オーナーに提案し解約阻止に
解約時に、管理会社や物件に不満があったのが解約の理由だとは、入居者も敢えてはいわないものだ。そういう気分と他のちょっとした理由が相まって、つまり「合わせ技一本」解約になるのが現実ではなかろうか。
「解約を抑止」することは、管理会社の重要な任務といえる。(藤澤雅義)
全国の賃貸管理会社から入居者窓口業務の委託を受けている、当社「プロコール24」では、解約受付時に必ず解約理由を聞いている。できるだけ解約を阻止し、長く住んでもらうため(テナントリテンション)のデータ収集が主な目的である。
だが、実際にその理由を分析して、テナントリテンションに活用している会社はどのくらいあるだろう。
過去3年間のデータでは、解約理由のベスト3は「転勤」「自宅購入」「結婚」となっており、解約理由全体の約三分の一を占めている。これらの理由での解約を阻止することは難しい。
解約を阻止することが可能だったと思われる理由で「管理会社の問題(不満)」「物件の問題(不満)」というのがある。
この理由については、快適に住んでもらうことができれば解約が阻止できたはずだ。割合は全体の10%も無いが、この程度の割合は、あってはいけないと考えるか、またはいたしかたないと考えるか、おそらく後者の賃貸管理会社も少なくないと思われる。賃貸管理会社はサービス業である。長くお付き合いしたい「お客様(入居者)の声」を、重く受け止めるべきでではないだろうか。
何らかのサービスの提供や入居者の要望に答えることで、もしかすると解約が阻止できた可能性が考えられる「気分転換」(全体の約4~5%)という理由がある。特に理由がない方もこれに該当する。
では、どんなサービスを提供すれば、解約を阻止することができたかを考えてみると、入居者からの要望で最も多いのがやはり家賃値下げだ。但し、値下げばかりではオーナーにとって、ダメージとなり、オーナーからの信頼も失ってしまう。値下げすること以外に、オーナーへより良い提案をすることが、賃貸管理会社としての大切な仕事である。
入居者からの要望の中で家賃値下げ以外では、「エアコンのクリーニングをしてほしい」「エアコンが古いので新しいものに変えてほしい」「経年でクロスが汚れたので貼替えてほしい」などがある。基本的に故障していない、やる必要がないことへの要望は断るという賃貸管理会社が多いが、このような要望を、積極的にオーナーへ提案してみてはどうだろう。
ビックデータ時代と言われる今、企業の競争は「お客様の声」をいかに早く、的確なビジネスに生かすことにかかっている。
賃貸管理会社も、解約の阻止、この管理会社でよかったと思われるサービスを提供するべきではないだろうか。また、ホテルなどで行っているちょっとした気遣いを参考に、成約した方がその部屋に引っ越す前にメッセージカードやトイレットペーパー等の生活必需品を置くなど、もっとサービス業としての意識を高める必要があると思う。
(筆・遠藤広美/週刊住宅2015.08.17掲載)