公的データ活用しエリア傾向を分析
不動産業者は、数字に弱いかもしれない。数字というのは、データのことだ。データを収集し、分析し、対策を練る、というロジカルな展開に強くありたいものだ。文中の「吸収」だが、耳慣れない言葉かもしれない。重要な概念で、弊社では、毎月の空室戸数の確認でも活用している。(藤澤雅義)
賃貸住宅の運営は、その所在地域における人口や世帯数、住宅供給数といったものに大きな影響を受ける。だからこそ、これらの統計データを把握することが大切なのだが、どうやってそのデータを入手したら良いのだろうか。
まず、人口や世帯数といった「人」に関するデータは、現在調査が行われている「国勢調査」の結果が使える。e-Statという政府統計の総合窓口サイトからその調査結果を入手することができ、地域別の人口や世帯数をはじめ、就労就学の状況、利用交通機関、住宅の種類や専有面積の分布といったことまで分かる。
国勢調査は5年毎だが、各市区町村が国勢調査の結果を基に、主要項目の推計値を毎月や毎年の頻度で公表しているので、そちらも参考にして欲しい。また、人口に関する将来の予測は、国立社会保障・人口問題研究所のHPからデータを得ることができる。
住宅供給数などに関しては「住宅・土地統計調査」が役に立つ。こちらもe-Statから調査結果を入手できる。住宅供給数、空室数、賃料の㎡単価や築年数の分布など、我々にとって有益な情報が豊富に揃っている。また、ここから賃貸住宅数と空室数が分かるので、前回と今回のデータを比較して、賃貸住宅の「吸収」という指標を計算できる。これは、その地域で一定期間内に空室が減った数のことだ。
「期初の空室数+期中の住宅数増減(新築や取壊し等)-期末の空室数」で計算する。値が正の数であれば、空室が減っていく傾向の地域、負であればその逆であることを表している。よく使われる空室率という指標も大切だが、それだけだと例えば空室率が増加している場合、賃貸住宅が増えているせいなのか、人口が減っているからなのか分からない。
空室率や吸収、世帯数や住宅供給数の推移を総合的に把握することで、その地域の傾向をより深く理解できるのだ。
こういった公的調査の結果を入手し分析することで、その地域での不動産投資や賃貸経営の戦略を立てることができる。オーナーに様々な提案をする際の説得力も増す。
参考までに、私が住んでいる「藤沢市」の統計データを抜粋して表にまとめた。このような統計データは無料で簡単に入手できるので、是非実務にうまく取り入れて頂きたい。
(筆・先原秀和/週刊住宅2015.09.28掲載)