宅建受験者の中でも、苦手とする人が多いのが「民法・権利関係」の分野です。
宅地建物取引に関する実務に携わっていたり、法律を学んでいない限り、条文はもちろん聞き慣れない法律用語が理解できず、苦手意識を持ちやすいでしょう。
しかし、宅建で合格するためには、不得意とする人が多い権利関係を克服し皆と差をつけることが重要です。この記事では、少しでも苦手意識をなくせるよう、民法・権利関係の攻略法について解説します。
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この記事で学べること
宅建「民法・権利関係」攻略のためのポイント4つ
宅建に合格するためには、毎年合格者の多くが高得点を取る「宅建業法」で得点を落とさないことはもちろん、苦手とする人が多い「民法・権利関係」で差をつけることが重要です。
ただ、民法・権利関係は奥が深く、宅建業法とは違い「きちんと勉強すれば満点が目指せる分野」ではありません。
そのため、深入りしすぎず「重要な項目だけを正しく理解する」ことが攻略のコツでしょう。
民法・権利関係攻略のため必要なポイントは以下の4つです。
- 出題範囲をしっかりと把握する
- 民法・権利関係の5割(7問)は正解出来るまで勉強する
- 理解できないときは「かわいそう理論」を使う
- 民法・権利関係は9月までに最低2周は解く
全て理解しようとして沼にハマらないよう、ポイントを実践して効率良く勉強しましょう。
出題範囲をしっかりと把握する
宅建の試験問題全50問のうち、民法・権利関係からの出題は14問です。
- 民法(10問)
- 借地借家法(2問)
- 区分所有法(1問)
- 不動産登記法(1問)
広い法律分野から出題されるのは、過去上記の項目からだけです。
さらに、10問出題される「民法」のなかにはさまざまな項目がありますが「不動産登記法 」「借地借家法」「建物区分所有法」は毎年出題されています。そのため、「不動産登記法 」「借地借家法」「建物区分所有法」は宅建業法の延長のつもりで、必ず得点を取る姿勢で挑みましょう。
また、民法・権利関係の全体的な特徴として「問題文が長く言い回しが難しい」という傾向があります。
ぼんやりとテキストを読んでいると何を問われているのか分からなくなってしまうため、関係図を書いて整理しながら読んだり、文章を細かく区切って読みましょう。何を問われているのか理解できると、圧倒的に正解を導き出しやすくなります。
民法のポイント
民法からは10問と出題される問題数が最も多いということもありますが、民法は他の項目・分野における基礎的な考え方となります。
“民法ではこのような考え方である”
“この場合は民法よりこの法律が優先される”
など、基準とされることが多いため、重点的に学習することをおすすめします。出題範囲も広いため、以下の7つの範囲を重点的に対策することが必要です。
- 制限行為能力者
- 意思表示
- 代理
- 時効
- 不動産物権変動
- 抵当権・根抵当権
- 賃貸借
また、民法の問題は、事実関係を整理することが必要です。図示をすることで、視覚的に理解が進むため、回答のスピードも上がってくるでしょう。
借地借家法のポイント
借地借家法は、民法の規定だけでは借主の立場は貸主に比べて弱くなってしまうため「借主の保護を目的」に作られた法律です。
注意したいのが、借地借家法は「建物を建てるために土地を借りる」や「住む家を借りる」の場合に適用される法律だということです。
資材置き場やソーラーパネル設置など、建物所有以外を目的とする場合には適用されません。宅建の試験では、民法の賃貸借と関連付けて出題されることもあるため、比較しながら理解しましょう。
区分所有法のポイント
区分所有法は、分譲マンションについてのルールを定めた法律です。
マンションは、一戸建てのように土地も建物も個人が所有できるわけではありません。土地や建物全体を、マンションの一室を所有している区分所有者のみんながそれぞれの割合で所有しています。
複数の所有者で共有して所有しているため、マンション内での決め事や管理・変更などは全体で統一した意思決定をしなければなりません。それらの意思決定の決め方や管理方法などが区分所有法で定められた法律基準です。
分譲マンションの所有者でルールを話し合うために集会が開かれますが、その際の「決め方」や「数字」に着目して覚えるようにしましょう。
不動産登記法のポイント
不動産登記法は、土地や建物を所有している権利を明確にし、権利の保全と取引の安全と円滑を目的にしています。
ポイントとしては、登記記録は「表題部」と「権利部」(甲区・乙区)にわかれていることです。
「表示に関する登記」と「権利に関する登記」を分かりやすくまとめると、このようになります。
表示に関する登記 | 権利に関する登記 | |
記録される部分 | 表題部 | 権利部 |
登記事項 | 土地:所在・地目など
建物:所在・種類・構造など |
甲区:所有権
乙区:所有権以外の権利 |
申請の義務 | あり | なし |
対抗力の有無 | なし | あり |
表題部と権利部が混同しないように注意しながら覚えましょう。
実物を見ると早く理解できるので、機会があればお住まいの地域の法務局へ行き、自分が住んでいる住所の登記簿謄本を取ってみるのもおすすめです。
民法・権利関係の5割(7問)は正解出来るまで勉強する
民法・権利関係も全問正解できれば素晴らしいですが、理解が進まないところもあるでしょう。
「1点でも多く点数を取る」という気持ちは大切にしながらも、最低ラインは約5割の7問とし、7問は確実に正解できるようになるまで勉強しましょう。
宅建で合格するためには優先順位を付けることも重要です。
出題範囲が広く、ときには見たこともないような問題が出される民法・権利関係に深入りして沼にハマるよりも、まずは皆が得点を取る問題をしっかり得点源にてください。
理解できないときは「かわいそう理論」を使う
何度テキストを読んで問題を解いても分からない、忘れてしまうこともあります。そのようなときは「法律は立場の弱い人を守るためにある」と考えましょう。「そんな曖昧な」と思うかもしれませんが、民法は「かわいそうだから守ってあげよう」と弱者の立場になることで比較的正解を導き出しやすくなります。
たとえば、平成28年度の問題の正解肢に以下のような選択肢があります。
「Aから甲土地を購入したBは、所有権移転登記を備えていなかった。Eがこれに乗じてBに高値で売りつけて利益を得る目的でAから甲土地を購入し所有権移転登記を備えた場合、EはBに対して甲土地の所有権を主張することができない。」
まず、関係者が3人出てくると「誰が何をしたのか」ややこしくなるため、関係図を書いて整理しましょう。そして、ここから「かわいそう理論」を使ってみます。
EはBが登記を備えていないことを知っていて(悪意)、高値で売りつけようとしている背信的悪意者に該当します。Bは登記を備えていないとは言え、土地が背信的悪意者Eのものになってしまってはかわいそうですよね。
そこで、シンプルに「何の悪意もないBを守ってあげよう」と考えれば良いのです。問題を解いていてどうしても分からなないときには、シンプルに「かわいそう理論」を使ってみてください。
民法・権利関係は9月までに最低2周は解く
暗記では対応できない宅建の民法・権利関係ですが、繰り返し解いていくことで理解が深まり頭の中にしっかりと定着していきます。
暗記に頼らず正しく理解するためにも、9月までに民法・権利関係の問題集を最低2周は解きましょう。
テキストと問題集の周回方法は人それぞれですが、ここでは一般的に「理解が深まる」と言われているテキストと問題集の使い方を紹介します。
- ①テキストを読む
- ②過去問を解く
- ③答えあわせ・解説とテキストを読む
- ④間違えた問題をチェックし、後日間違えた問題を再度解く
テキストと問題集の周回は①~④までの繰り返しですが、特に重要なのは「過去問を解く」際に答えを導き出すまでのプロセスも確認すること、周辺知識も覚えているか確認することです。
過去問を何度か解いていると、理解せず出題の順番などで正解を覚えてしまうことがあります。これではただ問題の正解を暗記しているだけで応用が利かないので、過去問を解きながら、答えを導き出すまでのプロセスや、周辺知識も思い出すことが大切です。
他にも、1つの正解を探すだけでなく、3つの誤りを探すことも民法・権利関係攻略のコツです。誤っている選択肢についても「選択肢のどこが間違いで、どうすれば正解は何なのか」丁寧に確認していきましょう。
1つ1つ法律の目的をよく考えて理解を深めることで、民法・権利関係の苦手意識が克服できるはずです。
まとめ
宅建「民法・権利関係」攻略のためのポイントは以下の4つです。
- 出題範囲をしっかりと把握して、毎年出題される「不動産登記法 」「借地借家法」「建物区分所有法」は必ず得点を取る姿勢で挑む。
- 民法・権利関係は7問は確実に正解できるようになるまで勉強する。
- どうしても分からないときは「法律は立場の弱い人を守るためにある」と考える。
- 9月までに最低2周はテキストを読んで過去問を解く
宅建受験者の中でも、苦手とする人が多いのが「民法・権利関係」の分野です。宅建試験でも、民法・権利関係は奥が深く、宅建業法のように「きちんと勉強すれば満点が目指せる分野」ではありません。
そのため、深入りしすぎず重要な項目だけを正しく理解して、民法・権利関係の苦手意識を克服しましょう。
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