月刊不動産

公開日:2019年5月1日

vol.25 付加価値の高いサービスを展開して管理受託を拡大

vol.25 付加価値の高いサービスを展開して管理受託を拡大
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質問

自主管理賃貸オーナーに対して、管理受託を拡大させていきたいと考えています。

ただ、ライバル業者も管理戸数拡大のために管理手数料を下げたり広告を拡大させたり、なかなか思うように成果を上げにくい環境です。

どうしたら成果を出しやすくなるのか、方法を教えてください。

回答

自社管理の強みを見つめ直し、管理サービスの内容を見直しましょう。オーナーの抱えている課題や悩みはさまざまです。

管理サービスをメニュー化して、オーナーに選んでもらいやすいプランを組み立ててみましょう。

1.手数料の値下げ合戦は共倒れに

今年になって、不動産仲介店舗での手数料売上げが伸び悩む企業が増えている。大手フランチャイズに加入しているからといって、安定的に売上げをつくれる時代ではなくなってきたようだ。賃貸ユーザーの大半を占める若年層の減少で取扱件数が減り、以前のように入居者に付帯商品を利用してもらうことが難しくなっていることも、その一因といえる。

 

このような厳しい時代に目を向けられるのが、安定した売上げをつくることができる賃貸管理業だ。ただ、賃貸管理事業を拡大させるのには、それなりの時間を要する。急拡大を図ろうと管理料を下げてまで管理を増やそうとする企業もあるが、それに拍車がかかると周辺の企業もそれに追随することで、管理料相場が大幅に下落して、市場のライバル業者と共倒れに陥ることになる。

以前、ファーストフード業界で繰り広げられた、相次ぐ値下げ競争は、結局自分たちの首を絞めることになったが、その二の舞になってもよいのだろうか。手数料を下げることそのものは否定するものではないが、本当にその方法しかないのかよく考えるべきだ。そろそろ「ただの値引き」のようなデフレマインドから脱出して、価値を創造して「管理手数料を上げる」ことに目を向けなければならない。

2. コストを冷静に分析する

賃貸管理業務の内容は多岐にわたり、大量のマンパワーが必要とされる。管理業務に実際どれだけのコストがかかっているのか、検証もしないまま管理受託を繰り返していけば、やがて経営が行き詰まり、かえってオーナーに迷惑をかけてしまうことになる。

まずは1物件(1棟)あたりのコストを冷静に分析して、物件ごとにいくらの利益を上げられるのかを検証すべきである。その上で管理を拡大させるようにしなければ、割に合わない仕事を増やすだけで、利益が上がらないうえに現場もスタッフも疲弊するだけである。

3. 管理サービスのメニュー化

わたし自身、アパートオーナーでもあるが、実際に満足のいく管理会社がこれほどまでに数少ないものなのかと実感している。個人的には中途半端な管理手数料を払って、いつも気がかりな状態が続くよりも、しっかりフィーを支払って納得のいく管理をしてほしいと感じている。

管理サービスの価値を創造するには、まずは「管理サービスのメニュー化」をしてオーナーのユーザビリティの向上を図るべきだ。よく、「当社の管理の特徴は高い仲介力です」とアピールする企業もあるが、「仲介」と「管理」は、全く別物である。管理そのものの価値をしっかり考えてほしい。
メニュー化は、管理料別に大きく3つくらいに分けられるとよい(図表1)。

▲図表1 管理メニューの特性

4. 3つのメニューを用意

まずは通常の管理業務を「標準管理(ベーシック)」として、サービス内容や業務内容を明確化する。このとき、できるだけサービス内容を1つひとつ詳細に記述してもらいたい。標準管理の柱が決まったら、2つ目は管理料を標準管理よりも低めに設定した「ライトプラン(エコノミー)」について検討してみるとよい。このライトプランは、これまで取引のないオーナーに対して、安い管理料で自分たちのサービスを気軽に利用してもらうためもので、新たな接点を作るのが目的だ。安い管理料といっても、オーナーとの新たなきっかけを作るためのものであり、永続的にこのライトプランを使ってもらうわけではなく、その上へ向かうための橋渡し的なものと考えてもらいたい。

続いて3つ目は、管理料を標準管理より高めに設定した「プレミアムプラン」について検討してみよう。管理料は少し高めになるが、これまでの管理サービスよりも付加価値を与えて、オーナー満足度の向上を図る(図表2)。将来的にはこのプレミアムプランを標準として、ライバル他社とは明確に管理の差別化を図り、自社の管理の優位性を保つことで、より管理を拡大することが可能となる。

▲図表2 管理メニュー表(例)

5. 現在の管理サービスを見直す

管理のサービス内容は、オーナーだけでなく自社のスタッフさえ、よく理解していないことがある。このような状態が続くと、本来やらなくてよい仕事も交渉力の高いオーナーに言われるがまま動いてしまい、結果として全体のオーナー満足度を低下させ、自社の利益が出ない体制となってしまうのである。

今一度、自社の管理サービスを見直して、しっかりとメニュー化することで、管理拡大は大幅に図りやすくなるだろう。

(公益社団法人 全日本不動産協会発行「月刊不動産」2019.5月号掲載)

今回のポイント

  • 賃貸管理事業を拡大させるために安易に管理料を下げると、相場が下落し、ライバル業者と共倒れになる。
  • 管理業はマンパワーが必要とされるため、1物件(1棟)あたりのコストと利益を検証する必要がある。
  • 管理サービスの価値を創造するには、「管理サービスのメニュー化」をしてオーナーのユーザビリティの向上を図るべきである。
  • まず「標準管理(ベーシック)」のサービス内容を詳細に決め、その後、それより低めに設定した「ライトプラン(エコノミー)」、高めの「プレミアムプラン」を設定する。
  • 将来的には「プレミアムプラン」を標準に、ライバル他社と明確に差別化を図る。

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