褒めてから改善点を伝える
私もそうだが、人を褒めるのは苦手なほうだ。つい、欠点ばかりを指摘してしまう。最近、「褒める達人」になるための研修を全社で受けた。その時、学生時代に先生にあることで褒められたことを今でもとても鮮明に覚えていることを思った。そして、そのことは今の自分に大きな影響を与えている、とも感じる。気をつけよう。(藤澤雅義)
スタッフの営業力強化手法の中でロールプレイング(以下、ロープレ)という手法が用いられることがある。ロープレとは、接客やオーナーへのプレゼンを想定して行う、いわば「実践型予行演習」であり、その内容はプレゼンテーションと終了後のフィードバック(アドバイス)に構成が分かれている。
通常、経験豊富な上司または同僚がお客様役で、経験の浅い部下が営業スタッフという設定で行われるが、やり方次第でスキルアップの程度が大きく変わるのだ。特に、ロープレ終了後のフィードバックの仕方には気をつけなければならない。
多くの場合、上司の感覚で部下に対して改善点ばかりを指摘してしまい、良いところを見つけて伸ばすアドバイスが極端に少ないものになる。その結果、スタッフは萎縮してしまい、さらに自信をなくしてしまう。
そもそもロープレとは、スタッフの営業力強化と良い部分を伸ばす「教育」であるのに、自信を喪失させては本末転倒である。そこでフィードバックに活用したいのが、「チェックシート」である。チェックシートは、感覚で伝えてしまいがちなアドバイスを、より定量化して説明するのに役立つ。
つまりプレゼンの内容、話の進め方、振る舞いなど数十種類の項目を、5段階で採点できるようにして、できている部分と足りていないところを数値化する。こうすることによって、褒めることが苦手な上司もシートにしたがってさらりと「とても良い」と伝えることができる。
さらにコメント欄で「良かった点」と「改善点」を書き出して、一つずつ丁寧にアドバイスして理解を促す。ここでのポイントも良い点を「できるだけ多く見つけ出して褒める」ことである。
伝える順序としては、①良い点を褒める→②改善点を伝える→③良い点を褒める、という順序で行う。
最後は褒めて終わるのだ。
誰しも自分自身を否定されることは、あまり気持ちの良いものではないが、このやり方であれば、認めてもらった喜びがある分、素直に改善点を飲み込んでもらうことが可能である。
(筆:今井基次/週刊住宅2016.2.29 掲載)