〝カン〟よりニーズを分析
賃貸住宅を企画する際には、新築、リニューアルを問わずマーケティング・リサーチが重要なことはいうまでもない。計画地にはたしてどのような入居者がやってくるのかをまず把握しなくてはならない。入居者募集に大きく影響するのは、入居者の家族形態である。家族形態によって求める間取りや面積に違いが出るからである。
よって、そのエリアに別表にあるように、各家族形態別にどのくらいの割合でのニーズがあるのかをまず知る必要がある。しかし、世間ではこの基本的な作業をせずに「カン」で企画している人や建築会社が多いのには驚く。
全国を回っている経験から、あくまで個人的な感覚だが、全国平均でのシェアは、別表ようなものではないだろうか。
もちろん、エリアによって違いがある。
東京など、都心では単身者の割合は過半数を超えるし、地方ではファミリー世帯が多いエリアもある。ただ言えることは、④の子供の大きい夫婦世帯という形態は非常に少ないということだ。
たとえば長男が中学生3年生、長女が1年生なので子供部屋は2ついる、夫婦の寝室を入れて3ベッドルーム以上の部屋を探している、という方が果たして何%いるのかということである。100組中2~3組いればいいほうだろう。
転勤家族がよく住みたがる、首都圏であれば田園都市線の多摩プラーザ駅周辺とか、大阪の御堂筋線の緑地公園駅周辺とかであれば別だが、70㎡以上の3LDKや4LDKを望む入居者は大変「まれ」なのである。
しかし、市場にはそういった間取りの物件が意外に多くある。企画した理由を尋ねると「大は小を兼ねる」とか「こういった広い間取りの物件は少ないので、差別化できる」とかおっしゃるのだが、なぜわざわざパイの少ないところを狙って投資するのか、もう少し明確な理由と分析が欲しいところだ。
70㎡の物件を絶対つくってはいけない、とはいわないが、私がつくるなら、同じ70㎡でも3LDKではなく、たとえば思い切って1LDKとか、もっと他のジャンルの入居者を狙うだろう。もしくは、分譲マンションと同じようなものをつくっても、スペック(性能)では分譲マンションにはかなわないことが多いので、何か違う味付けの賃貸をつくると思うのだ。
(筆・藤澤雅義/週刊住宅2015.10.05掲載)