がらんどうの部屋を見せるより、ソファやテーブル&チェア、ベッドやデスクと言った家具を、それもハイセンスなコーディネイトをしてあればなおのこと、その部屋は輝いて見える。分譲マンションのモデルルームががらんどうで、何も置いていなかったら当然売れ行きは鈍ることだろう。それらのノウハウをもっと個人の物件にも応用しようという動きがある。(藤澤雅義)
「ホームステージング」に注目が集まっている。
ホームステージングとは、売却予定の中古物件に家具や小物などのトータルコーディネイトされたインテリアを設置することによって、物件をより魅力的に演出するサービスだ。内見者の購買意欲を喚起し、物件をより早く、より高値で売却することを目的としている。
ホームステージングは1970年代にアメリカで発祥し、その後カナダやヨーロッパに広まった。不動産流通に占める中古物件の割合が高いこれらの諸外国では、物件を売却する際にホームステージングを行うことが一般的だ。
写真は今年1月にアメリカの不動産を視察した時のもので、この物件は写真のようにホームステージングされていた。同じ建物には家具のない空室の物件もあったが、見比べると家具のない空室は殺風景に感じ、ホームステージングしている物件はとても魅力的に見えた。
最近では日本においても、中古不動産流通の活性化に伴い、ホームステージングやホームインスペクションが認知され始めた。ただ、現時点では国内でホームステージングを専門に行う業者はまだ少なく、一般的な相場も確立していない。
家具を設置しないコンサルティングのみで数万円のものから、トータルコーディネイトから家具の設置撤去までのフルパッケージで数十万円を超えるものまで様々なプランがあるようだ。
ホームステージングすることによって、それまでなかなか売れなかった物件が早期に売却できたり、値引きをせずに希望価格で売却できたという事例もある。数十万円の費用と聞くと一見高い印象を受けるかもしれないが、100万円単位の値引きも珍しくない中古物件の売買においては、十分に検討できるのではないだろうか。
今年3月に発表された国土交通省の住生活基本計画のポイントのひとつには、既存住宅流通・リフォームの市場規模を倍増し20兆円市場にするというものがある。こういった背景もあり中古不動産の売買を取り扱う機会は益々増えることだろう。これに伴い、ホームステージング市場も拡大すると予測されている。
当社においてもオーナーが所有する賃貸物件を売却したいという相談が増えている。その際、賃貸物件も同じように、空室の部屋はお洒落な家具等を置くことで、物件のイメージアップに繋がればと思う。
また、賃貸業務の集客活動においても応用できるものだ。コストの問題もあるが、理屈は同じである。
(筆:片平智也/週刊住宅2016.10.03 掲載)