月刊不動産

公開日:2018年9月26日

vol.21 良い人材を見極める採用選考基準

vol.21 良い人材を見極める採用選考基準
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質問

採用選考をするとき、部署により基準が異なり、どのように選考をしてよいのかわかりません。

これまでは採用面接のみで人を選んできましたが、入社後に、思っていたほどスキルがないことに気づくことが多々あります。

何かアイデアがあれば教えてください。

 

回答

試験や面接などの選考基準を明確にしましょう。作成した基準を「採用選考のマニュアル」とすることで、誰が採用面接を行っても一定の基準で評価ができるようになります。

 

絶対評価の基準を作って選考ミスを防ぐ

ここ最近、人材を募集しても反響が少ない。一昔前の就職難はどこへやら、ニュースでも報道されているように、有効求人倍率が「1.59倍」(2018年4月現在)という結果が出ていて仕事余りの状況になっている。

 

応募数が少ない場合でもせっかくコストを掛けたのだからと、その限られた応募者の中から選んでしまいがちだが、そこには「採用のリスク」が潜んでいる。この入口で選考ミスをすると、本来採用してはいけないような人を雇ってしまい、将来の火種を会社内に投げ入れてしまうことになる。

そのような事態をできるだけ防ぐためには、どんなときでも一定の評価ができるよう、相対評価ではなく絶対評価の基準を作っておく必要がある。そして、それらをマニュアル化することがポイントになる。

選考のための事前準備を行う

採用の際、どの会社でも必ず何かしらの方法で選考をするはずである。一般的にはペーパー試験、適性検査、面接などが用いられている。ここでのポイントは、まず採用側として「選考のための事前準備(基準づくり)」をしっかりと行うことである。
この事前準備をしておかなければ、選考の基準が曖昧になり、経営者の「カンとノリ」だけで採用してしまうことになる。

例えば当社であれば、一次と二次の最低2回の選考を行う。この選考に関して、毎回同じ人が行うというわけではないので、一定の基準で評価をするために、内容を体系化している。

筆記試験や実務的な記述問題で一般常識のレベルを判断

まず一次選考(図表)では、簡単な筆記試験から始める。漢字の読み取り、簡単な計算問題、常識問題などで、漢字では70点を取れなければ、どんなに他が良くても採用しないという絶対評価基準がある。日常的に新聞や書籍を読んでいればわかるような常識問題ばかりだが、それが読めないということは、社会人としての常識がないと判断できる。

それから、タイピングテストも行う。特に事務系の募集の場合は、入力スピードがどれくらいであるのか、パフォーマンスを測ることが可能だ。さらに、実務的な記述問題を実施している。

それが「お詫び文章(メール)」の作成である。“オーナーの物件でトラブルが発生し、さらにオーナーと連絡がとれない状況下において、費用がかかる処置をしなければならなかった”。その事後報告のお詫びをする際、どのような文章を作成できるかをジャッジする。しっかりした文章をかける人もいれば、お詫び文章であるにもかかわらず「謝ることができない」人もいるので、ここでも社会人としての一般常識が判断できる。

決められた質問から対話形式で質問を繰り返す

筆記試験を終えると、いよいよ面接となる。面接時にも面接官が何気なく思ったことをただ聞くだけでは、評価基準が不明確である。当社では面接官が最低限聞く質問が決められている。20種類ほどの質問をもとに、面接官は質問を繰り返していくことになり、誰が面接をしても一定の基準のもとで評価ができる。

ここでのポイントは、質問をしてただ答えさせるだけでは意味がないことだ。答えさせた上に、「それはなぜですか?」「どうしてそのようにしたのですか?」など、自由回答式の質問を繰り返していくことである。曖昧なことを言う人や、嘘をついている人は、「なぜ?」「どうして?」の質問を2~3回繰り返すことで、必ずほころびが生じる。

自社の良いところも課題も伝え、妥協しないことがポイント

ほとんどの場合で、面接では採用されたいがために真実よりも大げさに伝えようとする。会社側も採用したい場合、良いことばかり伝えるが、これでは双方にとって「入社したけれど思っていた人(会社)と違う」ということになってしまう。

 

これを防ぐには、まず面接官がしっかりと心を開くことが重要である。自社の良いところも、課題となっている点もしっかりと伝えること。伝えられないような真実があれば、入社しても早々に退社してしまうだろう。

それらを根本的に回避するには、会社のインフラや問題点を1つずつ良くしていくことが重要なのだが…。人材不足のときは、1日でも早く人を入れてほしいと現場からの声が上がる。しかし慌てて入れると、問題社員を抱えてしまうリスクが生じる。

「今までの採用で最大のポイントは?」と聞かれたら、「妥協して採らないことです(笑)」と言ってしまう。長い目で見たとき、社風に合った人材に出会うまで待つことこそ、よりよい組織を作るためには重要だ。良い人材がやってくるときまで、「採用は我慢との戦い」なのである。

今回のポイント

  • 募集コストを考えて選ぶと選考ミスをしかねないため、選考基準をマニュアル化しておく必要がある。
  • 採用側として「選考のための事前準備(基準づくり)」をしっかりと行う。
  • 漢字の読み取り、簡単な計算問題、常識問題、タイピングテスト、実務的な記述問題を実施すると、一般常識や入力のスピード、文章力などが判断できる。
  • 最低限聞く質問を決めて、自由に対話をすることで、回答内容の曖昧さや嘘を見極められる。
  • 自社の良い点と課題をしっかり伝え、妥協して採用しないことが最も重要である。

(公益社団法人 全日本不動産協会発行「月刊不動産」2018.9月号掲載)


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