賃貸管理の可能性に、挑む。
当コラムでは、「賃貸管理ビジネスを成功に導くためのポイント」を、オーナーズエージェントのコンサルタントたちが分かりやすく解説します。
今回のテーマは「工事売上の拡大手法」です。
仕組みと意識の両輪を整えるには
工事売上を伸ばす第一歩は「何をどれだけやるか」
こんにちは、コンサルタントの安藤です。
私自身が現場管理部署を統括していたこともあり、管理会社の方からはよく「提案工事の売上を伸ばしたいがどうすればよいか」とご相談いただきます。
詳しく話を伺ってみると、売上目標こそ掲げているものの、達成に向けてどんな取り組みをするかは各社員の経験や感覚に任せており、結果としてメンバーの成果にばらつきが生まれ、全体の数字が目標に届かない…そんなケースが少なくないようです。
このような状況には、私はいつも「逆算」の考え方を取り入れてみるようお伝えしています。なぜなら、提案工事の売上を伸ばす第一歩は、個々人の「何をどれだけやるか」を明確にすることだからです。
リーシングKPI分析を工事提案にも
主戦場がWEBに移るに伴い、近年のリーシングの現場では反響数、内見数、成約数など、募集から成約までの過程を数字で捉えることが容易になりました。また、これらの数字を客観的に分析し、空室解消に役立てる管理会社も増えてきた印象です。
客観的な分析とは、例えば、1件の成約には何件の内見が必要で、その内見数を達成するには何件の反響が必要なのか、というKPI分析です。KPIツリーを作成して成約までの流れを分解し、反響数に問題はないか、反響から内見の割合は適切か、といった具合に、各プロセスの課題の有無も検証できます。
しかし、このような「成果から逆算」する考え方をリーシングに活かしていながら、提案工事には取り入れていない会社が意外に多いと感じます。KPI分析は、もちろん提案工事にもそのまま応用可能です。弊社の事例をご紹介しましょう。
<分析事例>

図1は、提案工事が得意な弊社社員の半期実績をもとに作成したKPIツリーです。この社員は半期で現地巡回を80件実施し、そのうち50%が提案につながり、オーナー面談は40件。ここでの商談成約率は50%で、20件が受注となっていました。
つまり、1件の受注には2件のオーナー面談が、その2件の面談には4件の現地巡回が必要ということです。この構造が見えれば、目標から逆算して行動量を設計することが可能になります。
例えば、提案工事の粗利単価が10万円、半期の粗利目標が150万円の場合、先述の“構造”が見えない状態では「受注が15件必要」までしか分かりませんが、構造が見えていれば「受注15件=面談30件=巡回60件」と逆算できます(図2)。結果、目標達成のための具体的な行動目標を各社員に提示できるようになるのです。

また、このようなベンチマークとなる数字の設定は、各人の行動のどこに課題があるのかを正確に把握することを可能にします。
例えば、巡回数は十分あるのに面談につながらない社員は、提案の切り口や現場での気づきに課題があるのかもしれません。また、面談数に対して受注が足りない社員は、提案内容やクロージングの質に改善の余地があると考えられます。
行動量の目標を立てると、数字が伸び悩んでいる社員に「もっと巡回を増やそう」「面談数を増やせ」と指導してしまいがちですが、各人の実績とベンチマークとをしっかり比較できれば、プロセスのどこかに潜んでいる“質”の課題を発見できます。
だからこそ、提案工事においても成果から逆算し、行動を設計・管理していくことが重要なのです。
データ前提の改善会議で当事者意識を育む
しかし、やるべき数がはっきりしていても、実際に動くのは案外難しいものです。次から次へと降ってくる修繕や入居者対応を理由に、行動目標を達成できない社員も多いのではないでしょうか。
忙しい中でも行動数を担保し、成約率を高めていくには、やはり個人の「当事者意識」が非常に重要です。これを育てるのは容易ではありませんが、有効な方法の一つが、チーム全員で「達成のために何ができるか」を議論する場をつくることです。
議論の場では、例えばKPIツリーで導き出した目標数値を前提に、「どうすれば巡回数を増やせるか」「面談につなげるために何ができるか」「受注率を高めるための工夫は何か」といったテーマでアイデアを出し合います。
上から与えられた目標に対しては、どうしても「やらされ感」が生まれてしまいますが、その目標をどうしたら達成できるかを自分たちで考え、意見を出し合い、その中から施策を決めていくと、その決定事項を「自分ごと」として捉えやすくなります。
また、このような場では現場ならではの実践的なアイデアが出てくることが多く、結果として実行力を伴った取り組みにつながります。
単なる意見出しで終わらせず「実行できる形」に落とし込むことがポイントとなるので、マネージャーにはアイデアが実行可能かどうか、会社として目指す方向とずれていないかを見極め、調整していく役割が求められます。
提案工事の売上拡大に必要なのは「気合い」でも「場当たり的な行動量」でもありません。成果から逆算して行動を設計する「仕組み」と、それをやり切る「当事者意識」、この2つを整えることこそ、提案工事を安定的に伸ばすための本質的なポイントです。
金額目標を示すだけで終わらず、仕組みと意識の両輪を整えることで、提案工事の成果は着実に変わっていくはずです。












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