顧客の真のニーズつかむ
「営業とは聞くことである」。営業担当なので、「営業」をしなくてはならないと思い、一生懸命自社の商品を売ろう売ろうと説明し、クロージングを焦る。顧客の話などろくろく聞いていないのだ。営業は「話させ上手」にならなくてはいけない。人は、本当は話すことが好きなのだ。だから、上手な相づちで聞いてもらえると嬉しくてしようがない。営業担当は聞き上手にならなくては。営業は、話してはいけないのだ。(藤澤雅義)
情報収集に50分、提案は10分
管理会社の営業担当はオーナーから様々な相談を受け、その解決策を提案するが、営業担当の中には提案が上手な人とそうでない人がいる。分析してみると、営業が上手な人の共通点は、図1.の「A.情報収集」が十分にできており、逆に営業が上手くいかない人の多くは情報取集が不十分なまま「B.提案」に進んでいるようだ。
ある日「サブリースについて伺いたい」と問合せがあった。顧客から話を伺うと、所有物件の収益が思うように安定せず、サブリースを検討しているとのこと。営業担当は運営状況をある程度伺った上で、当社のサービスを説明した。特に事前に質問があったサブリースの内容は特に丁寧に説明した。
しかし、説明を受けた顧客は何か腑に落ちない様子だ。なぜなら、この顧客に潜在する「真のニーズ」はサブリースの内容を知りたいのではなかったからだ。顧客自身が問題の本質に気付いていないということはよくある。営業担当は十分な情報収集をしなかったために顧客に潜在する「真のニーズ」にたどり着けず、的外れな提案していたのだ。残念な結果であるが、こういった営業をしてしまう場面は多いように思える。
マーケティングには「3つのC」が大事だという。
顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(自社商品)(Company)のことだが、この場合、営業担当からみて顧客は「不動産オーナー」、競合は「ライバルの管理会社」、自社(商品)は「自社の管理システム」である。しかし、それはあくまで我々からみた「3つのC」である。相手の立場にたって考えろ、とよくいうが、
不動産オーナーからみた「3つのC」は、「入居者」であり、「ライバル物件」であり、「自分の建物」である。
ここまで掘り下げてヒアリングをしなくてはクロージングには辿り着けないのだ。
顧客の「真のニーズ」は「空室を埋め収益改善を図りたい」というものだった。提案営業は「情報収集」がポイントである。十分に「傾聴」し、顧客の「真の課題」を顕在化したい。
極端な話だが、仮に60分の顧客面談があれば、始めの50分は情報収集に徹し、最後の10分だけ提案の時間をとるつもりでも良いのではないだろうか。
(筆:片平智也/週刊住宅2015.04.13掲載)