社員は利益生む業務に集中
賃貸管理会社は、やらねばならないことが多すぎる。リーシング(新規募集と更新再契約)、現場管理(ハードクレームとソフトクレームへの対応、メンテナンス、退去精算)、出納(賃料集金・督促、送金)、管理受託営業、空室対策提案、レポーティング等々である。これを全部社内のスタッフでやろうとしても無理な話だ。
お金を払ってでも他者にできることは他者に任せるという発想が必要だと思う。なぜかというと、ある業務を社員が担当することによって、その社員がもっと他に大事な業務があるのにそれを結果的に疎かにしてしまう。もっと利益を上げられる仕事があるのに、誰でもできる儲からない仕事に安易に流れてしまうからだ。
数年前、ある原稿を至急出版社に届けてゲラを持ち帰るという仕事を新人の女性社員に頼んだことがある。私はバイク便を頼んでいいよ、と言った。すると彼女はもったいないので、自分で行ってきますという。バイク便の往復は4,000円したのだ。私はこう答えた。往復で1時間半くらいかかるかもしれないね、あなたは自分が1時間半で4,000円以上稼げないと思うのなら、行っておいでと。
彼女はすかさずバイク便に頼みます、と答えたものだ。自分が行っている業務、たとえば募集図面作成、入居者からの電話対応、定期清掃、名刺の整理、データベース入力、送付物の袋詰、契約書の袋とじ、鍵交換等々、これらはすべてアウトソーシングできる。
これらの業務をしないで済むことによって、もっと重要な仕事に取り掛かることができるのだ。管理会社にとって、最も重要な仕事、それは空室対策提案であり、管理受託営業ではないか。より「選択と集中」をすべきではないか。
これを「コア・コンピタンス経営」ともいう。
「社員」とは、他のアルバイトや派遣、また他のベンダーより付加価値を産むことができる人のことをいう。付加価値とは、利益のことである。
管理会社は、やることが多い。だから、ふと目を離すと誰にでもできる、重要でない仕事にスタッフが黙々と取り組んでいることがある。退去リフォーム工事や消防設備点検などメンテナンス系は流石に専門のベンダーに任せることは多いと思うが、他にもまだまだあるのではないか。
(筆:藤澤雅義/週刊住宅2015.08.03-10掲載)