丁寧な対応で信頼獲得
バブル崩壊後、徐々に下がっていた相続税対象者の率だが、法改正により上昇している。また、都心の地価は上昇しており、当然、課税対象者の数も増えることになる。単なる「賃貸管理会社」から「資産管理会社」への脱皮をするべきタイミングだがきたといえる。(藤澤雅義)
近年、相続関連ビジネスに注目が集まっている。今までは被相続人100人のうち4人ほどしかかかっていなかった相続税だが、2015年1月に行われた税制改正によって、大増税時代を迎え、以前より相続税課税対象とされていた富裕層はさらに税金が高くなるとともに、これまで税金とは無縁であった家庭にまで相続税がかかる可能性があるからだ。一説には100人中8人の倍になると言われている。
また、70歳以上の世帯の保有資産額のうち、「不動産資産」が占める割合は61%とある。このことは、日本における相続対策は不動産対策であることを意味している。
総務省が発表している資料によれば、「持ち家世帯率」を家計主の年齢階級別に見ると、年齢階級が高くなるほど割合も高くなり、65歳以上では8割以上となっている。自らの相続のタイミングが近くなる高齢者ほど、不動産の保有率は高くなっている。
我々賃貸管理会社の一番の顧客は土地持ち資産家で、当然その顧客が相続税課税対象とされる可能性は極めて高いと考えられる。また、一般個人よりも保有資産の大部分を不動産が占めているケースも多く、相続前後で不動産が動く確率も高いと言えるだろう。つまり、不動産を生業とする我々にとっては社会的役割があり、不動産ビジネスになる可能性が高い顧客であるといえる。
しかし、現状では多くの管理会社側の問題点として、顧客の資産全体を把握しておらず、相続や税金等の知識が乏しいことが多いため、一般的には弁護士や税理士等へ任せてしまうことが多い。そうなると管理会社は蚊帳の外に置かれ、その結果、相続対象物件は売却され、管理離れに繋がるといった損失を生んでいないだろうか。
管理会社は「物件を管理するだけの会社」と思われている状態から「相続支援や資産活用提案が出来る会社」と認識されることでビジネスチャンスが広がるといえるだろう。
当社の兄弟会社であるアートアベニューでは、昨年から相続支援について力を入れ、定期的に相続に関するセミナー(写真)を開催している。参加人数はあえて少人数制としており、個別相談の時間もしっかり確保することで丁寧な対応をすることが出来る。相続ビジネスはすぐに実績が出るものではないが、これを手掛けることで管理受託も不動産売買も資産活用にも繋がっていき、不動産オーナーからの信頼を勝ち得ることが出来る。
2030年までに1000兆円の資産が動くと言われている「相続」というマーケット。これからは地主・家主の資産全体まで目を向け、不動産のプロの知識と経験を持つプロパティマネージャーがしっかりと支援していくべきだろう。
(筆:原田亮/週刊住宅2016.05.23 掲載)