わせて覚えておきましょう。

例題2.裁判上の請求

【〇×問題】Aが、Bに対する賃料債権につきBを相手取って裁判を起こした。時効の完成時期が間近に迫っていたが、裁判を起こしたことで、時効は訴えたその日から新たに5年間更新される。

【解説】
正解は「 ×

裁判を起こすなど裁判上の請求は完成猶予事由となり、更新はできません。更新の効力が生じるのは、裁判で判決が確定した時となります。

また、確定判決などにより権利の確定に至ることなく終了した場合も、終了した時から6カ月間は時効の完成が猶予されることになります。

例題3.協議への同意

【〇×問題】Aが、Bに対する賃料債権につき、支払を求めて協議を求めてBも応じた。話し合いが難航したため、両者は時効の完成前に再度協議を行うことに合意をしたが、その後も合意を繰り返したとしても、猶予期間は本来の完成時期から最大10年を超えることはできない。

【解説】
正解は「 ×

協議の合意を繰り返して時効完成を猶予し続けることはできますが、元々の時効完成時期から最大5年が上限となります。本問では最大10年とありますので×となるわけです。

改正民法では、協議について書面など(eメールなどの電磁的記録でも可)で合意すればその時から1年間、またはその合意で定められた1年未満の協議期間中は時効の完成が猶予されるという新たな制度を創設しました。

宅建試験では、ほぼ間違いなく出題されると思いますので、確実に押さえておきたいところですね!

条文で見る「 時効の完成猶予と更新 」

第147条

1.次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなくその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。

一 裁判上の請求

二 支払督促

三 民事訴訟法第二百七十五条第一項の和解又は民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)若しくは家事事件手続法(平成二十三年法律第五十二号)による調停 四 破産手続参加、再生手続参加又は更生手続参加

2.前項の場合において、確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定したときは、時効は、同項各号に掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始める。

第148条

1.次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(申立ての取下げ又は法律の規定に従わないことによる取消しによってその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。

一 強制執行

二 担保権の実行

三 民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第百九十五条に規定する担保権の実行としての競売の例による競売

四 民事執行法第百九十六条に規定する財産開示手続

2.前項の場合には、時効は、同項各号に掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始める。ただし、申立ての取下げ又は法律の規定に従わないことによる取消しによってその事由が終了した場合は、この限りでない。

第149条

次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了した時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

一 仮差押え

二 仮処分

第150条

1.催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

2.催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。

第152条

1.時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める。

2.前項の承認をするには、相手方の権利についての処分につき行為能力の制限を受けていないこと又は権限があることを要しない。

第153条

1. 第百四十七条又は第百四十八条の規定による時効の完成猶予又は更新は、完成猶予又は更新の事由が生じた当事者及びその承継人の間においてのみ、その効力を有する。

2.第百四十九条から第百五十一条までの規定による時効の完成猶予は、完成猶予の事由が生じた当事者及びその承継人の間においてのみ、その効力を有する。

3.前条の規定による時効の更新は、更新の事由が生じた当事者及びその承継人の間においてのみ、その効力を有する。

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