街を活性化し賃料上げる
人口減というまったく洒落にならない現実がある。
表1に表したように、我々のターゲットである20歳〜34歳の若者の人口は、今後、だいたい2割から3割減るらしいのだ。日本の全体の人口はざっくりいうと、ここ100年強で3倍になった。そして、今から100年間、逆に同じ速度で減っていって3分の1になるというのだ。この通りになれば、破綻する大家さんが続出することになる。はたして、今から30年ローンで新築アパートを建てていいのか、という根源的な問題に我々は直面している。
今より、厳しい安全率(収入と返済とのバランス)でみないと投資が失敗する可能性が高い。そして、今後は「投資しても大丈夫なエリア(街)」と「投資すると失敗してしまうエリア」に明確に分かれるようになると思う。
全国どこでも平均的に人口が減るわけではない。人気のエリアと不人気のエリアに分かれるのだ。また、それは、東京なら大丈夫、地方ならダメというような単純なものではない。
いままで我々は、入居者に支持される良いアパート・マンションをどう作ろうかと苦心してきた。また、稼働率の悪い物件の稼働率をどう上げるか、その空室対策に取り組んできた。しかし、そのエリアそのものの人気が下がってしまっているのであれば、どうしようもないではないか。
そのエリアの人口が減っていくようでは、アパート経営はとうてい成立し得ない。今後、我々はあるひとつの物件だけの空室対策を考えるのではなく、そのエリア全体のことを考えなければいけない時代になったのではないか。その街の全体の価値を上げていって、子供を産む若い世代が集まってくるようにしなくてはいけない。
米国では、街づくりはアセットマネジメントである、と言われている。街づくりは不動産オーナーが稼ぐ、稼がせることをベースに展開するという概念がある。
街が活性化すれば、自然と不動産オーナーの賃貸料が上がり、不動産そのものの価値が上がっていくことになるのだ。
我々、賃貸管理業者は、不動産オーナーの所有物件の経営に携わってきたが、今後はそのエリアつまり街全体のことに心を砕くときが来たのではないか。それは「タウン・マネジメント(TM)」だ。
「プロパティ・マネジメントからタウン・マネジメントに進化」する時がきたのだ。
(筆:藤澤雅義/週刊住宅2016.05.30 掲載)