2人分の仕事量こなす
AI(人工知能)の進化がかなりのスピードで進んでいるらしい。グーグルが開発した「アルファ碁」が世界最高のプロ棋士に勝利した件は、AIの進化が10年以上短縮されていることを証明したらしい。ぼやぼやしていられない。我々の現場も進化させなければ。我々にもできることはいろいろあるはずだ。(藤澤雅義)
「不動産テック」に注目が集まっている。不動産テックとはテクノロジーの力によって、不動産売買、賃貸、投資の新しい仕組みを生み出したり、従来の商習慣を変えようという取り組みのことだ。具体的には、不動産取引において、買主、売主(または貸主、借主)がWEB上で直接取引できたり、AI(人工知能)が不動産価格や適正賃料を算出したり、また我々の現場でいえば、物件の空き確認の電話(通称:物確)を自動音声が対応するといったものだ。
不動産業界は、「物確」を未だに「電話とFAX」で行うのが当たり前のアナログ業界だ。当社の場合、募集部門の受電件数は1日に数百件もあり、電話対応のために常に数名のスタッフが控えている。この電話のうち、4割は入居審査や契約に関連する「ヒトでしか対応できないもの」だが、残りの6割は「○○マンションは募集中ですか?」「はい募集中です」とやり取りしているだけなのだ。こういった単純作業は機械に任せて、スタッフはより価値ある業務をするべきだ。
そこでこの春、当社では物確を自動音声が対応するシステムを試験導入した。導入初月の結果は図の通りだ。物確の受電の実に6割を自動音声のみで案内することができた。これはスタッフ2名の仕事量に相当する。実際にスタッフからは「電話に振り回されることが減り、空いた時間に今まで手を付けられなかった仕事に時間がさけるようになった」と聞いている。さらに、引っ切り無しに電話が鳴り続けていた騒々しい社内が静かになり仕事環境も改善した。
また、自動音声は同時に数十回線に対応し、24時間稼働しているので、通話中や営業時間外の取りこぼしをなくすこともできた。自動音声を導入したメリットはとても大きい。
課題も残っている。電件件数の1割は音声案内になる前に切電されている。自動音声自体を面倒に思う人もいるだろう。ユーザーにとって、より使いやすいシステムに進化することが求められている。そもそも物確の方法が今後も電話とFAX中心のままであるはずがない。将来は、ホテルや航空券の予約と同様に、物確に留まらず、内見予約や申込までも、そのほとんどがWEB上で行われるようになるだろう。
我々はこういった技術革新を積極的に取り入れ、業務を効率化することで、顧客にとってより価値のあるサービスを提供していくことができるのではないだろうか。
(筆:片平智也/週刊住宅2016.05.09 掲載)