月刊不動産

公開日:2017年9月15日

vol.15 滞納督促業務の効率化

vol.15 滞納督促業務の効率化
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質問

当社は約1,000室の物件をオーナーからお預かりしています。管理も順調に増えていますが、最近は滞納者への 督促に労力を割かれ、労働生産性が大幅に低くなっています 。
どのようにしたら滞納を減らして、生産性を高めることができるでしょうか。

回答

滞納者への督促を効率的に行える「仕組み」を利用しましょう。
電話や文章だけで行う「マンパワー型の方法」だけではなく、滞納させないような「工夫」についても考えて実践しましょう。

全体の1割が滞納者

管理会社の業務の中で、手間や時間のかかるものといえば「滞納者への督促」が挙げられる。

当社は現在、首都圏を中心に約7,200室(稼働率約96%)の物件を管理している。家賃の支払い期日後の月初めに集計をすると、全体の約10%(約700人)もの人が「滞納者」に該当する。ただし、滞納者といっても、全員が悪意のある滞納者ということではない。ほとんどの場合、口座にお金を入れていなかったため引き落としができなかったとか、新規契約者で引き落としのタイミングを勘違いして振り込みを忘れていたなどの、うっかり滞納者であり、月中から月末に向かってほとんどが解消していく。

一般的な督促はマンパワーがかかる

しかし、中には2カ月分以上の家賃滞納者が全体の1%程度(70名前後)もいて、滞納保証が付いていない場合は、オーナーにとっても莫大な損失になってしまう。はじめは「うっ かり滞納者」でも、滞納することに慣れてしまえば「悪質滞納者」に変わってしまう。それを防ぐためには、管理会社からの素早い対応とマメな連絡が重要になる。
通常、家賃は月末に翌月分を支払ってもらうため、月初めには誰が滞納しているのかわかる。滞納者に対しては、すぐに督促を行うが、700人もの滞納者がいる場合、すべての人に電話をするとなれば、大量のマンパワーが必要になってしまう。一般的な督促の業務フローは、電話→書面→訪問という流れで対応するが、当社では電話の前に「SMS」を利 用して督促を行うことにしている。

パソコンから一斉にSMS送信

SMSは電話番号さえわかれば、キャリアを問わず70文字以内で文章を作ってメールを送ることができる。

電話で督促しようとした場合、仕事や移動中など、日中は出られず、夜間でないとなかなかつながらないということが起こるが、SMSであれば確実に一次督促を完了させることができる。

ただし、携帯電話やスマートフォンなどから1人ずつ送っているようでは、膨大な時間がかかってしまう。そこでSMSをパソコンから一斉送信できる独自のシステムを作った。このサービスと同じようなものは、すでに国内大手キャリアがやっているのだが、1通100円 などと送信単価が高かったため、当社は海外キャリアを経由して安く利用できるように自前でシステム化した。利用方法は極めて簡単 で、滞納者の名前と電話番号をリスト化してCSVデータで取り込み、そこに定型の文章を一斉に送る(図表)。下記の文章がその一例である。
「〇〇様、管理会社のアートア ベニューです。9月分の家賃が未納になっています。至急お支払いください。問合せ:03-0000-0000」。この方法を利用すれば、確実に短時間で一斉に一次滞納督促を完了することができる。これにより、現在は滞納督促業務にかける時間を大幅に減らせた。”

契約書への記載や内容証明の送付も効果的

もう一つ、滞納者を重篤化させない方法がある。それは賃貸借契約書に下記のような文章を入れてしまうことだ。

「賃料等の延滞があった場合は、賃料支払期日の翌日より支払いに至る日までの間、延滞金として年率14.6%の遅延損害金と、請求手数料として、電話によるものは1回につき1,000円、文書によるものは1回につき3,000円、訪問面談によるものは1回につき5,000円を支払うものとします」。

ここに書かれている「請求手数料」は、更新時または解約時に、実際に徴収をしている。賃貸借契約を取り交わすときにその説明をキッチリと行うことで、滞納の抑止にもなる。

それから、内容証明を早期に送ってしまうのも効果が高い。大きなトラブルになってから内容証明を送るケースはあるが、当社では、1カ月半程度支払いが遅延した滞納者に対して、すぐに内容証明を送るようにしている。あまり繰り返し送っても効果が上がることはないが、即効性は高い。

滞納者への督促をはじめ、手間や時間を取られる業務は、マンパワーに頼らない仕組みづくりが労働生産性を高める大きなカギとなる。ここに紹介した事例は、どの会社でもすぐに利用することができるため、ぜひ実践してもらいたい。

今回のポイント

  • 賃料を2カ月以上も滞納する「悪質滞納者」を出さないようにするためには、管理会社からの素早い対応とマメな連絡が重要である。
  • 「電話→書面→訪問」という「マンパワー型」の督促業務だけでなく、滞納させない工夫やマンパワーに頼らない仕組み作りが必要。
  • 督促方法は「SMS」を利用したパソコンからの一斉送信や、契約書への遅延損害金と請求手数料の記載、内容証明の送付は、効率的で即効性が高いといえる。

(公益社団法人 全日本不動産協会発行「月刊不動産」2017.9月号掲載)


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