週刊住宅

公開日:2017年1月16日

第106回 地方独自のブランディング戦略

第106回 地方独自のブランディング戦略
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キャラクター浸透で業績向上

地方のマーケットを観察していると、東京よりずっとやりやすそうだなと思うことが正直ある。差別化すれば、すぐ目立てそうなのだ。もちろん、「隣の芝生」ということもあるだろう。当然、その逆に首都圏は、市場規模が大きいし賃料も高いという利点がある。要は、どちらもやりようなのだ。(藤澤雅義)

差別化・ブランディング戦略について、地方のクライアントと会話をしていると「それは東京だからできるんでしょう」とネガティブなことを言われることが少なくない。しかし、その東京にいる者としては「地方だからこそできることもあるでしょう」と思うのだ。

今回は地方でのブランディング戦略を成功させたクライアントの事例を紹介したい。

 

そのクライアントが社を構えるのは、総人口約10万人の地方都市だ。

地域密着型の管理を目指す同社がまず行ったことは、企業イメージを構築するためのマスコットキャラクターを制作することだった。インパクト重視のキャラクターデザインも社員のお手製。そのキャラクターを、ホームページや会社パンフレットはもちろん、物件の募集看板や街の自動販売機にも掲載し、大々的な社名・企業イメージの浸透作戦を図ったのだ。

 

街を歩けば、いたるところに特徴的なキャラクターが現れる。住人たちからは最初のうちこそ「何アレ?気持ち悪い!」と言われたが、キャラクターは徐々に街の風景に溶け込んでいき、今では市のオフィシャルゆるキャラより認知度が高まってしまった。

キャラクターの支持は主に若者を中心に拡大しているらしく、同社の調査によれば、エリア内の中高生のキャラクター認識率はほぼ100%

 

おかげで、作成したLINEスタンプのダウンロードも好調だそうだ。仲介店舗でもそのLINEスタンプを成約者にプレゼントし、彼らにスタンプを利用してもらうことで更なる社名認知度向上を図っている。

▲ 好評なLINEスタンプ

 

そうしたキャラクター戦略の結果、管理受託数の伸び率は118%にまで上昇した。積極的な管理受託営業をしていないことを考えると、2割近い増加を叶えたブランディングの効果は大きい。家主からの評判も良く、またエリアでの企業認知が進んだことで入居希望者の集客数も増えた。

仲介件数はブランディング以前と比較すると120%増で、周辺物件の平均稼働率は75%程度だが、同社の管理物件の稼働率は90%以上を維持している。

 

いかがだろうか。

看板などのオフラインの戦略と、LINE等のオンラインの戦略とが見事に相乗効果を発揮した事例だが、首都圏で同じような戦略をとることは難しい。首都圏では、競合企業の数も違えば、設置できる看板や広告の数も違う。広告掲載費も高額になる。オフラインで目立つことに高いコストがかかるのだ。同じようにキャラクターを作り、企業名浸透を目指したとしても、エリア戦略に一体どれほどのコストと人員、時間がかかるのか皆目検討もつかない。

これはまさしく「地方だからできること」のひとつだろう。

 

「東京とは違うから」と嘆く前に、地方でなくては叶えられない面白いことに着目したほうが、エリアに与えられるインパクトもずっと大きい。

ちなみに同社の場合、LINEスタンプ第二弾や書籍販売のほか、地域の子どもの金融リテラシーを高める映画の制作、さらには23メートル超のキャラクター石像を建てる構想まであるようだ。

(筆:原田亮/週刊住宅2017.01.16 掲載)


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