業者手配前に事前確認を
賃貸管理会社はリーシングには一生懸命だが、メンテナンスの知識に弱いところがある。利益に直結するわけではないし、知識がないことで無駄やコストが生じてもあまり目立たないので、不問にされている。
しかし、入居者対応が悪ければ、テナント・リテンション(入居者の保持)にならないし、オーナーのコスト増にも繋がる。そして、無駄な作業があることで管理会社の人件費コスト増にも繋がるのだ。(藤澤雅義)
入居者が管理会社に掛けてくる電話のうち、全体の約40%を占める設備不具合に関する苦情。電話を受けてから、速やかに修理業者を手配して現地に向かわせる。管理会社として当然の対応だろう。
しかし、設備の調子が悪いという場合には、入居者の勘違いや、入居者に何かを試してもらうことで簡単に復旧することも実は良くある。
例えば、苦情の数が多い「エアコン」。動かない、冷温風が出ない(効きが悪い)、送風口から水が漏れるといったところが多いパターンだ。
これらの現象について、修理業者の手配をすべき故障以外で考えられる原因はいくつかある。
1)リモコンの電池切れ(入っていない)
2)エアコンのコンセントが抜けている(ブレーカーが落ちている)
3)運転設定が間違っている(冷房のつもりが暖房。温度設定がおかしいなど)。言葉にすればそんなバカな・・・だが、こういった「うっかり」とも言える原因は少なくない。
4)暖房運転時に室外機の霜を取るために行う「霜取り運転」。この運転中は一時的に温風が出なくなるが、そもそも故障ではない。
5)フィルター清掃をしていない
6)ドレンホースにゴミが詰まっている(何かがホースの出口を塞いでいる)。
これらは、入居者に確認し改善を試みてもらうことで、即時解決できる可能性がある。
1)~6)の原因ではなくても、エアコンのコンセントを抜き差しする(またはブレーカーを落として、また上げる)ことで、正常に動き出すことがある。
これはエアコンに限らず、電化製品系設備の調子が悪いときに試すべき方法で、それなりの確率で直ることがある。エアコンの調子が悪いという電話を受けた者が、前述の可能性や試してもらいたいことをその場で入居者に伝えられれば、無駄に修理業者を手配しなくても解決できるかもしれない。幸いにもそれで解決すれば、すぐにエアコンが正常に使えるようになるので、入居者にとってもありがたい。
我々管理会社は、修理業者任せのためか、設備についての知識が薄いことが比較的多いように感じる。しかし、修理業者を手配する前に、本当に故障なのかをチェックする術だけでも知っておけば、業務効率化と入居者満足に繋がる。
別表のように簡単なものでも良いので、設備不具合の電話を受けたときに確認すべき事項を、設備別/現象別にまとめたマニュアル等を用意してはどうだろうか?
(筆:先原秀和/週刊住宅2015.06.15掲載)