反響、内見、申込、契約を数値化
賃貸管理においては、業務の計数管理が大変重要だ。細かな分析を怠っていると、知らないうちに会社があらぬ方向に向かっている、ということがある。
たとえば、弊社では「審査落ち率」というものを毎月計算する。「入居申込をしてもらった総数中、入居審査でお断りする率」のことだ。
以前、いつのまにかこの率が高くなっていったことがある。担当の審査基準が「辛め」になっていったのだ。当然、仲介してくださる業者さんは、なぜこの程度で審査落ちするのか、と怒ってしまう。
その反省から、毎月この分析をすることにした。図表の④契約率は77.5%ということは、キャンセルが22.5%もあるということだ。 業者付けが100%の弊社としては、仕方がないような気もするが、この数値を少なくすることが弊社の課題だ。(藤澤雅義)
手間惜しまず問題を明確化
入居者募集から新規の契約締結までを行うリーシング業務。オーナーが管理会社に最も期待する部分といっても過言ではないだろう。あなたの会社では、この業務の良し悪しをどのように判断しているだろうか?
この業務の目的である「新規入居者との契約締結」に至るためには、
1)募集に対する反響、2)内見、3)入居申込、4)契約締結といったステップを登っていくことになる。それぞれのステップで別表のような指標を把握することで、良し悪しの傾向が分かるだけでなく、業務の効率化や効果の改善ができる。
募集している部屋が決まらない・・・という結果だけ見れば同じ問題であっても、どのステップで躓いているのかで打つべき手は全く変わってくるからだ。
例えば、別表の①反響率が通常より悪いのならば、「賃料や募集条件等が市場に合っていない」「募集情報を載せる媒体が間違っている」といった原因が考えられる。
②内見率であれば「募集情報上の写真や動画に魅力が無い」「内見までの手続きがメンドクサイ」など、
③申込率であれば「室内や物件の状況が悪い(臭い・清掃・管理状況等)」「募集上のイメージと現物が違いすぎる」といった理由が考えられる。契約率ならば、「申込から契約までに時間がかかりすぎ」「申込を軽く見られている」などだ。
こういった分析に基づいて募集戦略を練れば、闇雲に対策を考えるよりはるかに効率的だ。
このような募集指標は、その変化や比較にこそ意味がある。先月や前年同月と比べて数値がどう動いたかを知ることで、リーシング業務の傾向を判断できる。
さらに、会社全体の数値と物件毎の数値を比較すれば、「○○オーナーの物件は当社の平均値に比べて、このステップにおける数値が悪いようです。改善のためにこういった手を打ちませんか?」というように、オーナー提案の説得力を増すことができる。
だからこそ、会社全体と物件毎の数値を、継続的に把握することが大切になる。今回のテーマであるリーシングをはじめ、賃貸管理業務では「どうやら上手くいっているようだ!」と感覚に頼ってしまうことが少なくない。
しかし、ちょっとしたことでも細かく数値化していくことで、管理業務にはもちろん、クライアントであるオーナーにも大きなプラスを生むことができる。ひと手間を惜しまず、是非とも社内にこういった数値管理をする仕組みを構築してはどうだろうか。
(筆:先原秀和/週刊住宅2014.11.10掲載)