コンサルタントコラム

公開日:2022年9月9日

【コラム】賃貸管理会社が知りたい投資分析。「NOI率」で一歩踏み込んだオーナー提案を

【コラム】賃貸管理会社が知りたい投資分析。「NOI率」で一歩踏み込んだオーナー提案を
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賃貸管理の可能性に、挑む。

当コラムでは、「賃貸管理ビジネスを成功に導くためのポイント」を、オーナーズエージェントのコンサルタントたちが分かりやすく解説します。

今回のテーマは「NOI(営業純収益)率」です。

投資分析でオーナーの「信頼」を勝ち取る

堅実な投資判断に役立つNOIとは?

こんにちは、コンサルタントの高橋です。
投資の判断基準に大きく影響する指標が「利回り」です。不動産投資も同様で、不動産の場合は満室賃料を不動産取得価格で割った「表面利回り」が一般的な指標とされています。

ただ、表のキャッシュフローツリーを見ても分かるとおり、表面利回りはあくまで満室賃料収入を基準としているため、空室損失や運営費といった支出を加味していません。

例えば、地域や築年数によって空室率は異なるでしょうし、物件の構造によって建物の維持管理費も異なります。表面利回りのみで投資判断をされた投資家オーナーの中には、実際に賃貸経営をしてみて、予想以上に収支状況が厳しいと感じる方もいらっしゃるようです。

そんな時、一歩踏み込んだ指標として重宝するのが、物件の収益力を表す「NOI利回り」です。NOI利回りは、表1のNOI(営業純収益)を不動産の取得価格で割ることで算出されます。

しかし、空室損失の見込みはざっと出せるとしても、運営費の見込みを項目ごとに都度計算してNOIを導くとなると、手間も多くて非現実的。そこで活用したいのが「NOI率」という指標です。

「率」を把握、NOI利回りも速算可能に

NOI率とは、満室賃料を100%としたときのNOIの割合を表すもので、仮に空室損失が5%、運営費が20%であれば、NOI率は75%となります。

表面利回りが8%の物件なら、表面利回り8%×NOI率75%で、NOI利回りは6%です。このようにNOI率は、基準となる率さえ覚えておけば容易にNOI利回りを算出できる便利な数字です。

「でも、NOI率ってどこでわかるの?」
「国交省のデータにあったかな?」

と声が聞こえてきそうですが、残念ながら現時点では国による調査はされていません。

唯一存在するのが、IREM JAPANの主導で調査されている「全国賃貸住宅実態調査(NOI率調査)」です。そこに、地域別・物件種類別など細かく区分けされたNOI率が公表されています。

例えば、2021年調査における東京都内の一棟物件・非木造・築年数10~20年のNOI率は、平均78.36%。エリアの類似物件がどれだけの収益力を持っているのか、ざっと知るにはうってつけの調査資料です。

では、管理会社としてNOI率を活用する場面を具体的に考えてみましょう。

管理会社こそ購入判断のアドバイザーに

初めて物件を購入し、賃貸経営の実態を理解された投資家オーナーの中には、これまでの経験を踏まえ、2棟目以降の買い増しを慎重に進める傾向にある方がいます。物件の販売(または仲介)会社の意見だけではなく、第三者目線として管理会社の意見を求めるオーナーも少なくありません。

そんな時、管理会社として入居者需要の良し悪しだけでなく、NOI率をもとに物件の収益力まで算出できると、アドバイスを受けたオーナーの心象も大きく変わります。頼もしい管理会社に出会えたと感じてもらえれば相談を受ける機会も増え、受託件数も増えていくでしょう。

ただ、NOI率から算出されるのは、あくまで物件単体の収益力の概算です。欲を言えば、他社とは一味違った分析提案をフックに、オーナーの背景(保有資産の状況、ローン条件、投資目的など)もヒアリングして賃貸経営のアドバイスができることが望ましいですね。

オーナーの心を掴む、NOI率で収支改善提案

物件購入時は慎重でも、いざ運営が始まるとオーナーも管理会社も収支を細かく分析をすることがなくなってしまいます。空室を決めることや老朽化設備の修繕など、目の前にある課題をどうするかで手一杯に。

そんな時、管理会社からNOI率を使った収支改善提案をしてみてはいかがでしょう。

当該物件のNOI率とエリアの類似物件のNOI率とを比較し、その差異を埋めるための改善提案を行なうのです。空室損失を減らすための空室対策はもちろん、運営費を下げるための抜本的修繕の提案や、敷地にシェアサイクルや入居者用物置を導入して新規に売上をつくる、という提案も立派なNOI率を上げる提案です。

また、リノベーション提案でも「家賃が◯◯円上がりますよ」という説明だけでなく、工事後の空室率や家賃減額率の減少、建物維持管理費の削減など、5年・10年と中長期的な視点においてNOI率が上昇することを提言できると、よりオーナーの理解も得やすくなります。

残念ながら、現時点で公式なNOI率を把握できるのは一部地域に限られます。しかし、NOI率の算出は手間こそかかれども難しいわけではありません。自エリアのNOI率をおおまかにでも把握し、日頃の提案に意識的に使うことができれば、それが他社との差別化を生む強力な武器となる可能性もあります。まずは自社管理物件全体のNOI率の算出に挑戦し、独自の投資判断基準をつくってみても面白いかもしれませんね。


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