週刊住宅

公開日:2016年12月5日

第101回 民泊市場参入への課題

第101回 民泊市場参入への課題
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成否は立地と運営力

今年を振り返ったとき、キーワードとなった言葉は、「AI(人工知能)」、「VR(仮想現実)」、「マイナス金利」、「EU離脱」、「トランプ現象」などがあるが、「民泊」もそのひとつだろう。

訪日客の増加とともに、ホテルが足りない、という現象がおき、俄然、賃貸住宅の空室対策として注目を浴びたが・・・。(藤澤雅義)

 

インバウンド(海外からの旅行客)は、ここ5年で2.3倍も増えた。政府の「観光立国化」という積極姿勢もあり、政府観光局によると今年の訪日外国人は10月末時点で2000万人を超えた。インバウンド市場が大きく発展し、民泊に注目が集まる一方、従来の不動産賃貸市場は年々縮小するという。

今まさに、不動産賃貸業界にはパラダイムシフトが起きている。

そんな中、早々と民泊に参入を果たしたプレーヤーもいるが、多くはまだ二の足を踏んでいるのではないだろうか。まだまだ不透明な民泊とどのように向き合っていくべきか、果たして民泊市場は今後も儲かるのだろうか。

 

知人のある不動産オーナーが民泊運用をしている都内のマンションの1室は、今年1年、稼働率70~80%の実績だそうだ。年間の宿泊費収入は約280万円(12月予約を含む)と、通常の賃貸住宅として貸す場合(相場家賃月12万円、年間144万円)に比べ、約2倍の収入だ。特に花見シーズンの4月や年末は繁忙期で、家賃の3倍を超える宿泊費収入がある。

 

しかし、運営経費が約40%かかるため、実収入は170万円程度という。成否を分けるのは、観光客のニーズを満たす「立地」と、24時間対応や外国語対応といった「運営力」の差のようだ。

このオーナーは運営の全てをアウトソーシングしていることもあって運営経費率が高いが、自分に運営力があれば、手残りは多くなる。ひところに比べると、民泊の供給量が増えたこともあって、皆が儲かる、という状況ではないようだ。

 

今後、気になるのは法整備近隣トラブルだ。

現状の民泊のほとんどは許可を受けない「ヤミ民泊」で、特区民泊(東京都大田区・大阪)や簡易宿所許可を受けているものは僅かだ。

来年には「民泊新法」もできるので、許可を受けて民泊運用をするには①特区、②簡易宿所、③新法、のいずれかによる許可が必要だ。それぞれに制限や違いがあるので、許可申請には少々知識が必要になる。

 

近隣トラブル対策にはハード面とソフト面の対策があり、ハード面では、入口や階層を民泊と通常の賃貸住宅で分けたり、ソフトでは、宿泊者にハウスルールを守ってもらうための工夫などがある。不透明な民泊市場ではあるが、新しいビジネスや価値はこういった変化の中から生まれるものだ。

 

人口減少社会の中、2020年に4000万人、2030年には6000万人の訪日外国人を目指す政府の意気込みには強いものを感じる。こういった背景を踏まえ、来年以降の事業戦略を考えていく必要があるだろう。

(筆:片平智也/週刊住宅2016.12.05 掲載)


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