物件巡回や建物調査で活用
AI(人工知能)は、従来の予想を超えるスピードで進化しているらしい。今年3月、グーグルが開発した「アルファ碁」が世界最強の棋士と言われる韓国のイ・セドルを破ったのは記憶に新しい。
開発の肝は、深層学習(ディープ・ラーニング)と呼ばれる、人間に指示されるのではなく「自分で学習する」機能だ。アルファ碁では、「人の勘」に近い能力が発揮されたという。世界は急激に進化している。(藤澤雅義)
この1 ~2年で音声認識・音声入力(以下「音声サービス」という)の精度が各段に進化している。スマホ等でsiriに話しかけて、端末やアプリの操作や文字入力をしたことがある人も多いのではないだろうか。
今年の7月、Googleが音声サービスの技術を一般でも利用できるように「google cloud speech API」のベータ版を公開したこともあり、今後は音声による入力や物を操作するといったことが一層身近に、そして高精度になっていきそうだ。
気恥ずかしい気持ちもあり、遊び以外で音声での操作や入力をすることはほとんど無かったのだが、精度が上がったとの話を聞いて試したところ、ビジネス使用にも十分耐えられるレベルになっていて驚かされた。
この原稿も音声で入力をしてから手で修正するという流れで書いてみたのだが、結論から言えば音声入力に十分な手ごたえを感じた。アイディアや思っていることを、まず大まかにテキスト化したい時などは、むしろ手入力よりも適しているのかもしれない。
では、賃貸管理業務の中で音声入力が活用できるのはどのような場面だろうか。
例えば、物件の巡回、メンテナンス、インスペクション、退去立ち合いといった場面。現場で動きながら作業をするような時には、音声入力が向いている。
発見した建物設備の不具合、改善すべき項目や内容、閃いたアイディアなどを喋るだけで入力できるので効率的だし、現場で撮影した写真にも撮影と同時にコメントが入れられる。音声入力の良い点の1つが、このように立ちながら動きながらの作業と同時進行で入力ができるということだ。
オーナーや入居者との面談時、会議の議事録作成時にも活用できそうだ。高性能な音声認識・入力サービスでは、複数人での会話もかなりの精度でテキスト変換してくれる。顧客との会話や会議の議事録を手入力で記録していくよりもはるかに効率的だし、会話に集中もできる。
siriやgoogle音声認識、PCでユーザーの多い「ドラゴンスピーチ」や「AmiVoice」あたりが音声サービスの有名どころだが、前述したgoogleの技術公開なども後押しして、今後は選択肢も更に広がっていくだろう。
最近のIT系の技術進化にはよく驚かされるのだが、我々不動産業界の現場では、このような技術革新の波にのれず、アナログな方法に固執してしまうことも少なくない。
新しい技術を「近寄り難い未知のもの」ではなく、「頼もしい味方」としてとらえて、是非業務で上手く利用して頂きたい。
(筆:先原秀和/週刊住宅2016.09.12 掲載)