〝ゆがみ〟解消で収益アップ
何事もベンチマーク(標準)があると比較し易い。ベンチマークとなる指標を、管理物件で、または社外のデータを頼りながら持っているべきだろう。より客観的なアドバイスができるのだ。(藤澤雅義)
物件の収益改善について相談を受ける機会は多い。収益改善にはいくつもの方法があるが、どの方法が最も効果的なのかを検証し、提案する必要がある。そのためには物件全体の収支を捉え、どこに「歪み(数値の乖離)」があるのかを知ることが大切だ。
そこで「キャッシュフローツリー」を使った比較分析を紹介したい。
先日、オーナー面談の際に「もう少し利益が出ないものだろうか」と相談を受けた。オーナーの話を伺いながら、その場で表のような簡単なキャッシュフローツリーを作成した。
運営費の内訳を確認すると、エレベーターの保守、法定点検といったビルメンテナンス費用が標準的なものと比べて高いことが分かった。実は10年前、物件を購入した際のビルメンテナンス契約をそのまま続けていたのだが、これが今となっては良い条件ではなくなっていたのだ。
これらをオーナーに説明し、ビルメンテナンス契約を見直した結果、年間で60万円、キャッシュフローを増加することができた。
このように、物件の収支全体をキャッシュフローツリーに表し、標準モデルと比較分析することで、どの構成要素に「歪み」があるのかを数値で捉えることができる。
この「歪み」を解消することで効果的に収益改善を行うことができるのだ。
キャッシュフローの標準モデルは物件が属する地域の空室率、物件のタイプ(マンションなのかアパートなのか、設備・仕様の違いなど)により選択が必要である。
社内に蓄積した情報や各種統計データを元に作成できると良いのだが、これが難しい場合はIREM JAPAN、(財)日本賃貸住宅管理協会、(株)ネクストが発行している「全国賃貸住宅NOI率調査報告書」などを参考にすると良いだろう。
さらに、運営費の中には様々な構成要素があるので、これらの要素について、予め基準や単価表を用意すると比較がしやすい。 キャッシュフローツリーの比較分析は客観的な根拠に基づいた提案であるため、提案を受けるオーナーも内容を理解しやすい。
そのため判断に迷うことが減り、すんなりと提案を受け入れていただけることが多い。 なかなか提案に承諾してもらえない場合には、こういった手法を試してみてはいかがだろうか。
(筆・片平智也/週刊住宅2015.10.19掲載)