公平性保ち個々の成長促す
人事評価の基準がない場合、スタッフは何をしたら、どうあれば出世して給料が上がるのかが分からない。それはとにかく明文化して全員に知らしめるべきだ。上の人が考えている出世させたい人のイメージと、スタッフのものがずれていることがよくあるのだ。そして、人は自分を過大評価しがちだ。(藤澤雅義)
先日、半期に一度の人事評価会議を終えた。
営業社員が中心の会社であれば「売上げそのものが評価」になるが、賃貸管理会社は営業社員以外の割合が多く、全体を通じて透明性のある公平な評価が求められる。
以前は上長からの報告をヒアリングして定性評価としていたが、現在は各個人が「ミッション」と言われる目標を半期ごとに設定して、それに対して達成できたかを測る定量評価も判断に加えている。ミッションは通常、社員ごとに3〜4個を取り決める。
種類は下記の通りに分かれている。
①日常の与えられている業務の達成度を測る「日常ミッション」
②業務改善提案をして、どれだけ実行できたかを測る「改善ミッション」
③個人のスキルアップを測る「成長ミッション」
④勤務に対する姿勢、積極性、人間性などを測る「基礎要件」
に分かれている。
役職者に関しては、
⑤部下の日常ミッション達成度を測る「マネジメントミッション」が与えられている。
半期ごとにミッションの達成度をマネージャーが面談して、人事評価会議の場でプレゼンし、社員全員のミッションを等級ごとに横並びで測っていく。
実に2日間、朝から晩まで、一人一人のミッションとじっくり向き合って評価を進めていくのだが、ここで重要なのがミッションの立て方である。ミッションは社員とその上長にあたるマネージャーとで、次の半期の目標を立てながら取り決めていくのだが、優しいミッションを設定するマネージャーもいれば、厳しいミッションを与えるものもいる。
最近でこそようやく落ち着いてきたが、以前は相場観にバラつきが大きく、全体横並びで見たときに同じ等級であってもレベル感の違いが大きかった。
そもそもミッション制度とは、各社員の評価をすることはもちろんであるが、個々の成長への願いが込められている。本来の潜在能力はあるが、一向に日の目を見ない社員などは、そもそもマネージャーが社員のスキルを引き上げていない可能性もある。
マネージャーの役割は、ミッションを立てて、それを達成できるようにコーチングすることで、課員を少しずつスキルアップさせていくことである。
全社員がミッションを持つことで、与えられた仕事をこなしているのかどうか、透明性のある評価が可能になり、伸びていく社員とそうでない社員の公平性が保てるようになったのである。
評価の透明性ももちろんだが、それ以上に「マネジメントスキル」がよく見えるようになったことは、大きな副産物である。
(筆:今井基次/週刊住宅2016.11.28 掲載)