週刊住宅

公開日:2017年1月30日

第108回 働き方に選択肢

第108回 働き方に選択肢
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留学期間を休職扱いに

「会社」と「従業員」との関係は、働き方において今後変化していくのではないか。兼業可、時短勤務、在宅勤務等バリエーションがあっていいのでは。

当社も新たな仕組みを作っていこうと思う。(藤澤雅義)

 

経済新聞を見ると、「働き方」をテーマにした記事が毎日のように目に飛び込んでくる。労働者人口が減る中で企業は、潜在的な労働力の確保、在宅ワーク、フレキシブルな労働時間など、多様化する労働ニーズに対応することが問われる時代へと変化している。離職率が高いと言われる不動産業界も、抜本的に「働き方」そのものを見直す機会なのかもしれない。

 

先日、ある社員が「会社を退職したい」と言ってきた。まだ入社して数年足らずの若い社員だ。退職理由を聞いて見ると、海外で語学を学び、見知らぬ土地での生活を体験してみたいと言う。考えてみれば、以前から相談は受けていたが、年始早々の話で戸惑った。さらに聞けば、『今だからできることをやって、将来自分だけの武器を持てるようになりたい』と言う。

確かに学生時代に親の金で行かせてもらう「海外生活」と、社会人経験を持った上で自分自身の金で行く「海外生活」とは、全く視野が異なり、吸収できる価値が違うだろう。

 

私自身も海外生活の経験があるため、個人的には海外で語学や不動産のことを学び、自分自身のスキルを高め成長して欲しいと思う反面、会社としては現実問題、労働力が不足してしまう。それに、せっかくゼロから育ててきた社員を退職させては、今までの教育コストが無駄になる。それらをなんとか解消できないかと考えた。

 

そこで今回、新たに「おとなチャレンジ」という制度を会社に設けてもらうことにした。この制度は、ある一定期間を休職扱いとし、その間「自分育成」に時間を使って会社に復職ができるというものである。

 

会社としては、今すぐに退職となれば、これまで積み上げてきた教育投資が無になってしまうが、「おとなチャレンジ」を利用して成長して戻ってくれれば、将来、より一層会社内で活躍が期待できる。

当然、ゼロから見知らぬ人を入社させるリスクよりも、よく知った社員が戻ってくれることの方がコストもかからずリスクはない。さらに、このような制度を持つことで、若年層をターゲットにした採用にも、他社と差別化しやすくアピールポイントになるだろう。

 

本人はと言えば、通常、語学留学などで海外に行った場合、日本に戻れば「住所不定・無職」になるところだが、休職扱いとなれば復帰できる職場があり、さらに戻り先は不動産管理会社であるから、住居についての入居審査も問題ないはず(笑)。

それにより、帰国をするときの不安を軽減することができ、思い切って見聞を広げる活動に専念することができる。

 

不動産の仕事は、地域に根付いたものが多く、なかなかグローバルな視野で物事を見る機会が少ない。だからこそ、若い時から海外に出て見聞を広げることは、「ものごと全体を見る力」を養い、将来にとっても貴重な武器になるはずだ。

 

「働き方」は、社員の個性を伸ばし生き生きと活躍できるように、企業が柔軟性を持つことで生まれるのだと感じた。

(筆:今井基次/週刊住宅2017.01.30 掲載)


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