満足度高め解約12%減も
「解約」を減らそうと考えるのが、真の管理会社である。仲介会社は解約を内心は歓迎しているかもしれない。商売のネタが増えるわけだから。オーナーにとっては、「解約」が減れば、内装リフォーム代もかからないし、募集にかかるコストもいらない。賃料下落リスクも軽減する。オーナーの側にたって、解約を減らす努力をしてみたい。(藤澤雅義)
賃貸経営をする上で避けて通れない「解約」。
少しでも解約を減らすことができれば、管理会社としての評価にも繋がるはずだが、その解約についての分析を行っているところは多くはないようだ。今回、当社のコールセンターで受けた解約を、理由別や性別で分類したものを表にしてみた。少しでも参考になれば幸いだ。
表は、2015年の1年間に受けた解約のうち、その理由をヒアリングできたもので分析をした結果になる。
注目すべきは、「気分転換」(男性6位、女性5位)と「物件・管理会社・近隣住民の問題」(男性9位、女性8位)の2つだ。これらの理由による解約は、管理運営や物件の手入れがしっかりしていれば防げたかもしれない解約だからだ。
前記2つの理由による解約割合は、男性が10.8%、女性では更に高い13.1%だ。男性では解約9.2件のうち1件、女性では7.6件のうち1件が防げたかもしれない解約ということになる。
特に女性の場合、「物件・管理会社・近隣住民の問題」という、何かに嫌悪感を持ったことを原因とする解約の場合、平均居住年数(あくまで「解約者の平均居住年数」であり、居住者全体の平均ではない)が約1.9年とかなり短くなる(男性は3.0年)。
何かに不満を抱えた場合、女性は解約に直結しやすいと読み取ることができる。
「気分転換」による解約の割合については、男性7.8%、女性8.5%と、女性の方がこの理由による解約割合が高い。年代別で見ると、男性のピークは30代だが、女性は40代がピークとなっている。その女性40代では11.9%、つまり8.4人に1人が「気分転換」を理由に解約をしているという結果だ。
言い換えれば、40代の女性を対象とした場合、気分転換を必要としないほどに入居満足を高めることができれば、解約を約12%減らすことができることになる。
また、解約分析の中で、解約者の平均居住年数を見てみたところ、男性女性ともに、年代が上がるにつれ平均居住年数が長くなることが分かった。
年代が上がれば生活は安定する傾向にあるので、この結果は当然かもしれないが、ここまで綺麗なものは予想していなかった。そして、各年代とも、男性より女性の方が平均居住年数が長いとの結果になったことも興味深い。
このように、一口に解約といっても、様々な角度から分析をすれば見えてくるものも多く、それらを解約抑止やリーシング戦略に活かしていければ、オーナーからの信頼は一層増すのではないだろうか。
(筆:先原秀和/週刊住宅2016.06.20 掲載)