コスト考慮し管理料設定
賃貸管理会社は管理戸数を増やすことに情熱を燃やす。当然のことだが、いつのまにか数が取れればいい、というふうになってしまうことがある。結果、一棟ごとの収益をみると赤字になっていることがあるのだ。赤字になるくらいなら受託しないほうがいい。「一棟ごとの収益」にもっと注目すべきだ。(藤澤雅義)
管理受託営業の際、「ライバル社も営業に来ているし、オーナーからの値下げ要求も厳しいので、管理料率を下げて契約をした。総戸数も多い大型物件だし、まあいいだろう」、しかしフタを開けてみれば、家賃は安く、築も古くて修繕などの現地対応がやたらと発生する。空室はなかなか決まらないし、なにせ会社から遠いので現地への移動に時間がかかる。結局大赤字だ…。
こんなことは無いだろうか?
我々管理会社の主たる収入源である管理料は、家賃の数%となっていることが多い。全国的な平均相場では5%といったところだろうか。つまり、家賃が高ければ管理料も増え、低ければ減る。そして、管理業務にかかるコストは、物件の状態、戸数、築年数、会社からの距離といったものに影響を受ける。
つまり、収入は「家賃」に連動するが、コストは別の要素に左右されるのだ。
考えて見ればおかしな話ではないだろうか。
世の中の多くの商品やサービスは、それらを提供する側の原価や経費に適正利益を乗せて販売価格が決まるものだ。同じ考え方を管理料に当てはめると、「この物件は築が古くて状態も悪いので、建物設備の故障対応などで手間がかかる。会社からも遠いので、移動コストや人件費も嵩む。戸数が少ないのでスケールメリットも効かない。それらを考慮した管理業務コストはいくらかかる。つまり、管理料としてこれくらいの金額以上でこの物件は管理受託をするべきだ」となる。
しかし、残念ながら我々管理会社の多くでは、社内で一律に決められた家賃の○%という基準となる管理料率があり、盲目的にそれに準ずる条件で管理受託できれば、物件の内容に関わらず「管理受託おめでとう!」という雰囲気になってしまう。本当にその物件の管理で利益が見込めるのかといった意識は薄いのだ。
結果として、赤字になるような値引きを戸数の多さにつられてしてしまったりもする。運悪くそういった管理受託が続けば、管理戸数は増えているのに会社の収益は悪化していくという事態にもなりかねない。
そういったことを避けるためにも、物件内容に関わらず管理料率は一律というのではなく、「家賃帯」や「戸数(規模)」、「築年数」、「物件状態」など、管理業務の収支に影響を与える要素を考慮して管理料を設定してみてはどうだろうか。
そのモノサシは、赤字条件での管理受託を避けるだけでなく、会社にとって良い物件の管理受託促進にもきっと一役買ってくれるはずだ。
(筆:先原秀和/週刊住宅2016.11.21 掲載)