週刊住宅

公開日:2016年8月29日

第87回 孤独死があった空室から異音

第87回 孤独死があった空室から異音
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2年連続、お盆にクレーム

賃貸住宅の管理をしていると、いわゆる「オカルト現象」的な話しを聞くことがある。

今回はそういう夏の季節に相応しい話題を!(藤澤雅義)

 

毎年お盆の時期になると思い出す案件がある。

ある年の夏、当社が管理していたマンションの一室で、孤独死があった。ちょうど暑い時期だったことに加え、ご遺体が浴槽に浸かっていたため腐敗が進んでしまった。

その後部屋のリフォームは済ませたものの、なかなか借り手が見つからず、物件規模が大きく他に募集中の部屋が複数あったことから、その後数年間、この部屋を外部に貸すことはなかった。

 

一年が経った翌年のお盆、階下の入居者から妙な連絡があった。

「上階の住人がうるさい、まるでシャワーヘッドを風呂の床に叩き付けるような音だ。注意してほしい。」というものだ。

 

しかし、上階には誰も住んでいない。

階下の入居者へそのことを伝え、しばらく様子を見てもらうようにと伝えたところ、それ以降は連絡がなかった。

 

しかし、その翌年もお盆の頃になると全く同様の連絡があった。

「昨年も伝えたが、また音がうるさい。調査してほしい。」

 

二年続けてお盆になると発生する上階の音についてのクレーム。いろいろな要因が重なっていることもあり気味が悪い。いずれにしても現地の音を確かめない限り、解決ができないので、二名のスタッフとともに現地調査を行った。

入居者立ち合いの元で階下の部屋にいると、不定期に天井から「ドン」「ドン」と音が聞こえる。上階から物を叩くような音がするのは事実だ。

 

そこでまず、例の上階を確認したが、何ら異常はない。次に、私は階下の部屋に留まり、他のスタッフは上階を含めて周囲の部屋へ移動し、それぞれの部屋の調査を行った。

例の上階に限らずどの部屋においても、別の部屋にいるスタッフが給水を行い、蛇口を急に閉じる際、私がいる部屋の天井で「ドン」と音がなることが分かった。

 

結局、この音の正体は「ウォーターハンマー現象」であった。

建物規模と給水管の位置関係から、各室で起きた配管の振動が、階下の部屋の天井部分にある配管に集中して音が生じる状況だった。

また、階下の入居者とお話をする中でわかったのだが、この方は出張が多く、普段ほとんど自宅にいないのだが、この時期は夏休みということで久しぶりに家にいたため、音に気付くのがこの時期だけだったようだ。

 

当たり前だが、怪奇現象などが起きるはずがない。余計な先入観は持たずに冷静に建物を調査するべきだ。

(筆:片平智也/週刊住宅2016.08.29 掲載)


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