部下への愛情指導が大事
先日、当社ではマネージャークラスの人だけで研修を行った。必要性を感じ、コンサルタントの方と一緒に考えて作ったオリジナルの研修だ。前半は各自でいくつかの問題に答えてもらう、後半はワークショップ形式で皆で考えていくものだ。
問題は明確な正解のない、しかし現実には起こりうるもので、その難しい判断やマネージャーとしての対応を問うものである。
たとえばこういう問題だ。
「あなたは課長です。部下の管理している物件のオーナーから部下に対して依頼がありました。いま、頼んでいる大手エレベータメンテナンス会社の契約を破棄して、オーナーの親戚が勤めている、事故が多いことで有名なA社というエレベータメンテナンス会社に切り替えてほしいとのことです。年間のコストも確かにかなり下がるようです。
部下は、いったんは断りましたが、そのオーナーがVIPオーナーでもあり、言うことを聞かないと管理を全部引き上げると脅かされて、課長に相談なく、メンテを切り替えてしまいました。
あなたは部下にどう指導しますか? 」
というものだ。
紋切り型の正論でもいけないし、オーナー迎合でもいけない、現実に起こりうるリスクを想定し、どうオーナーを説得できるか(もしくは、できたか)がカギになる。
そして、部下に対する愛情を持った指導の仕方が大事である。
問題を作りながら思うことは、マネージャーすなわち「人の上に立つ」ということは、全人格的な能力が必要とされるなあ、ということだ。
自分も含めて精進しなくてはいけないとつくづく思う。
知識・経験、そして情報を持っているか、それらに基づいて冷静な判断ができるか、ものごとの本質を見抜けるか、「気づける」人であるか、
そもそも正直であり、誠実であり、勤勉な人なのか、フェアな精神でものごとにあたれるか、感情的にならず、私利私欲に走らず、大きな気持ちを持っていて、努力して成長する姿勢があり、はたして部下のことを真摯に考え愛情を注げる人なのか。
プレーヤーとして優秀、つまり営業であれば営業実績は良かったり、また内勤事務でテキパキと処理能力が高く良いアイデアを出すことができるとしても、「マネジメント能力」はまったくの別物である。
いくら指導の指摘内容そのものが正解だとしても、人格的に尊敬されていなかったら、部下はまったく耳を貸さないだろうから。
(筆:藤澤雅義/週刊住宅2016.11.14 掲載)