調査と企画に手間かける
当社が行うオーナーへの賃貸住宅の建築提案は、融資を実行していただく金融機関からの評価も高い。その理由のひとつは、建築プランの立て方と事業収支の考え方にある。
当社では案件計画地周辺を徹底的に調査・分析し(エリア内の既存物件を1000戸から2000戸は詳細調査をする)、求められている入居者ニーズに市場が応えていない「需給ギャップ」をもとにターゲットを定め、どんな企画でいくのかを論理的に決めていく。
つまり、「エリア内の既存物件調査」の結果と「そのエリアに来るユーザーのニーズ調査」の結果を突き合わせると、必ず「需給ギャップ」が大きく出るので、そこを突く建築プランを立てるのだ。ここに結構時間をかける。全国どのエリアでも需給ギャップが大きいのは、入居者ニーズを把握せずに建てられている賃貸住宅が多いことの表れだ。そして、企画を反映した基本設計を行い、間取り等を決めてゆく。
「無理をしない」賃料査定を行い、運営コストを予測して、NOI(営業純利益)を導き出す。
NOIを「投資に合う利回り」で割り戻すと、「かけられる総コスト」が算出されるのだ。
その総コスト内で建築出来る施工会社を探していくという手順を踏んでいる。
世間で行われている建築提案は我々の逆ではないだろうか。失礼ながら、いきなりたいした調査も行わずにプランが決まり、建築コストが算出される。たしかに、建築営業の立場からは、クライアントへの提案スピードが大事であることは理解できるが、企画を立てる部分が肝ではないだろうか。
少々時間がかかっても、企画を立てる行程をしっかりとやるほうがクライアントの信頼を勝ち取ることができると思うのだが。そして、複数の不動産会社に賃料査定を依頼するのだが、その中で「一番高い賃料査定をした会社」を採用し、それを基に事業収支を計算している。これでは、入居者ニーズは反映されないし、少々「無理め」の事業計画になってしまう。
新築時にはなんとか決まっても、3年後には、賃料ダウンが必至だ。「一番高い賃料査定」は建築営業マンにとっては、有り難い存在だが、それはひょっとして、というか、かなりの確率で、「査定を間違えた」ものではないだろうか。
複数の不動産会社の査定の平均を採用する、というのならわかるが、一番高い数値を採用するというのは、異常値である可能性を無視しているとも言えるのだ。
(筆:藤澤雅義/週刊住宅2016.2.8 掲載)