周辺エリアの市場を徹底分析
空室が多い状態が長く続いた物件を持つオーナーは、自分の物件に自信を無くし、アパート経営そのものにも意欲を失っていることが多い。エリア内の近隣物件も空室が目立つような状況であれば尚のことだ。こういうときには、市場調査をしっかりして、自信を取り戻してもらうことが有効だ。下記の事例にあるように、どのようなエリアであっても、「需給ギャップ」があることが多い。そこを突けば、必ず物件は蘇るのだ。(藤澤雅義)
カラーコーディネートで苦戦も
入居者募集時における空室対策の1つの手法として、リノベーションを行うという選択肢がある。陳腐化が進んでいるため、このままの状態で貸し続けても今後は賃料が下がるのみという状況下では、リノベーションは非常に有効な空室対策だ。
事例として、築24年、4階建てでエレベーターがついていないマンションタイプ、間取りは全て同じ3DKという物件を紹介したい。
近年では入居者がなかなか決まらず、直近で成約したのは1年4ヶ月前で、成約賃料は新築時の約半分の賃料。空室が既に6部屋あるが、どのように空室対策したらいいかわからないから相談に乗って欲しいと、弊社にこの案件が持ち込まれた。この時点ではリノベーションをすることで抜本的な改善が図れるのは明確であったが、どのようなプランでターゲットに訴求するかは、机上の議論では答えは出てこない。
このような場合、まず先に行うことは案件地周辺の徹底的な市場分析だ。現地に赴き、エリア内に供給されている物件をくまなく調査する。さらに、該当エリアで部屋を探す入居希望者が、一体どのような賃料・間取り・構造・設備仕様を求めているのかを仲介業者数社にヒアリングを行う。
「既存物件」と「入居者ニーズ」
この2つの調査結果を掛けあわせることで、エリア内に生じている需給ギャップが明確にわかる。
調査の結果、入居者の多くがマンションタイプを求めていることがわかった。間取りは、広めの1LDK(単身者・カップル・新婚層)、2LDK(新婚・未就学児がいる夫婦)のニーズが高いが、エリア内にはそれらを叶える物件はほぼゼロだった。
今回の物件は不人気の3DKだが、ニーズに合わせた間取り・設備仕様にすれば、マンションタイプでもあるので、この物件は必ずよみがえる、とそう確信した。4階建てでエレベーターがついていないこの物件の場合、日々の階段昇降のことを考えると未就学児がいる夫婦は、上層階を選択することは少ないと予想できる。
結果、4階の1部屋はターゲットを【単身者・カップル】と定め、間取りを1LDKとした。1階から3階は【新婚・未就学児のいる夫婦】が求める2LDKへリノベーションとした。
5部屋分ある2LDKは、設備仕様のカラーバリエーションを変えてリノベーションを施した。この企画は入居者ニーズにぴったりハマり、6部屋中、5部屋はスムーズに申し込みを得ることが出来た。
しかし最後に残った2LDKの一部屋はカラーコーディネートを「赤」にしたせいか(和室のカラー畳も赤!)、なかなか決まらず、弊社の企画で初の失敗事例か・・・?との声が出始めたが、最終的には家具を設置し、モデルルーム化という訴求方法で、入居者からの申し込みを無事に得ることが出来た。ホッとした次第である。
(筆:原田亮/週刊住宅2014.11.24掲載)