週刊住宅

公開日:2016年4月11日

第69回 難しい賃料査定

第69回 難しい賃料査定
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図面化で適正な価格差に

賃料査定は、意外に難しい。10人いたら10人とも結果が違うのではないか。よって、たとえば角部屋と中部屋の差や、南向きと東向きでは何%の賃料差が生じるのかとかを決めておいたほうがいい。皆で話し合って、一定の基準を作っておくのだ。(藤澤雅義)

物件の空室要因を考えた時に、まず浮かぶのが「賃料査定が適正かどうか?」という点がある。これを見極めるためには、賃料設定の手法の1つである「スタッキングプラン」をおすすめしたい。スタッキングプランとは、物件の各フロアごと、部屋ごとに面積・間取りと、賃料を立体的に記載したもので(図表)、例えば新築のマンションの価格表などがそれにあたる。

なぜスタッキングプランがおすすめかと言うと、単なる一覧表よりも各部屋の配置や賃料設定の視認性が高く、直感的にイメージがつかみやすいからだ。

 

事例をひとつご紹介したい。

過去にある地方のクライアントである管理会社から、決まらない物件の空室対策という依頼が来たのだ。その物件は全部屋同じ間取り、同じ設備の2階建てアパートだった。1階の部屋は半年間空室が続いているというので、私は「そもそもの賃料査定が間違っているのではないか…?」と思い、まずはアパートのスタッキングプランの作成を管理会社の方と行った。

 

すると驚くべきことに、全部屋同じ賃料設定であることが分かったのだ。「なぜ全ての部屋が同じ賃料設定なのですか?」と聞くと「そりゃあ、全部屋同じ設備仕様で同じ間取りなんだから、賃料も同じでないとおかしいでしょう」と答えが返ってきた。

 

想像して頂きたい…同じ間取り、同じ設備仕様で、全部屋同じ賃料の2階建てアパートがあるとしたら、入居者はどの部屋から申し込みをするだろうか。恐らく、2階の角部屋から決まっていき、2階中部屋・1階角部屋と決まり、一番最後まで残ってしまうのは、1階の中部屋だろうというのは想像に難くない。

 

この賃料設定の場合、2階の角部屋は相対的に安く、反対に1階の中部屋は相対的に高いということが言える。つまり、事例で挙げた2階建てのアパートでは、2階の角部屋と1階の中部屋は相当思い切った賃料差で設定をしなくてはならなかったのだ。

各部屋の賃料設定というのは募集戦略上、非常に重要であり軽視できるものではない。

 

賃料設定時において角部屋は高く、エレベーターがある物件は上層階ほど割高に、1階は比較的抑えめの賃料設定というのが一般的だろう。ただ1階であっても、高齢者向けのバリアフリー仕様であったり、幼児がいる世帯向けやペットが飼える庭付きなどという場合は1階の賃料設定が高い場合もあり、その他にも眺望や日当たりの関係によって賃料差が出てくるだろう。

 

賃料設定のミスを防ぎ、空室期間を短くするためにも、是非スタッキングプランを作成して相対的な賃料設定を考えていただきたい。

(筆:原田亮/週刊住宅2016.04.11 掲載)


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