暗証番号変えトラブル防止
昔は、入居者もおおらかなもので、郵便受けにカギなど付けていなかった。いまは、ダイヤル錠が一般的だが、たしかに玄関のカギと違って、退去ごとに暗証番号を変えたりはしていない。これからは、鍵交換も必要かもしれない。(藤澤雅義)
多くの集合住宅に設置されているダイヤル錠タイプのメールボックス。
もうずいぶん前から、このタイプのメールボックスが集合住宅では最も使われ、現在の新築建物においても同様である。「右へ2回5 左へ3」といった、各部屋のメールボックスごとに異なる暗証番号が設定されている。
賃貸物件では入居者が入れ替わる度に、玄関ドアの鍵は交換することは多いが、このメールボックスの暗証番号は、ダイヤル錠が壊れない限りはずっと同じ暗証番号となる。
最近、特に1人暮らしの女性の入居者から「誰かに勝手にメールボックスを開けられている」「郵便物が盗まれている」といった相談が増えている。郵便物には個人情報が記載されているものも多い。
また、最近はインターネットで買い物をする人が増えており、本など、厚みが一定以下の商品はメール便で発送され、不在時でもメールボックスに届く。宅配業者が荷物配送時に受取人が留守の場合、宅配ボックスが設置されている集合住宅では、暗証番号が記入された不在票がメールボックスに投函される。大事なものを受け取るボックスにも関わらす、ずいぶんと無防備な設備である。
このダイヤル錠だが、暗証番号がわからない場合でも、一定のパターンでダイヤルを何度か回していくと、開錠できてしまうことは、不動産会社のスタッフや業者の間ではよく知られているだろう。最近では、ダイヤル錠の暗証番号が自由に変えられる可変式のメールボックスも販売されているが、まだまだ普及率は低い。
2014年10月、Amazon.co.jpが、日本郵便株式会社と住環境メーカーの株式会社ナスタと協力して開発した次世代ポストが発表された。主な目的は配送業者の再配達の削減のために開発されたメールボックスだが、可変式のダイヤル錠で、盗難配慮機構も備わっている。こういった集合ポストが今後はどんどん普及することに期待したい。
現状、賃貸マンション・アパートに設置されているダイヤル錠タイプのメールボックスはそのままでは暗証番号が変えられないものがほとんどである。
しかし、ダイヤル錠は3,000円程度で実は交換が可能なので、玄関ドアの鍵と同様に、契約時にダイヤル錠の交換の有無を尋ね、希望者についてはダイヤル錠を交換してはどうだろうか。
また、入居者自身も個人情報が多く記載されている携帯電話やカードの明細等を受け取る際には、WEB明細を利用するなどの自衛をしてもらうよう、促すことも必要だ。
(筆:遠藤広美/週刊住宅2016.10.10 掲載)