部屋を広く使える壁付き型
賃貸住宅で一番大事なものは何かと問われれば、私は「間取り」と答える。
そして、多くの地域で人気がある間取りは、「2LDK」だ。新婚カップル・DINKS、同棲、友人や兄弟姉妹、小さな子のいる夫婦、場合によっては収入の高い単身者も、と対象が広いのが特徴だ。
2LDKは、いい間取りである。安心できる間取りだ。ただ、「独立キッチンタイプ」をつくるのと「壁付きオープンキッチンタイプ」のどちらがよいか、と迷ってしまうことが多い。
たとえば新婚カップルが図を見せられて、「どっちの部屋に住みたい?」と聞かれれば、10組中8組ぐらいは「独立キッチン」と答えるだろう。それくらい圧倒的に、独立対面キッチンは人気がある。それを否定するつもりはない。
ただ、どちらも同じマンションで、同じ日当たりで同じ家賃、設備・仕様もまったく同条件で同時に募集されていたとして、交互に部屋を見たカップルが独立キッチンタイプを選ぶ割合は8割ではないと私は思う。
たしかに独立キッチンタイプのほうが、対面式で家族などに背を向けることなく調理もできるし、対話もできる。壁付きオープンと比べていろいろなものを隠せるので、女性に人気があるのは理解できる。カウンターがあるから、朝食などはそこで食べようというイメージも広がる。逆に壁付きオープンタイプは何の変哲もなく、色気がない間取りではある。
しかし、独立キッチンは実質的には、リビングが8畳しかない。ダイニングテーブルなどは、2次元の世界の平面図上では何とか納まっているかのように見えるが、実際に現場で見ると非常に厳しいものがある。また、約1畳分の斜線部分は単なる通路にしかすぎず、デッドスペースになってしまっている。
一方、図面を見てもらえばわかるように。
壁付きオープンはつまらない間取りかもしれないが、広く使えるし、フレキシブルに家具を置くことができるので、半分くらいの人はこちらを選ぶ可能性があると私は思っている。
もちろん独立キッチンタイプが理想だが、最低10畳あって初めてリビングダイニングと呼べるのではないだろうか。とすると、14畳分のスペースがあって初めて満足のできる独立キッチンができることになる。
では、いざ14畳あったらどうなのか。
今度は「壁付きオープンにしたら、14畳のLDKになるな」という誘惑にかられてしまう。それもまた魅力的なのである。したがって私が企画する案件では、「壁付きオープンキッチン」にすることが少なくない。
(筆:藤澤雅義/週刊住宅2015.05.11掲載)