入念な点検がオーナー利益に
管理受託後の物件引き渡し時のチェックは大変重要だ。規模の大きなものだと丸1日かかってしまうようなこともまれではない。ここで怠慢をしてしまうと後々苦労することになる。
また、調査した結果の現状の問題点をしっかりオーナーに報告し、改善提案をしなくてはならない。予算の関係等ですぐには着手できないことも多いが、「最初に」提案しておくことが大事なのだ。受託後1年経ってから、実はこれこれの問題があって空室が決まらないのです、と言っても何を今更と思われてしまうものだ。(藤澤雅義)
入居者への聞き込みが重要
新たに管理が始まる物件では、管理会社が引渡し時に「現地調査」を行うが、特に築年数が経った中古物件の現地調査では、物件の状態を正確に把握し、危険性や問題があれば、早急に改善策をオーナーに報告・提案する。
この現地調査はどこまで正確かつ迅速に報告できているだろうか。
物件担当者から「引き渡しを受ける中古物件の状態が良くないので、一緒に見てほしい」と相談を受け、現地確認に向かった。調査を始め、外観を見て回るだけで、いくつかの問題点が見つかった。その中のひとつに気になる点があった。
窓サッシのコーキング割れがあり、室内に漏水している可能性があるというものだ。
ちょうど空室があったので室内を確認したが、リフォームで壁紙を張り替えており、漏水の痕跡は無い。また、売買時に旧オーナーから漏水があったとは聞いていない。もし、この時点で当社からオーナーへ「漏水の可能性が考えられるが空室は綺麗です。今後建物全体の防水調査を推奨します。」などと報告してしまっていたら、不十分な対応と言わざるを得ない。
現地調査中、どうにもサッシのコーキング割れが気になるので、挨拶を兼ねて既存入居者を訪問し、それとなく漏水について伺った。そうすると、やはり既存入居中の部屋では複数の窓サッシから大量の雨水が漏水している事実が判明した。それも10年前から漏水が始まり、旧管理会社に何度も補修をお願いしたが、結局何もされず、入居者は泣き寝入り状態だったそうだ。その他にも、入居者は我々の調査だけでは知り得ない、過去に起きた近隣とのトラブルなど今後の管理に役立つ情報を親切に教えて下さった。
漏水の事実があり、これから当社が管理させていただく以上、補修等の改善策をオーナーにしていただく必要がある。ただ、これには多額の補修費用がかかる。しかし、今回のケースでは、売買契約で瑕疵担保責任を負わない旨の特約をしていたとしても、売主がこの漏水の事実を知っていたにも関わらず、売買時に買主(現オーナー)に告げていなかったならば、その責任を追及する事が出来き、費用を売主に請求する事ができる可能性がある。
入居者を訪問し室内を見せて頂き、お話を伺う事で、結果としてオーナーの負担を軽減することに繋がる可能性がある。この一件を機に、引き渡し現地調査時の「聞き込み」の重要性を再認識した。
(筆:片平智也/週刊住宅2015.03.09掲載)