最初に改善点を提案
管理受託時には、物件の評価を冷静に行い、不動産オーナーに対して言うべきことを言う姿勢が求められるところだが、管理を任せてもらいたい一心から言葉が鈍り、妙なお世辞ばかり言ってしまったりする。本来は、最初が肝心で、またオーナーも前向きな指摘なら歓迎なのだから、ひるむことなくお話すべきである。(藤澤雅義)
管理の受託は、管理会社にとって誇らしい瞬間であり、新たな仕事のスタートでもある。今回はこの管理受託の際に、本来はするべきなのにあまり意識されずに流される、または見逃されるといった事柄について考えてみたい。
現地確認の中で見落としがちなのは、リーシング阻害要因だ。例えば、雑草が伸び放題、建物のあちこちで蜘蛛の巣が目立つ、掲示物が乱雑に貼られていて見苦しい、共用部に私物が無造作に置かれているなど、入居希望者に悪い印象を与えるようなものはないか?という視点だ。
普段であれば要改善事項としてチェック対象になるものも、管理受託時だとなぜか「まあ、いいか…」とスルーされたりする。しかし、それでは思うように空室が決まらず、結果的にオーナーの信頼を早々に失うことにもなりかねない。
オーナーからのヒアリングでは、「オーナーの目標や期待」、「物件の歴史や修繕履歴」、「ローンや固都税等の支出に関する情報」などが逃しやすい項目だ。
近い将来に売却を考えている、長期的な安定収入を望んでいる等、オーナーの目標によって管理方針や提案の内容にも違いが生じてくるし、そもそもオーナーが賃貸事業で何を期待しているのかは、管理会社としては共有しておくべきだろう。
過去の事故やトラブルの有無といった物件の歴史、建物設備の修繕履歴は、管理上で必要な情報だと思うが、意外と多くの管理会社が無関心だったりする。ローンや固都税などの支出に関する情報は、必須項目ではないかもしれない。
しかし、オーナーの経営パートナーとしての役割を担うのであれば、賃貸事業に大きな影響があるこれらの情報は把握しておきたい。
そして、管理受託時にこそ忘れないでもらいたいのが、オーナーの収益を向上するようなアイディアや改善点を探そうという意識や、様々な提案をしようとする姿勢だ。
管理開始時は、オーナーが管理会社を品定めしている時期でもあり、色々なヒアリングや確認、改善提案をここですることで、一味違う管理会社であることを印象付け易い。
また、時期を逸して、後に最初からの問題点を指摘しても「なぜ今さら…」と言われてしまうだけだ。オーナーとの関係がスタートするこの管理受託時こそ、オーナーと管理会社とのこれからの関係性を決定付ける分岐点なのではないだろうか。
ここで、「この会社は一味違う!」と思ってもらえれば、オーナーとの信頼関係は自然と良い方向に向かっていくはずだ。
(筆:先原秀和/週刊住宅2016.08.15 掲載)