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vol.14 オーナーを納得させるプレゼンテーション

2017.07.01
  • 月刊不動産

    質問

    賃貸オーナーに向けて、新築のプロデュースやリノベーションの提案などを行うことがあるのですが、説得力に欠けるのか良いプレゼンテーションができません。

    どのような提案をすれば説得力が増すのかを教えてください。

    回答

    物件供給が過剰になればオーナーは積極的な投資を控えるはずです。

    周辺エリアの市場調査を行い、「本当に必要とされている物件の間取りや設備」を導き出し、「なぜその物件が必要なのか」という根拠とロジックをもとに提案をしましょう。

    需要のある土地か、建てるための根拠が必要

    人口減少に伴い、賃貸需要も年々減っていくといわれている一方で、ハウスメーカーが施工する賃貸住宅の建築が減ることはない。アパート建築というと、つい利回りやデザインなどに目を奪われがちだが、管理会社の立場からすると、建てることよりも、建てた後のことが気になる。

    長期的に安定稼働すればよいのだが、そもそも需要がないエリアに建物が増えれば、新しい物件に人は移り、やがて供給過剰になり賃料の下落が始まる。この負の連鎖を止めるには、建築(リノベーション)前に、しっかりとした根拠をもとに計画をしなければならない。

     

    そのために当社では、創業当時より「市場調査」というものを重視してきた。本来、市場調査のような「建てるための根拠」となるものは、オーナーに提案をする建設会社が行うべきであるが、実際、調査らしい調査は、これまでほとんど見たことがない。何千万~数億円もの投資をするのに、根拠のない提案では、人口が減っている状況において、オーナーもなかなか首を縦に振るはずもない。

    私たちは管理会社という立場であるため、建ててもらうことがゴールではなく、建ててもらった後のことを一番に考える。そのエリアに必要とされる建物を提案しなければ、築年数が浅い時はよくても、すぐに稼働率が落ちていくことを知っているからだ。

    何の根拠もなく無造作に建てられた物件が、空室だらけになっている現場を地方ではよく目にする。そこに建てるための根拠をしっかりと探らなければならない。

    需要調査と供給調査

    市場調査というと、どことなく聞こえがよくカッコいいイメージもありそうだが、やっていることは実に地味で手間もかかる。調査は「需要調査」と「供給調査」に分けられる。需要調査については、家族類型別に不動産会社へのヒアリングを行う。

    ①単身者、②カップル、③ファミリー(第一子が未就学児)、④ファミリー(第一子が小学生以上)、⑤その他(母子家庭、二世帯同居など)と、5つのカテゴリーに分け、来店者割合(または反響割合)をヒアリングする。

    このとき、聞いた人によって数字にブレが生じるため、できるだけ実際の来店者データなどを出してもらえるかどうかがカギとなる。

     

    供給調査については、該当エリアの物件をくまなく調べることになる。調査範囲は、エリアによって物件密度が違うので毎回違うが、おおよそ1,000~2,000室程度を目安にしている。

    大型物件が集中しているような都市部エリアに関しては、1棟が数字に大きく影響をもたらすため、もう少し多めに調査をすることもある。調査方法は次のとおりである。

    ①調査範囲を決めて、住宅地図から賃貸物件をピックアップ、②物件名をもとにインターネットで情報収集(総戸数・賃料・築年数・間取り・専有面積など)、③現地調査(入居率・外観・管理状況・周辺環境など)、④調査結果をもとに分析、⑤製本となる。調査結果は調べたデータより、約60ページの企画提案・市場調査書となる(資料)。

    以前に比べ、インターネットで事前情報収集が容易にできるようになったため、現地での調査時間も大幅に減らせるようになった。

    融資の追い風にもなる市場調査

    調査結果は、シングル・ファミリー物件のシェアと空室率、構造別のシェアと空室率、間取り別空室率、築年数別空室率、需給ギャップなど、多面的に分析されたデータをグラフ化している。その結果をもとに、当該エリアに最適な間取りや規模を導き出していく。

    調査結果によっては、建築やリノベーションを勧めないこともある。無理に勧めて将来苦戦することが想定される場合は、リスクがあることや、プロジェクトを勧めない理由をしっかりと伝える。建てさせることが目的ではないため、やめたほうがよいとハッキリと提案することは、営業面からするとネガティブに捉えられがちであるが、結果的にオーナーに信頼されるのである。

     

    このような市場調査は手間がかかり、調査を専門でやる企業が存在しないため、あまり目を向けられてはいないが、不動産経営の空室リスクが将来的に増すなかで、今後市場調査に対する需要が増えると想定される。

    また2017年度に入り、不動産事業への融資が厳しくなりつつあるなかで、明確な市場調査は、金融機関からの受けもよく、融資の追い風になる。建築・リノベーションなどの大型投資をするときには、このような市場調査を取り入れることで、結果として受注率が高まり、管理会社としても安心して管理を引き受けることができるのだ。

    今回のポイント

    • 市場調査は「需要調査」と「供給調査」の両面から行う。
    • 需要調査は、家族類型別に来店者データを取得する。
    • 供給調査は、1,000~2,000室程度を目安に、当該エリアをくまなく調査。
    • 出てきたデータをグラフ化して、製本したのちオーナー提案に利用する。
    • 市場調査は、金融機関の融資担当者の心証もよくする。

    (公益社団法人 全日本不動産協会発行「月刊不動産」2017.7月号掲載)

    • 今井 基次
      コンサルティング事業部 部長
      プロフィール:

      全国の不動産管理事業を行う企業に対してご支援を行っています。
      業務内容は多岐に渡りますが、
      常に笑いをもたらすエンターテイメント型コンサルタントとして全国各地を行脚しております。

       ・コンサルティング(マーケティング戦略・商品企画・ブランディングなど)
       ・社員教育研修
       ・講演活動
       ・執筆活動
       ・イベント企画
       ・商品企画

      コンサルタントブログ:今井基次のきゃらばん日記「西へ東へ」

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